あらすじ
夏樹と冬子は、高校時代、男女だけれど「親友」だった。
お互い、日常の謎を解くことを趣味として、一緒に居て誰よりも心地良い存在だったあの頃。
やがて社会人となった夏樹は、冬子に会いに神戸を訪れる。
町を散策しながら、昔と同じく、冬子と日常の謎ときを楽しむ夏樹だが、
夏樹には心に秘めた想いがあった。
冬子への恋心。もう、ごまかせない。
けれど冬子はなかなか、夏樹の想いを伝えるチャンスをくれなくて……。
もどかしくも、季節はうつる。夏樹の焦り、冬子の戸惑いをのせて。
そして……。
それは、最高で最低の片想い……。
優しく穏やかなな日常の謎ときから一転、驚愕のエンディングに、誰もがきっと目を瞠る。
青春ミステリの名手、岡崎琢磨が送る、究極の青春恋愛ミステリ。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
かなり好きな本。
美しくも現実的で残酷なお話。
夏樹の心情も、冬子の心情も推して知るべし。
後書きの「日常がいかに不安定で、言葉にして記憶に定着させなければどんどん風化していってしまうということをこの作品は読者に語り掛けてくる。決して止めることのできない時の流れの残酷さと共に。」という最後の文章にもすごく考えさせられた。大切な思い出を思い起こすと共に、きちんと文字で残しておきたいと思えた。
Posted by ブクログ
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「奇妙な出来事には、説明をつけてやらないとな」
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岡崎さんの作品の中の日常に転がる謎を解き明かしていく設定が好き。この作品は更に、それが伏線になっていてある事実が分かった時どの台詞も取り零せないなとなり、読み返したくなった。
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"キセツ"するっていう2人だけの共通言語もあり、色んな謎を解いてきて関係性も育まれていく中でのある結末に唸ってしまった。
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本書は、タレーランシリーズでデビューする前に仕上げた作品を全面改稿して、元は単行本で出版されたものが文庫化されたものです。
そういう意味では岡崎琢磨さんの小説の基盤のような作品と捉えることができるので、タレーランシリーズなどで岡崎琢磨さんに興味を持った人におすすめです。
Posted by ブクログ
頭の悪い人は着いてけない感じの作品(^ ^;
一応ミステリに分類したが、
もしや主題は「うまくいかない男女の機微」か(^ ^;
一年間の季節の移ろいを描く連作短編集で、
思いは現在と過去とを行きつ戻りつしながら、
主人公二人のビミョーな「駆け引き」が垣間見える。
主人公二人の「いい人でない部分」が抉り出され、
とてもリアルな姿が徐々に浮き上がる。
そのため、完全に感情移入しきれない印象だが、
それだけリアルな人間像が描かれていると言えるか(^ ^;
クライマックスで、物語冒頭からの様々なナゾや
「引っ張り」が綺麗に一本の線につながる様が見事。
セリフ的にはやや説明くさいが(^ ^;
どんな細かな伏線も見逃してはならず、
ちょっとした物言いなども覚えてなければならんので、
「頭の悪い人」は置いてけぼりになる(^ ^;
最初から最後まで、漂う緊張感がたまらない(^ ^
文章でしか表せない叙述トリックも心地よい(^ ^
最後の最後の「静かな修羅場」の先が怖い(^ ^;
盛り沢山な内容だが、随所に散りばめられた
叙情的な心象表現でほっと息をつけ、
リーダビリティは高い(^ ^
じっくり腰を据えて「一気読み」がオススメです(^ ^
Posted by ブクログ
