【感想・ネタバレ】からくりアンモラルのレビュー

あらすじ

初潮を迎えた自分の身体に苛立ちを覚える秋月は、妹の春菜になつくロボット・ヨハネが子犬をかわいがる様子を見て、ちょっとした悪戯を思いつくが……ペットロボットを介した性と生の目覚めを描いた表題作、タイムトラベルした少女が自我の認識を獲得する「あたしを愛したあたしたち」、セクサロイドが語る波瀾の生涯「レプリカント色ざんげ」ほか、性愛SF9篇。日本SF大賞ノミネートの、切なく凛々しい傑作短篇集。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

切なさいっぱいのSF短編集。
狭義のSFにこだわる人は受け付けないかもしれませんが、この作品におけるSFはギミックに過ぎないと思います。
時に聖性すら帯びる小悪魔的な少女の媚態、ユーモアとエロスが織り交ざる独特の雰囲気など森奈津子が森奈津子たるゆえんがたっぷり堪能できる隠れた名作。
収録作もバラエティーに富んでいて楽しめます。

個人的に好きなのは「いなくなった猫の話」。
場末の酒場の女(といっても十分若い)の回想から幕を開ける異色な冒頭からしてちょっと毛色が違いますが、淡々としながらもしっとりした艶を含む語り口にいつしか魅了され、拾った猫の子との間に愛情を育んでいく姿が目に浮かびます。

「人生って、得ることと失うことの連続だと思わないかい?
獲得と喪失の繰り返しって言えばいいのかな。
形あるものはいつかは壊れるって言うじゃないか。
それと同じだよ。
手にしたものは、いつかは失う。
愛した者とも、いつかは別れる。
得たり、失ったり。それの繰り返しさ」

少女は砕瓜を迎え大人になる。
それは神秘に包まれた少女性を喪失し、「女」という別の生き物に生まれ変わる事。

大きな喪失を体験した小夜の言葉に、森作品に通底した「喪失と再生」のテーマを見るおもいです。

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2017年08月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

解説で漫画家の榎本ナリコさんが書いていてはっとしたのが、この本の中の世界では、男も女も性的でありつつも性と隔絶されている。去勢されているという部分。
性愛をメインテーマとして扱いつつも、生々しく感じない、美しさとある種の悲しさ・憐みを感じるのはそれが根底にあるからなのかもしれません。

0
2022年06月07日

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