【感想・ネタバレ】昨日までの世界(上)―文明の源流と人類の未来のレビュー

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Posted by ブクログ 2023年02月19日

自分が持っているあらゆる価値観が絶対的ではないと知る。とはいえ、その価値観はその文化を育んできた背景の中で、より平和で幸福な方向へと向かってかなり合理的に決定されてきているのだと考える。わたしはいまの世界の価値観を受け入れつつ、変えるべきことを変えていきたい。

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・伝統的社会 社会的ネッ...続きを読むトワークが強調される。同じコミュニティでは勝ちも負けもない。
・現代国家社会。特にアメリカ 個人の重要性が強調される。自己利益最大化、自分本位の個人主義、個人間の優劣

▲子供に優劣、競争させ、のべつまくなしに指示を与える→子供の発達を阻害
○人と会話して過ごす。受け身ではなく能動的に遊ぶ。社会性を身につける。


【現代国家と違う】
・放任主義の子育て。幼くても自分の行動に責任を持つべき。火のすぐそばで子どもが遊ぶ、火傷をすることも、ナイフを握ったり口に入れたり振り回すことも許容

・介添なしの出産=人間は強くあるべきで、自力で困難に向かうべき

★アロペアレンティング=アカビグミー族では1時間に平均8回いろいろな人に手渡される

【背景となる合理性】
・国家社会 VS 非国家社会
・国家社会は子供に利害をもっている。有能で従順な市民、労働者、兵士にする必要。
・中央集権的に決められ、道徳の範囲が決められる。

・狩猟民族では、食糧確保における女性の貢献度が高いと、父親の子育てへの貢献度が高い
・ニューギニア高地では男性は戦うもの、家族を守るもの、と考える

・狩猟民族は所有物が少ない=体罰が少ない
・農耕民族や牧畜民は所有物や財産が多い。=家族や集団全体に被害を与えるようなことを子供がしないように体罰。

・狩猟採取民族は徹底した平等主義。
・子供の発達が親の責任とは考えない

・狩猟採取民族は高齢者や病人を帯同できない。よって遺棄、殺害する。

・現代国家高齢者は社会的に孤立する傾向。利用価値が昔より低い。

★子ども夫婦の子育てを助ける
★加齢とともに向上する心身の属性を生かす=専門分野にかかわる知見や経験、人間や人間関係についての理解力、自分のエゴを抑えて他人を助ける力、多面的知識データベースが関与する複雑な問題の学際的思考の組み合わせ力
★管理、監督、教育、助言、戦略立案、取りまとめ
★高齢者が得意とし、かつ、やりたいことを任せる

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Posted by ブクログ 2021年11月29日

600万年の人類史。1万1000年前に農耕民族になり、5400年前に国家が成立し文字が生まれた。

大きく4つの社会形態
1. バンド (小規模血族集団) - 数十人だけ。平等で1万1000年前まで存在。
2. トライブ (部族社会) - 数百人規模。みな知り合い。政治的指導者の存在が希薄で専門家は...続きを読む進んでない。1万3000年前から存在?
3. チーフダム (首長制社会) - 人口が増加して経済活動が専門化しはじめる。見知らぬ人と会っても同領内いることによる安心感で紛争が減る。首長の神権的地位から派生した共通の政治的宗教的アイデンティティあり。また経済的な再分配。貢物と分配。政治的経済的イノベーションが生まれたが、制度的な不平等が生まれた。7000年前までには存在?
4. ステート (国家) - 人口規模の増加、政治の組織化、食糧生産の集約化。

世界中に多様な社会が存在しているのか。
x - 知能の差、生物学的な差、労働倫理の差、
o - 環境による違い。政治の集権化が進み、社会清掃が増えたのは、人口の稠密になったためであり、それは農耕と牧畜により食糧生産の増加と集約化のである。栽培化や家畜化ができる野生の動植物の種類は地域によって異なる。

第二章
国家社会における司法の欠点は、制度の趣旨が、民事の場合は損害を賠償する責任の所在を判断すること、刑事の場合は加害者に賠償させることとされ、感情的な対立の終息や和解をはかるという事が二の次にされ、ほとんど目的にもされないということ。 - 実験的に修復的司法が取り入れられている。
非国家社会では、人間関係を含むさまざまな関係を紛争前の状態にまで回復し、感情面での対立を終結させる

国会社会の紛争解決システムの利点は、1) 報復抑止の効果、2) 紛争解決の判断が当事者間の力関係の外側でなされ、3) 刑事民事上の罪を明確にすることで再犯や一般の人の犯罪抑制効果。

