あらすじ
この一冊で世界が変わる、かもしれない。仙台市の大学に進学した春、なにごとにもさめた青年の北村は四人の学生と知り合った。少し軽薄な鳥井、不思議な力が使える南、とびきり美人の東堂、極端に熱くまっすぐな西嶋。麻雀に勤(いそ)しみ合コンに励み、犯罪者だって追いかける。一瞬で過ぎる日常は、光と痛みと、小さな奇跡で出来ていた――。 明日の自分が愛おしくなる、一生モノの物語。限定の書き下ろしあとがき収録。
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Posted by ブクログ
青春小説だと聞いて読みましたが、伊坂幸太郎でした。
ストーリー展開や登場人物のセリフが相変わらず軽快でクセがある。
アヒルと鴨みたいなどんでん返し。よりは伏線回収が多めかな。ゴールデンスランバーよりは強くない。
『モラトリアムの贅沢さ』を主軸にしているのが、考えなくても率直に伝わってくる。なんか展開は早いのにスローなんだよね。イメージでここまで変わるんだなと思い知らされた。
構成について、登場人物の情報を詳細に書いた。と本人は語るが、その効果はあまり感じなかったかなぁ。ただ『重力ピエロ』と比べるとキャラの設定にブレがなくなった気はする。だから現実感が消えない。
『重力ピエロ』はどこか遠い世界の物語のように思えたけど、『砂漠』は主人公の隣にいるような感覚で読める。主人公が冷めた態度で始めは世界を見ていたというのも要因かもしれない。
西島の存在感が強い。
『砂漠に雪を降らせる』という言葉に思い入れはないと言っていたが、確かにその言葉単体では意味をなさないが、物語を読んだ上でこのセリフのウェイトは一気に重くなる。
僕には無理だ、私じゃダメだという諦観をとっぱらってくれる。地味だけど、それでいい。と思わせてくれる。
おかげで私の心の病も治してくれた。
なんて、ことはない。
だけど良いヒントを教えてくれた。感謝します。
Posted by ブクログ
名作。前向きになれる好きな小説です。
構成が分かった上で読みなおしましたが、やはり面白い。
主要登場人物5人が全員個性があり魅力的で、特に西嶋は一度読んだら忘れられない良いキャラ。
学生時代を懐かしむのはいいけど、あの頃に戻りたいとおもってはいけないという最後のメッセージは大人になるほど刺さる。
Posted by ブクログ
〜1周目〜
2019.03.19
青春物語。
超能力も出てくる。
これから大学生になる高校生にぜひおすすめしたい。
愛あり、恋あり、笑いあり。
今までで1番面白い、本のすごさに気づかされた一冊。
Posted by ブクログ
特に最初の「春」が好きだったなぁ。。ずっと西嶋が素直でかわいい。
最後の学長の「人間にとって最大の贅沢とは、人間関係における贅沢のことである」って言葉いいねぇ。
Posted by ブクログ
大学時代を思い出すような程よい無駄な時間が描かれつつも様々な事件が起きていく。
その事件も全てが散らばったパーツが繋がり綺麗に回収される。
登場人物たちと過ごしたら楽しそうだなと思いながらもクセがあって振り回されそうとも思わされるキャラクターたちだった。
Posted by ブクログ
個性豊かで不思議な大学生5人の話。落ち着いてる主人公の北村、明るい鳥井、熱い男西嶋、超能力者の南、美人の東堂は性格が大きく異なり、友人関係が成り立っているのが不思議だが、お互いに尊重と理解をしていることがわかる。彼らの大学生活は仲良くなるきっかけだった麻雀を繰り広げながら描かれるが、想像もできない方向へ進んでいく。自分が過ごした大学生活とは違うが、自由気ままに過ごせる大学生の気持ちに少し戻れた気がする。社会人になった今だからわかるが、砂漠(社会)での生活も悪くないし、彼らなら楽しんで過ごしていけそう。
さわやかどんでん返し
伊坂幸太郎さんらしさ全開の青春小説。
