あらすじ
彼は天使猫と呼ばれている。なぜなら、彼の背中には銀色に輝く見事な翼が生えていたからだ。もちろん、彼の姿は猫そのもの――直立二足歩行の巨大な赤猫だった。トレボロ人は体表に無数の目を持ち、ラジェンドラ人は竜にそっくり。そして彼らは流刑囚として、進化の袋小路にある惑星、地球へと送りこまれたが……。日本SF界に鮮烈なデビューを飾った表題作をはじめ、独自の未来史を創り上げていく中篇4篇を収録する。
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Posted by ブクログ
およそ40年前の作品。大原まり子のデブュー作。あとがきの、踊るような喜びが、フレッシュである。解説は、中島梓。
銀色にかがやく翼もつ赤い 天使猫 、の、
美しいイメージにひかれ、カバーイラストを参考に、オヴジェを何体も作って、人に、プレゼントしていた20代の頃。もう、あんな集中力は、難しくなった。
Posted by ブクログ
大原まり子の基本。中学生だった頃、夢中になって読んだ。異星人と地球。天使猫。銀色の翼。嗚呼。こんな世界を創作できる作家は、当時からの憧れでした。日本SFの基本。ぜひ読むべき。
Posted by ブクログ
人類が銀河に広がった数千年後、どんな環境にも適応できる猫人間は機械人類により絶滅の危機に瀕しています。そんな設定の短編が4話。猫人間は猫耳のかわいい生き物ではなく、カバーイラストのとおりちょっと怖い生き物でした。
Posted by ブクログ
表題作「一人で歩いていった猫」の冒頭の句にやられた。
『これはかつて“猫”と呼ばれた人間の物語である。
猫は比類なき知性に恵まれていたが、おおかた先祖は地球産の猫だったので、外見は直立二足歩行の化け猫といったところだった。もっとも、中には北極グマを祖先にもつ者もいたのだが、例の“猫は猫に帰れ”運動の大旋風のあおりをくらって、誰も彼もが黄金色(イエロー・ゴールド)の目に赤い毛皮をもつ猫形態(キャット・フォーム)になってしまった。
この物語はそういう平凡な猫の物語だ。いささか謙遜で、付き合いが下手で、さほど忍耐強くもなく、人生の九九パーセントを平穏にすごした猫の、残りの一パーセントの物語だ。巨大な歴史の歯車の一つを担いながら、異星の大地を愛でつつ死んだ猫の物語だ。』
「“猫は猫に帰れ”運動」すばらしい響きだ。
ルソーの「自然に帰れ」より明示的で力強いね。
ただ、黄金色の瞳で赤い毛皮っていう規格性はいただけないな。
私はクロだってシロだってミケだってトラキジだってブチだってみんな好きなのに。