あらすじに書かれてる「切なさ最大級の青春片恋ミステリ」というがまさに的を得てる。物語はどちらかというとミステリ要素が強い。各章,思わせぶりな主人公の呟きに最後まで一気読み必至。そしてラストは誰しも経験するあの不条理な想いを思い出すだろう。そしてそれこそが恋愛なのだと古傷が痛むかもしれない。
あらすじ(背表紙より)
男女だけど「親友」の夏樹と冬子。高校時代、日常の謎解きという共通の趣味で、2人は誰よりもわかり合えていた。ただ、夏樹が密かに、冬子に片想いしていたことを除いて…。そして今、社会人になった夏樹は、冬子に会いに神戸を訪れる。今度こそ、想いを伝えると決めて。けれど冬子は、なぜかかたくなにチャンスをくれなくて…。ウィットに富んだ日常の謎から、誰もが目を瞠る驚きのラストへ。切なさ最大級の青春片恋ミステリ。
匿名
どこか救いを求めていたと思う。
『珈琲店タレーランの事件簿』の作者でもある岡崎琢磨さんの小説ならきっと最後に暖かい気持ちなる展開があると思っていたけど、移りゆく時は非情だと思い知らされた感じがする。
しかしこの小説は随所に心(傷)にしみるフレーズがあるため私はこの小説をまた思い出すのだと思う。
Posted by ブクログ
久々本を読んだ。またゆっくり本を読む時間をつくりたいと思いつつ、さて感想。
氏の作品は他のシリーズもいくつか読んでいるが、登場する男性の像が比較的に似通ってる気がする。タレーランシリーズの語り手などは典型的に。
いいとか悪いとかではなく好みという前提に過ぎないが、この男性像に共感できる人はどれくらいいるんだろうか。ミステリーに登場する人物なんてクセしかないだろうけど、悪い意味ではなく、むしろ僕にはこうした男性像を重ねてしまう10代から20代前半があったように思う。若干中二病的な?キセツなんてしてないけど(笑)
そしてその彼が最後の最後でも中二病から卒業しきれない感じがあるという、ロマンチックなんだからファンタジーが過ぎるのかわからない状況で、それでもなおその主人公に妙な親近感があるのは、おそらく、きっと自分がまだなんとも大人になりきれていないからなんだろうと思う。
痛々しいといえばその通りで自分の弱いところを自覚させられ、枕を涙で濡らしそう(笑)
ミステリー的には氏らしい叙述でミスリードしてたと思うんだけど、最後のキセツの解決はちょっと無理があったように思えなくはない。壮大な伏線ですごいと感じる一方、それまでであればおそらく解けなかったであろう冬子の冴え渡る推理は少しチートが効き過ぎかなと。
ただ、夏樹のある意味でダダ漏れな思いやそれに伴う行動を何かしらのブースターにしていたという意図もあったのかもしれない。
そこらへんのじれったくすれ違う感じは高校生とも大人とも違うアオハル具合がうまくでているんだろうな。
Posted by ブクログ
帰宅中、読み終わってから最寄り駅までの時間、男女の友情ってなんなんだろう、と考えてしまった。友達を好きな夏樹、友達に好かれる冬子、どちらの立場にもなったことがあるからこそ、二人の噛み合わない心境を痛いほど理解してしまってずっと切ない。
この作品のミステリー要素である「キセツ」は、奇妙なことに説明をつけるという、二人を結びつける内輪ノリのような、小さな秘密のようなもの。こういった友人同士をつなぐ言葉、もしくは場所や音楽などは、親しい間柄の中に必ず存在する気がする。男女間の友情でもそれは例外ではないが、お互いにパートナーができ関係性が変わってしまうと、その共通項は二人の思い出の中にしまうことを余儀なくされる。そういった男女の友情の儚さを美しく、生々しい表現で捉えている作品だった。
Posted by ブクログ
好きになろうとしてもなれない、その言葉を言われたら辛すぎるなと思った。
誰のメリーゴーランドに乗っているのか、はたまた乗っていないのか。
わたしはどうなんだろう、、
叙述が面白かった。
Posted by ブクログ
高校で隣の席になった事で友達になった夏樹と冬子。
日常の気になる出来事を『キセツ』と称して、推理するのだけど、夏樹には別の想いが。
過去と現在が交差した二人の恋の行方は?
せつない。