ライト文芸キャラクター小説寄りで、小説が苦手な方でも読みやすいと思います。内容も万人受けするものですので、後悔はしないでしょう。
また、叙述トリックもストーリー上の必然性があって無意味などんでん返しではなく、各所にある伏線からも伊坂さんのフェアプレイ精神を窺えて非常に好印象です。
自信を持ってお薦めできる一冊です。
Posted by ブクログ
幼稚な反抗と浅薄な理想主義はパンクロックの本質
一年春
いかにも登場人物が大学生っぽいし、講義や麻雀やボウリングって…
東堂:誰もが認める美人
南:スピリチュアル
西嶋:思想強め
鳥井:金持ち
長谷川はホスト通いで、支払いに困ってたんかな
合コン相手を出しに使ってそう
普通の人なら恥ずかしくなることも平然とやってのける西嶋がカッコ良すぎる
懐かしい感じがしてセンチメンタルになった
二年夏
ドライブや海の描写
西嶋がビルの管理会社の古賀さんに頼んでビルの電灯で中をつくり、ロンする話
鳥井がおそらく長谷川に騙されて、ホストの礼一くんたちにRV車に轢かれて、腕を失う
左腕に気を遣ってしまうところを西嶋が笑いに変えていて、自分の周りから世界を変えている、そんな気がしていてカッコよかった
三年秋
バイトの描写
西嶋の過去
才能のある人ほど虐げられる(義経とガリレオ)
逃げるための理屈をこねてはいけない
麻生
学生は時間を持て余しているし頭もいい
自分だけは他の人間とは違うはずだ、自分は何者かである
その場しのぎの快楽や楽しみに興じて楽しければそれでいいと考える学生と、自分が何者かであることを必死に求めるタイプ。真剣に考えてさまざまな知識や情報を得て、それで自分だけは他人と違うと安心するものだ。情報を手に入れることで人より利口になったつもりで自分がどうにかみんなの意識を変えなくてはいけないという使命感を帯びてくる。環境問題を訴える人間と近い。環境破壊に気づいているのは自分だけで、だからどうにかしないとと慌てるんだ。傲慢で幼稚な善意としか言えない
みんな正解を知りたい。一戸建てを買うときのチェックポイント
自由演技だからこの修行をすれば幸せになれるとか、これを我慢したら幸せになれるとか言われると楽な気分になる。子供の頃からやることを決められているわけではない。あるとき急に自由にって言われて愕然としてしまう
四年冬
通り魔を捕まえる
鳥井が、彼女(南)を守るためにキックボクシングで強くなるのアツい展開だよね。阿部薫
みんなカップルとして繋がって良かったねえ。ハッピーエンドだったなあ
大学生の頃を思い出せて良かった…自分の大学生活は短かったけど、キラキラしてて何より楽しかったから
砂漠って社会のメタファーなんだ….僕の記憶もまた前は楽しかったなあ程度に大学生活を振り返るのかもしれない。
伊坂幸太郎、さては青春コンプレックス?
莞爾の「本当はお前たちの仲間でいたかったんだよな」っていうあのセリフに全てが込められているなあ
Posted by ブクログ
歳をとって大人になるにつれて、自分の関わってきた世界が広くなる。色々なことを知るにつれて、純粋無垢な子供の心を失っていく気がする。
世の中自分の力じゃどうにもならないことがたくさんある、自分のことで精一杯、才能ある人には勝てない、世の中平等じゃない、不条理、諦観、羨望などを知るにつれて、それを、ことあるごとに理由にして、目の前の問題から逃げてしまったり、挑戦できなくなっている自分がいるなと、この本を読んで思った。
・その気になればね、砂漠に雪を降らすことだって、余裕でできるんですよ。
・目の前の危機を救えばいいじゃないですか。今、目の前で泣いている人を救えない人間がね、明日、世界を救えるわけがないんですよ。
・人間にとって最大の贅沢とは、人間関係における贅沢のことである。
世界の問題に目を向けつつ、自分の目の前の世界を精一杯生きて、周りの人を大切にして生きたい。人との繋がりが人生のかけがえのない財産。
心にじわりじわりと染みる、爽やかで素敵な作品でした…