【感想・ネタバレ】街場の天皇論のレビュー

あらすじ

ぼくはいかにして天皇主義者になったのか。
立憲デモクラシーとの共生を考える待望のウチダ流天皇論。

【ウチダ流「天皇論」の見立て】
◆天皇の「象徴的行為」とは死者たち、傷ついた人たちと「共苦すること」である。
◆「今」の天皇制システムの存在は政権の暴走を抑止し、国民を統合する貴重な機能を果たしている。
◆国家には、宗教や文化を歴史的に継承する超越的で霊的な「中心」がある。日本の場合、それは天皇である。
◆安倍首相が背負っている死者は祖父・岸信介など選択された血縁者のみだが、今上陛下はすべての死者を背負っている。
◆日本のリベラル・左派勢力は未来=生者を重視するが、過去=死者を軽視するがゆえに負け続けている。

【本書の概要】
2016年の「おことば」から生前退位特例法案までの動きや、これまでの今上天皇について「死者」をキーワードとしてウチダ流に解釈。

今上天皇による「象徴的行為」を、死者たち、傷ついた人たちのかたわらにあること、つまり「共苦すること(コンパッション)」であると定義。

安倍首相が背負っている死者は祖父・岸信介など選択された血縁者のみだが、今上陛下はすべての死者を背負っていると指摘する(「民の原像」と「死者の国」)。

さらに日本のリベラル・左派勢力は生者=現在・未来を重視するが、過去=死者を軽視するがゆえに負け続けていると喝破。

同時に日本は「天皇制」と「立憲デモクラシー」という対立する二つの統治原理が拮抗しているがゆえに、「一枚岩」のロシアや中国、二大政党によって頻繁に政権交代する米仏のような政体にくらべて補正・復元力が強いとも論じる。

天皇主義者・内田樹による待望の天皇論。

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Posted by ブクログ

2018.5.3
あまりというか、ほとんど考えてこなかった天皇という存在。これほど日本人そして世界の安寧を強く願い、行動してる人はいないですね。
本当にそれしか考えていない。それだけを考えてる。ありがたい存在です。

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2018年06月07日

Posted by ブクログ

人間が生きるために要るのは「もの」ではない。知識でも技能でも情報でも道具でもない。風儀である。作法である。必要なものを必要なときに「はい」と取り出すことのできる力である。

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2018年05月03日

Posted by ブクログ

マジメに天皇の問題について論じているのは前半のみで、この部分は天皇という存在を考察するのにとても役に立つ。しかし、予想の範疇を超えるような内容ではない。漠然と感じていた天皇という存在に対する畏怖や畏敬の念に根拠を与えてくれるといった感じ。
後半は天皇論を離れて日本人論というところまで風呂敷が広がる。しかしほんとうに面白いのはこの後半。海洋民族的な性質と農耕民族的な性質が周期的に顕在化するという点はほんとうにこちらの想像を超えた広がりを見せて、夢中で読んでしまった。北方謙三先生のような天才が、国家という強大な権力に抗う者を書く際に、なぜ海戦に執着するのか、よくわかった。北方先生は天才だとよくわかった。
自分が政治思想的には左側の世界にいてその界隈の人々の言論に違和感を持つ理由は、日本的な小情況に足を取られて思うように動けないでいることに気づいていないことが、右を経て左の世界に入った自分には否応なしに見えてしまうことが原因なのだと思った。

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2017年10月18日

Posted by ブクログ

死者とか敗者、忘れされれようとしている者、なかったことにされている者への想いを持つことが、今、自分が生きるために必要なのだ、と言われた気がした。

 読んでいて、気持ちが軽くなった。気持ちが軽くなったことで、俺は自分を死者、敗者の側に置いていたのだと気づいた。

 誰かから、負けや死を宣告されていたわけでもない。自分で自分をそういうふうに勘定していたのだな、と。

 今の社会情勢がそういう気持ちを喚起していたのかもしれないし、ひょっとしたら誰でもそういう気持ちをもつものなのかもしれない。だからこそ、死者をおもうことは、自分をおもうこと、救うことになるのかもしれないな。

