あらすじ
帝国での戦いからしばらく経ち――しかしなお、弱小国家ファヴェールの宰相にして、数学オタクの現代人・ナオキは苦境に立たされていた。苦楽をともにしてきた王女・ソアラからナオキに領地が下賜されることになったのだ。それはナオキを貴族階級に据え《自分と婚約できる立場になってもらう》ための、彼女からの遠回しなプロポーズだった……が。
それをこいつ――断りやがった!
前回の戦いで仲良く(?)なったライアス公爵や、助手のテレンティアにメンタルフルボッコにされる名宰相あらため、優柔不断へっぽこ人間のナオキだったが、彼にはソアラに対して踏み出せない一つの理由があった。
激動のシリーズ第3巻!!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
綺麗に物語が納まっていて、「え? まだ続巻の予定があるの?」と逆に驚かされる三巻である。
第一部完結巻と言っていいだろう。条件付き敗北や条件付き勝利で限定的な条件によって生き延びてきたナオキ&ソアラだが、今回は(国内での話とはいえ)綺麗に完勝している。辛勝ではあったが。
今回の物語の焦点はナオキとソアラの関係であり、もっと言えばナオキ自身について。冒頭で示される通り、今際の際で解答を返せなかった、祖父の置き土産の数式が主題だ。
そんな主題をあっさり解き明かせる天才少女・トゥーナが今回登場しているが、彼女の存在感はやや薄めである。内政物から内戦物へと展開を遂げた物語の中で、ちょっと立ち位置が定まらなかったかもしれない。
ただ、それも含めて、彼が彼女と向き合うまでの物語と考えれば、そこに不足はなかったと見ていいだろう。数式解決におけるキーパーソンの一人にはなっている。
綺麗に納まった物語である。シリーズ全体を含めて星五つで評価したい。
この流れで次巻がどうなるのかはやや謎ではあるが、それについては次巻でまた確認したい。
なお、書き下ろしショートストーリー(たぶん初版封入特典の類)は「価格と美味しさの数式 ~美味しさと値段は比例するか?~」。
タイトル通りの内容をヴェーバー-フェヒナーの法則から導き出しているが、地味に面白い内容なのでショートストーリーとしては上等である。
上等であるだけに、逆に本編に含まれていないのがやや惜しまれる。ナオキとソアラが数学バカらしいやりとりで失敗する小粋な掌編である。