【感想・ネタバレ】労働者階級の反乱~地べたから見た英国EU離脱~のレビュー

あらすじ

2016年の英国EU離脱派の勝利。海外では「下層に広がる排外主義の現れ」とされたが、英国国内では「1945年以来のピープル(労働者階級)の革命」との声も多かった。世界で最初に産業革命、労働運動が起きたイギリスでは労働者こそが民主主義を守ってきた。ブレグジットは、グローバル主義と緊縮財政でアウトサイダーにされた彼らが投じた怒りの礫だったのだ――。英国在住の注目の著者がど真ん中から現状と歴史を伝える。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

英国在住、”労働者”階級の夫を持つ著者による書。誇りある英国の”労働者”に対する愛情を感じさせる。研究者による分析を紹介する箇所も、カルチャーの視点を織り交ぜながら描写し生き生きとしたものに感じさせる好著。

印象に残ったのは、”白人”労働者階級の出現は、歴代政権が階級の問題を人種の問題にすり替えた結果発生した、とする点(263ページ以下)。元々移民に接していた労働者階級は移民との共存に慣れていたが、キャメロン政権の国民投票実施決定がパンドラの箱を明けてしまった。入国在留管理庁の設立等、外国人労働者増を目指す日本の将来を考えるにあたっても読んでおくべき。

0
2018年09月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2016年6月24日、イギリスはEU離脱投票で離脱派が勝利、
先日EUからイギリスが正式に離脱(ブレグジット=
Brexit)したところで読んでみました。

イギリスでは現在、白人労働者階級という立ち位置に
いる人々がマイノリティになっている。白人なら
人種差別もないから自力で上がれ、といわれるためである。

第1章はイギリスにおけるブレグジットについての
簡単な説明と残留派と離脱派の女性がそれぞれの家庭を
取り替えるというイギリスのテレビ番組の放送内容を
紹介している。
第2章は著者の身近な労働者階級の人々のインタビューと
ニュー・マイノリティーの説明、第3章は労働者階級の
100年の歴史が書かれている。

やはりいきなり離脱、というわけではなく積み重なった
ものがあった結果の離脱、ということで興味深く
読めました。さらにイギリス人は政治については
市井の人々でもしっかり政治について意見を持って
インタビューを受けることができるんだなと自己反省しました。

0
2020年02月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

Brexitのニュースも見なくなって久しいが、まだ古新聞とも言えないだろうと思い勉強のために読んでみた。
まず、読みやすいしわかりやすい。さすがに”地べた”から書かれてるだけあって、平易で読み下しやすい文体、説明も卑近な例えが多く交えてあったりとありがたい。

単なるポピュリズムという文脈で片付けられるような印象が強かったが、本書で見る目が変わった。
ファクトチェックの必要はあるだろうが、著者自らのインタビューで”おっさん”達に生の声を聞くと、より切迫した経済事情が見えてきたようで、なるほどと思えた。
ドキュメンタリー仕立ての番組でお母さん入れ替える番組構成、どこの国でもマスメディアの印象操作はロクなもんじゃない、と思った。
(日本とは市民の政治関心の高さが違って、こういうテーマをテレビで扱うことが普通な時点で、メディア普段から頑張ってるともいえるか)

”見捨てられたおっさん”層の困窮も社会の閉塞感も日本と通ずると思うが、EU離脱を問うような国民の意思表示の場面がないためか、そもそもの闘志・危機意識の欠乏か、我々の困窮状況がそこまで深刻になりきっていないのか、日本では一向に大きな政治のうねりに至らない。いつまでクソ自民党に好き放題させてるのか、まともな対抗馬となる野党もいないが。

本書の“おっさん達”は経済的に困窮した中で、わかりやすいマイノリティとしてのアピールもできない立場。こういう立場の人が周りにたくさんいるってこと、自分も一歩違えばおんなじ立場っていうこと、常日頃から自分ごととして考えておかないと、平気で「貧しさは自己責任」などとのたまうことができてしまう。
そういった分断の積み重ねで格差が助長されていく歴史が生々しくて、これはほんとに他山の石として変えていかないと、日本も暴動起きてからでは遅い。

単一民族国家としてあまりにも長くあり続けたこと、また地理的に移民が来ないことからか、”共通の敵”としてレイシズムに訴えるような勢力が弱いというのも、日本と英国の違いかな。

英国の政治史をもっと学びたい。入門のきっかけとしてベストでした。

0
2023年09月05日

「社会・政治」ランキング