【感想・ネタバレ】かしましめし(1)のレビュー

「28歳ともなれば 知っている
私たちが欲しいのは“問題の解決”とかじゃない
問題が解決したって 助かるわけじゃないんだ」

アラサーの心にしみじみと沁みるセリフです。

このマンガの良いところは、ごはんやチープな友情を理由に安易に悩み相談したり答えを出そうとしないところ。
千春もナカムラも英治も、そんなに簡単に幸せになれるような楽な人生じゃないってことは分かっているのです。
分かっているうえで、毎日の食事くらいは美味しく、楽しく、幸せに食べたい、ただそのためだけに一緒に食事をするのです。
変な悩み相談も無理矢理な結論もない、自然に流れていく物語が心地よいです。

そして何よりも良いのは、おかざき先生が描く、3人の「美味しい!」の表情!
はふはふ、ほふほふ、夢見心地な両目に高揚した頬、とにかく幸せそうな顔が最高です。
毎回詳細なレシピとともに出てくる絶品料理は、どれも本当に美味しそうですが、
私が一番食べてみたいのは、第1話に出てくる「ホットプレートで作る包まないギョーザ」!ぜひ今度挑戦してみたい。

心が疲れたとき、悩みに悩んでにっちもさっちもいかなくなったとき。
無理に答えを求めるのではなく、誰かとただただ美味しいごはんを食べることも大切なことですよね。

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アラサー3人めし

かつて同じ美大に通ったアラサーの男女3人がごはんを作って食べるデトックス的なお話の第一巻。

主人公はあこがれて入った会社についていけずに辞めて今は仕事なし、独身で28歳の千春。
美大時代の同級生が亡くなったあとの葬儀でかつての同級生と再会。
バリバリのキャリアウーマンでキリキリ働いているが男のことになるとつまづいてしまうナカムラ。
恋人との関係がうまくいっていないゲイの英治。
突然の同級生の死と彼が美大生なのにラグビー部という変わった人物だったこともあり話をするがそのなかで千春が付き合っていたその同級生と英治も付き合っていたということが発覚。
泣きくれる英治に対して千春は泣きそびれてしまったのだった。
その前に仕事を辞めて何かに没頭したい千春は一心不乱に料理をするものの一人なので食べきれない。
葬儀をきっかけにかつての同級生を自宅に招いてご飯を一緒に食べようと言ってしまったのだった。
3人で食べながら仕事を辞めたことを打ち明けなきゃと思いながらも言えない千春は若干無理しながら言うが泣いてしまう。
それに対して二人は解決することならともかくそうじゃないことは無理して言わなくてもいいと諭す。
それから何が解決するわけでも劇的に変わるわけでもないが定期的に集まっては食べながらいろいろ話をする3人だった。

若くなくなると何となくだけどもう解決しようのないことというのが肌感覚で分かってくる。
だからそれを解決しなきゃいけないとかどうにかしなきゃいけないとか思わずに気負わずに食べながら話せる相手はとても大切である。
それができる3人は卒業後再び出会えてよかったと思う。


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2021年07月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

3人が美味しそうにご飯を食べている笑顔にほっとする。
大人になると色々ある訳で、一人暮らしをしていると
ご飯が疎かになったり、それどころではなかったりして、
表面上は問題なさそうに見えても
誰しも何かを抱えていて。
でも、誰かと美味しいねと言い合いながら食べる時間が
問題の解決にはならなくてもこの上もなく大事だったりする。

「それでも今日も生きていく。 ご飯を食べる。」
”大人”の人には多かれ少なかれ刺さると思う。

嫌なことがある中でバターチキンカレーを仕込んで
翌日にそのおかげで起きれるというのも
社会人あるあるな感じ。

英治は 食材やお酒を 持って来て後片づけもしてくれて
ナカムラはお金を置いていってくれて、
このベタベタし過ぎない関係が心地良い。

行き詰まっているとき、何も考えずに集中できることがあるのって大事で、
千切りに集中できて、しかもそれで
おいしいものが作れて、というのは本当に良かった。
確かに、”活路が開けた”感じ。
そして友達に再会して、久し振りに笑えて、
うちの家に来ていいよ、と言えたのが
とても良い転機になったと思う。
仕事のことも、無理に話さなくていい、話して解決することなら聞くけど
次の日楽しく起きれればいい、楽しく人生過ごせるのが一番
美味しいもの食べてたらうまいっていうだけで時間過ぎる、最高の贅沢
と言ってくれるのが本当に良い関係。

気乗りしていなかったライブで英治が思わず泣いてしまうのが良い。
ラーメンの屋台のご主人がもうやめてしまうのが寂しい。
オリンピックの前に綺麗にしておきたいんでしょ、という言葉も悲しい。
本当に人間にとって大事なことって、”綺麗にすること”だろうか。

ナカムラの事情が説明される中で、母親が仕事を辞めたら良いと
理解してくれないのは読んでいてきつかった。
仕事は好きだし自分は悪いことをしていないのに。
アドバイスされる時点で努力が足りないと思われてるんだな、
私の「これ以上できない」を信用してほしい
というのはかなり共感した。

一人だとジャンクフードを食べたくなるのもすごくわかる。
しんどいなと思ってもまた食べてしまうのを
ゆっくり自殺しているみたい、という表現が納得。

英治は気のおけない感じで良い。
2人で綺麗になってモテモテになって男取り合おう
なんて発言が面白いし、
先輩に「カミングアウトする時は特に親に
「楽しい人生」を演じ続ける覚悟がなきゃダメ」
と言われたというのが興味深い。
生き方が違う人が他の価値観を受け入れる術は
幸せそうに楽しそうにしているかどうか、というのは
一理あると思う。
でも、パートナーが帰ってこなくて辛いときも
楽しそうにやり過ごすのはキツイものがあると思う。
相手も離れていって、傷が深くなって、部屋が拷問の箱になる。

思いつきで一緒に暮らすことになるのが、
シェルターみたいですごく良いと思う。
今は優しく笑いあえるだけの空間が必要な時期だ。

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2021年02月15日

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