 多くの友、同志を失うことによって、リーダーとしての卓越性をもつに至ったという西郷隆盛について、ちょっと読んでみたくなった。

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2020年04月30日

Posted by ブクログ

40 街場の天皇論
共同体にとって、広く死者を悼み、苦しむ人によりそう人間がいかに、求心力を持っているのかというところから、始まる。なぜ内田樹が天皇主義者になったのかということにも納得できる。内田樹も良く言っているが、動物と人間を隔てたのは、死者をそこにいるかのように扱い、その人を悼む、生物学的奇習であり、その中心人物として、あまたの宗教的な権威は存在してきた。天皇もまたその一人であり、日本という国を保つうえで、必須の存在であるとしている。
宗教というものは原理主義者の排他的な行動によって批判される部分もあるが、人間が共同体として生きる上で必要な倫理的な示唆を多く与えてくれる。各々の宗教にとって何が正しいかであるとか真理とは何かということは一度括弧に入れて、人が宗教を信じていることで得られる礼節や思慕の情は共同体が生き延びる上で明らかにプラスではないかというのが私の立場であるが、天皇というある種の日本的宗教的権威が存在することで保たれている秩序はあると思う。それもまた、失ってからではわからない類のものであると同時に、一度失ってしまうと再構築することが困難なものでもあるだろう。
最後の、海の民と天皇の考察も面白く、日本の歴史を、海民的国家にするのか、陸運的国家にするのかの複数回のせめぎあいと、その中で、全国の無縁の民の頂点として求心力を持ち続けた天皇という考察も面白かった。
いまの改憲案が、天皇に強権を持たせようとしているのは、戦前の統帥権干犯のように、責任を天皇に集中させたまま、その周辺の人物が実権を握ろうとする体制へのステップであるという考え方も、目からうろこだった。一見して、天皇に強権を集めることは、現政権の力を弱めることになるかと思いきや、戦前日本のように、天皇の強権の下で、取り巻きの暴走があったというパラドキシカルな道筋をたどることを志向しているという考え方は面白い。

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2018年12月01日

Posted by ブクログ

「おことば」から展開する天皇制のみかた。その視点ははなかった。源平合戦や日本書紀に遡り梅原猛とつながってるのが面白い。

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2018年08月18日

Posted by ブクログ

2016年8月の天皇の「おことば」について内田さんの考えは新聞等で読んでいたので大枠はわかっていたけど、初めて読んだ内容もたくさんあった。
これは改憲を考え直すよう促したものだと諸外国では報じられていることとか。

後半の天皇論以外の文章が意外と(?)めっぽう面白かった。
吉本隆明の「大衆」についてとか、源平合戦は馬を操るのがうまかった源氏(陸)と、船を操るのに長けていた平氏(海)の戦いだったとか、能はもともと死者を鎮魂するために生まれたとか。

ほかにもいろいろと面白い視点がてんこもり。書ききれないのが残念。

(メモ)鎌倉仏教のことを知りたければ以下の本が良さそう。
・鈴木大拙「日本的霊性」

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2018年03月11日

Posted by ブクログ

今の世の中で
起きていることを
自分なりに
すっきり
させたい時には
内田樹さんの本が
とても良い

読みながら
考えたり
考えながら
読んだり

思考のストレッチを
させてもらっているような
気がしている

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2018年03月05日

Posted by ブクログ

今上天皇の退位を来年に控え、天皇や天皇家の報道や
様々な天皇論が語られていますが。
確かに民族の特殊性を下手にとらえると大変なことに
なるとは思いますが、天皇が存在するという日本国の
特殊性はあるのだろうと思います。
そこに立憲民主と天皇性の2項対立の中の矛盾や、
そこからくるであろう抑止力というの
ありえるのだと思いますが、そこに全能性を持つのも
怖い気がします。

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2018年01月07日

Posted by ブクログ

興味深い、しかし読みづらい。
本書は書き下ろしではなく、月刊誌やブログにある天皇関連記事をまとめただけの天皇本である。1つの項で興味を惹かれたとしても、次の項では全く繋がりのない内容が書き綴られており、思考の整理が上手くできない。しかし筆者の考える天皇論は非常に興味深いので、入門書として本書の半分までを読む価値はある。後半は、だめだ。編集者は少しは手を入れて欲しい。



私は天皇制について、何も知らなかった。それを気づかせてくれた本書は読む価値はあるが、買うほどの価値はない。
象徴的行為とは鎮魂と慰藉であると、平成天皇は理解し務めてきた。

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2019年08月25日

Posted by ブクログ

20180210 今の政治の状況について自分なりに理解したいと思い、天皇論のタイトルで読む事にした。安倍政治が何故長期政権になり得たのか?結局はうまく争点をはぐらかされて経済優先、グローバル化という響きの良い言葉だけに流されているせいだと理解した。
大衆が本筋を理解するためには曇りなく論じてくれる作者のような存在が必要だと思った。自分のことなので自分で判断するのは当然なのだが、、、

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2018年02月10日

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