【感想・ネタバレ】遺言。(新潮新書)のレビュー

あらすじ

動物とヒトの違いはなにか? 私たちヒトの意識と感覚に関する思索――それは人間関係やデジタル社会での息苦しさから解放される道にもなる。「考え方ひとつで人生はしのぎやすくなりますよ」、そう著者は優しく伝える。ひと冬籠って書きあげた完全書き下ろしとなる本書は、50年後も読まれているにちがいない。知的刺激に満ちた、このうえなく明るく面白い「遺言」の誕生! 80歳の叡智がここに。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

動物は等価交換を理解できない。それは、感覚所与を優先するからだ。3+3=6という数学は理解できない。イコールがわからない。
感覚所与とは、感覚器に与えられた一次情報だ。例えば、白という字を黒の鉛筆でかく。感覚所与ては黒だ。そういうことだ。
だけど人間は違う。労働がお金になると言うことが理解できるからだ。働くとお金がもらえる。そのお金で好きなものが手に入れられる。と、繋げて考える事が出来る。金がすべてだと言うわけではないが、金がすべてだと言う人は、全てのものは交換可能だといっているということになる。そういう人は、まさに、頭の中に住んでいるということ、外の違いを、感覚という違いを無視しているのだ。
動物と人との違いのひとつは、人は他人の立場に立つ事が出来るということだろう。
人の意識の特徴は「おなじだとするはたらき」である。
そして、おなじ、おなじ、を繰り返していくとどうなるか。それは、ピラミッドの頂上に全てを含んだ唯一の存在となる。西洋では神という。
同じ立場に立脚する文明社会に、違うものはないだろうか。それは、アートだ。オリジナルにこだわるものだ。ピカソの絵をコピーしても、それは複写であってオリジナルではない。芸術におけるオリジナルは絶対的である。芸術が感覚からはじまる以上、それは当然である。世界を感覚で捉えたら、同じものは一つもないから。同じものがひとつもない世界で優れたもの、それを芸術作品というのだろう。真理は単純だが、事実は複雑だ。それは、感覚所与は多様だけど頭のなかではその違いを同じにする事が出来るから結果が単純になる。
芸術は宗教とも関連する。同じを中心とする一神教と、違うを認める多神教だ。
コンピューターは芸術を創るのだろうか?それは無理だろう。芸術に前提となる唯一性をもたないからだ。もちろん、コンピューターが創ったものを芸術と呼ぶことは可能だ。ただし、それは、作品から唯一性が失われていることになるが。生演奏がいあのは、そこに唯一性があるからだ。数学が、もっとも普遍的な意識的行為の追求、つまり、同じの追求だとすれば、アートはその対極をしめる、いわば、違いの追求といえる。アートは数学的にいうと、数学的なには誤差に過ぎないということになるかもしれないが、その誤差が非常に大きいと言える。その誤差の集合体が芸術であるのだろうか。
最後に本書は、現代の感覚所与を排除し、デジタルな1と0の世界に邁進していることについて、それが少子化を招いているという。デジタルは外乱をきらう。答えの分かるものを好む。感覚所与を押さえ込み、全てをデジタルに置換し普遍のものとして保存できるようにする。感覚的な雑音を排除することは、自分以外に受け入れることを拒否することだ。結婚相手や子供は自分にとっては雑音でしかない。現代の若者は、それを許容できなくなっている。

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2019年08月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

とりあえず感覚器に与えられた第一印象を感覚所与という。感覚所与は「違う」けれどわれわれは頭の中でそれを「同じにする」。動物はイコールがわからない。等価交換ができない。動物は絶対音感がある。人間は忘れていくのだ。現代の若者が実際にヒトに接するよりSNSを好むのは生身のヒトは雑音を含みすぎている。都市は意識の世界であり、意識は自然を排除する。人工的な世界はまさに不自然なのである。子どもは自然である。とりあえず心に残った養老さんのつぶやきを書いておく。まあ考えてみればと言うこと。むずかしいけどおもしろかった。

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2018年11月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

養老孟司の`遺言`、私は、こんな事を考えてます、感じてます。 曰く、デジタルという情報系は、ゼロと一という二進法。生物は遺伝子を4つの塩基で記述、A:アデニン、T:チミン、G:ゲアニン、C:シトニン。 脳なら、ゼロと一の二進法で、遺伝子を設計するだろう、多分。 4つの塩基からなる遺伝子という情報系は、人の意識を構築する二進法のデジタル情報系よりも、遥かに多くの余剰を含んでいる。 時間と共に、変化する事象を、変化しない二進法の情報系でどう記述するのか、果たしてそれは、可能なのか。(無理でしょう、多分) 現在の社会は、ジャンクな遺伝子を多く含む遺伝子系情報から生まれる`感覚`(ジャンクにも機能がある)と、二進法の情報系から生まれる`意識`、が併存しつつ、かつ、乖離しているのではないか、と。 都市は、`意識`の世界、意識は、自然を排除する、そして、子供という自然の塊も排除され、少子化の流れになっている等々。 論旨、明快、納得であります。(星4つです)

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2018年03月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

意識論。なんだけれど。あまり遺言ぽくはない。1.0だそうで。説得力はあります。だけどなんか言いくるめられたような。で、5つじゃなく4つ。

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2018年01月24日

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