【感想・ネタバレ】ブルースのレビュー

あらすじ

霧たちこめる釧路で生まれ、貧しく苛烈な少年時代を経て、男は、自らの過剰な指を切り落として、夜の支配者へとのし上がる──。

男の名は、影山博人。
最初の物語は、没落した社長夫人が、かつて焦がれた6本指の少年の訃報を新聞に見つけるところから始まる。
同衾した女をみな翻弄し、不意に姿を消してしまう正体不明の男であり、故郷に戻った後、暴力で容赦なく人を支配する黒い権力者。
不思議な魅力あふれる影山の、15歳、19歳、27歳、32歳、そして、40手前から52歳までの8つの時期を、時々に出会った女による語りで構成。

――はたして、影山博人は、外道を生きる孤独な男なのか? それとも、女たちの「夢」の男なのか?

影山と関係するそれぞれの女たちは皆何かしら困窮している。死別で、離婚で、借金で……誰かや何かにすり減らされてひりひりと痛むような乾いた心を持っている。(中略)そこにある程度の「まっとう」を手に入れ、今もなお貪欲に模索している影山が現れる。ひかれない訳がない。(中略)もしかすると、影山の指が六本なのは、より多くの困窮にあえぐ者にチャンスを与えるために余分に備わったのではないかとすら思う。
(壇蜜・解説より)

デビュー10周年の著者による、新境地にして、釧路ノワールの傑作!
「謎」の男をめぐる、八人の女たちの物語。

──俺には、白と黒しか要らないんだ

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

霧が立ち込める、寒々しい北の歓楽街。今でこそ人口が減少し寂れてしまったが、炭鉱やパルプ産業で活気があった昭和の北海道を感じさせる小説。

戦後の日本、特に北海道が発展した裏側では、光の当たらない、悲しい出来事が沢山あったのだろう。演歌を通り越して、まさにブルースである。

白黒の寂しい街角を思わせる表紙と、裏表紙の紹介文から、登場人物の設定やストーリーの展開は容易に想像できた。それでも、ついつい、博人の人生に引き込まれ、読み進んでいく。結局、「濡れ場」中心に物事が進んでいく展開は気に食わないのだが、まだまだ謎が多い博人の人間性に迫るために、もう一度読むか、続編も手に取りたい。(漫画の方は後にしようと思う)

桜木さんによる街の描写はとても美しい。グーグルマップのストリートビューで、釧路の写真を何度も確かめながら読んだ。博人が指を捨てた幣舞橋付近の、釧路川の淀んだ黒い色。高台から見下ろす背の低い街並み。気動車が行き交う釧路駅。
釧路を訪れるなら、一気に冷え込み、霧が立ち込める秋口が良いと思う。

0
2023年06月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「あれこれ考えるなら明日の自分のことにしろ」
影山の言葉。いろいろな過去、影を背負っている男が言うと響く。多くを語らない男が唯一、感情があり、相手のために自分の思いを語る。
「慣れる、人間、血が通っている限りだいたいのことには、慣れるようにできている」
今、現在にも響く言葉だ。

影山と言う男が魅力的だ。影のある男で信じたらよくないと思っても信じてみたくなるような、たまに見せる笑顔がずるい。悪い男だからこそか、彼の優しさか、女の寂しさ悲しさにすぐ気がつき、女の心の器を満たす。感情が薄いようにみえるが誰よりも熱く、読まれたら潰されることを知っているから、表に出さないだけ。感情を見せられない環境にいただけ。敵にするのはこわいけど、最期どういう姿でどう立ち回るか見てみたいと思ってしまう存在。性別関係なく惚れてしまうだろう。

0
2021年08月28日

「小説」ランキング