【感想・ネタバレ】蝶のレビュー

あらすじ

三島由紀夫、中井英夫、澁澤龍彦らの系譜を継ぐ“美の幻視者”皆川博子の一頂点を示す珠玉の短篇集!

男がインパール戦線から帰還すると、妻は情夫と同棲していた。二人を銃で撃ち下獄した男は、出所後、小豆相場で成功。北の果ての海に程近い「司祭館」に特攻帰りの下男とともに暮らす。ある日、そこに映画のロケ隊がやってきて……。戦後の長い虚無を生きる男を描く表題作ほか、現代最高の幻視者が綴る、詩句から触発された8つの短篇。
「空の色さへ」はポオル・フォル、「蝶」は別所真紀子、今井豊、音羽和俊、「艀」「龍騎兵は近づけり」は横瀬夜雨、「想い出すなよ」はロオド・ダンセイニ、「妙に清らの」はハインリッヒ・ハイネ、「幻燈」は薄田泣菫、「遺し文」は伊良子清白の詩歌が引かれている。

解説・齋藤愼爾

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Posted by ブクログ

ネタバレ

詩句が引用され、そこから紡がれた物語はどれも暗い影が射し複雑な感情を引き出す。
戦前から戦後と移ろう中で、人々の感情には容易に切り替えられない虚しさや悲哀が見て取れ、やり切れない。
研ぎ澄まされた文章の裏を探りたくなる艶かしさがある。多くを語らない部分に奥深さを感じる。読後は悲しみに包まれ、今もふと考えてしまう。

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2021年02月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

8作の短編集。太平洋戦争前から戦後直後くらいまでの時代の話です。
子供の目から見た、大人の世界。
変わってしまった世の中に復員してきた男。
支配される女性。
世の不条理さというものに押しつぶされそうな、いや、押しつぶされる人々の話なのかな。
その不条理さを、それぞれ受け止められない者、受け流して行く者それぞれかもしれないけれど。


好きとか嫌いとかそういう次元は超えてしまったと思われるような小説でした。
言葉の強さというか、異次元の世界へ引きずりこまれたというか、何かの力に翻弄されて読み切ってしまいました。
固い単語や文章で書かれていて、強烈な印象とともに、詩や歌が絡んでくるせいか、頭の中でセピア色のその場面が浮かんでくるようでした。
なんだろう、どこか暗くて淫靡で、残酷で、清らで哀切。

またこの作者の新しい本が読みたいです。
でも言葉が難しい(T . T)

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2016年08月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

皆川博子の本を読むときは、自然に背筋が伸びるような感覚を味わう。
自分の感受性やら、言語感覚やらを、試験されてるような感覚。
圧倒的な美意識の高さは、難解で、曖昧で、いつも必死ですがりつくような思いで読んでいる。
楽しいか、面白いか、と言われればなんと答えればいいだろう。
素敵です、とでも応えようか

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2016年03月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

昭和初期が舞台の幻想的な短編集

とにかく文章が綺麗で、グロい展開でも切ない展開でもとにかく綺麗なイメージは崩れない
全体的に仄明るいような仄暗いようなイメージ

私は表題作ももちろんですが、『妙に清らの』『龍騎兵は近づけり』『幻燈』が特に好きです

「わたしはもう、何も怖くはない。」
「いつまでもお若くておいであそばしますねえ。」
という終わりかたも凄く好き

幻想的で切なくてとにかく綺麗で…
いい読書ができました

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2014年02月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

文章から立ち上る貫禄と美しさに圧倒され続けて、最後のお話にやっとこの作品群を言い表せるような言葉を見つけた。「凄艶」。
「想ひ出すなよ」「幻燈」が特に好き。どちらのラストも衝撃的で、頭をくらくらさせながら何度もその終りを繰り返し読んだ。

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2011年04月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ずっと読みたいと思っていた皆川作品をようやく初読みしました。

自分の読書力と日本語力の未熟さを痛感させられたというのが、最初の、そして正直な感想です。

いやぁ〜まいった。

深い、実に深い。

皆川文学を読むにあたって、手始めにと手にした理由は本書が短編集である事。

さらっと読み進められると思っていた自分が情けないやら、恥ずかしいやら(苦笑)

それぞれの物語に密接にかかわり、深みを増すのが添えられた俳句や詩。

叙事詩的な文体であるが、これぞ日本の純文学なのであろう。

現段階では最後に記された「遺し文」のみが、少し理解出来た気もするが、本作を読み取れる読書力を身につけ、再読した時にはきっと違った景色を想い描き、空気を感じ、涙することが出来るのだろう。

その日を楽しみにこれからも読書を続けていきたい。

説明
内容紹介
インパール戦線から帰還した男は、銃で妻と情夫を撃ち、出所後、小豆相場で成功。北の果ての海に程近い「司祭館」に住みつく。ある日、そこに映画のロケ隊がやってきて……戦後の長い虚無を生きる男を描く表題作ほか、現代最高の幻視者が、詩句から触発された全八篇。夢幻へ、狂気へと誘われる戦慄の短篇集。
目次
空の色さえ/蝶/艀(はしけ)/想ひ出すなよ/妙に清らの/龍騎兵(ドラゴネール)は近づけり/幻燈/遺し文/解説・齋藤愼爾
『蝶』は、現代文学の砂漠の沖に光輝まれなる孤帆として、美の水脈を一筋曳いてきた皆川博子文学の一頂点といえる短篇集である。──解説より
内容(「BOOK」データベースより)
インパール戦線から帰還した男は、銃で妻と情夫を撃ち、出所後、小豆相場で成功。北の果ての海に程近い「司祭館」に住みつく。ある日、そこに映画のロケ隊がやってきて…戦後の長い虚無を生きる男を描く表題作ほか、現代最高の幻視者が、詩句から触発された全八篇。夢幻へ、狂気へと誘われる戦慄の短篇集。

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2020年02月17日

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