第4章
人間が生得的に暴力的かあるいは協調的かの議論は無益。どちらでもありうる。どの形質が特徴として際立つかは外部環境の影響に左右される

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Posted by ブクログ 2017年01月19日

201701/

グドールが観察したのは、子供たちにバナナを与える遊びである。その遊びでは、まず、子供たちの前に、一房のバナナがおかれる。その房には、ひとり一本のバナナがいきわたるように、十分な数のバナナがついている。この遊びでは、子供たちが一番大きなバナナを取り合うということはしない。それぞれの子...続きを読む供が自分のバナナをふたつに切って、一切れを自分で食べ、残りの一切れを別の子供に差出し、その子供から一切れをもらう、ということをするのである。そして、最初の半分の一切れを食べ終わると、残りの半分をまた二つに切って、その一切れを自分で食べ、残りの一切れを別の子供に差出し、その子供から一切れをもらう。子供たちはこのやりとりを五回繰り返すので、バナナの大きさは八分の一、十六分の一とだんだん小さくなっていき、最後の最後には、三十二分の一という小さな切れ端になる。そして、最後にそうなったとき、子供は三十二分の一切れを自分で食べ、残りの一切れを別の子供に差出し、その子供がその三十二分の一切れを受け取って食べるのである。つまり、この、儀式ごっこの遊びは全て子供の教育と訓練の一環だった。ニューギニアの子供たちは、この儀式ごっこの遊びから、自分が得することではなく、みなで分け合うことを学ぶのである。/

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Posted by ブクログ 2013年07月03日

おもしろい!
部族間で争っていた時代には敵を殺すことは称賛に値していたんだ。なんで殺してはいけないかといえば、めぐって自分も殺されたらいやだから。殺してはいけない。命を長らえることはよいこと。食糧の確保、危険の回避、医療の進歩。人類は命を長らえるすべを手に入れてきた。ちっぽけなようでやっぱり凄いな。...続きを読むそうして地球上にひしめき合っている命。今のテーマは欲望をどのようにコントロールするか。人間が頭でっかちになると結局自分を滅ぼしてしまう。70億の人口は多いようにも思うけど、実際のところ母なる地球にとってはどうなのだろう。自分と、隣の人と、母なる地球を大事にしたくなる。

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Posted by ブクログ 2013年05月25日

パプアニューギニアでの伝統社会を主とはしているが、まだ首長制の名残が残っているアフリカやアジアの国々はもちろん、かつての日本における社会の成り立ちを考える意味でも面白かった。特に自然が豊かで狩猟採集から始まった社会では、同じような成り立ちから現代に至っているのではないか。伝統社会やコミュニティがまだ...続きを読むしっかり残っている社会に急激な貨幣経済や資本主義が流入している中で、今後の地域や精神社会にどのような影響を来すのか、非常に興味深いところである。

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Posted by ブクログ 2013年05月21日

UCLA医学部生理学教授を経て、主に生物学畑を修めるも、その後鳥類学、人類生態学へと研究領域が多岐に渡った著者による一冊。

タイトルの通り昨日までの世界すなわち、著者が主なフィールドとして再三渡っているニューギニアの文化をはじめ、オーストラリア周辺からはクナイ族、ヨルング族、ユーラシア大陸からはア...続きを読むイヌ民族、キルギス族、アフリカ大陸からはクン族、ピグミー族、北アメリカからチュマシュ族、カルーサ族、南アメリカ大陸からはヤマノミ族、シリオノ族などを「伝統的社会」として主にアメリカ文明との違いについて展開されている。

特に、印象深かったのが、ニューギニアの紛争解決と、所謂アメリカ等の国家が提供する民事司法の差異についてだった。 

子供を轢き殺してしまったという痛ましい事件において、ニューギニアでは被害者家族の葬儀に加害者が参加し、葬儀に食物を提供し、弔辞を述べる。こうした儀式が目指すところは「許す」というプロセスを社会的に支援しているというところだとして紹介されている。一方、民事司法の目指すところは、私的な暴力をやめさせる国家の権威とされている。

こうした紛争解決プロセスの他に高齢者社会との付き合い方、組織知の形勢プロセス等のテーマが展開されている。 どちらがいい悪いではないのだろうが「昨日までの世界」には、今日我々がぶかっているテーマに対する解答例が存分に詰まっている、と感じさせる一冊。

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Posted by ブクログ 2023年02月02日

ダイアモンド氏 3編目。
伝統的社会と現代社会を比較しながら、様々な考察を行う。相変わらず膨大な知識に基く検証は凄いの一言。
上巻では語られるのは商売などに代表される取引の実情、戦争、子育て、高齢者など。
取引と言っても現代では通貨があるが、伝統的社会では主に物々交換。地域や民族によって生産される物...続きを読むも違い、暗黙の了解で助け合っている。そんな人達が争いを起こしたりと、規模こそ違えども現代も変わらないなと感じた。
高齢者の章は初版から10年経っておりさらに深刻。価値が下がっている、というのは凄く納得出来た。

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Posted by ブクログ 2020年08月14日

ダイアモンド博士の本業だったニューギニアでのフィールドワークを多く読ませてくれる。伝統的社会と比較することで、現代社会がどういうものか、我々が常識としている価値観がどういうものか、客観的に考えさせてくれる点が最も有意義な点となっている。ほんの数万年前までは誰しもがこういった生活を送っていたと想像させ...続きを読むてくれる。
伝統的社会では幼児が母親と一緒にいる時間が高割合との記述があったが、その後、祖父母や親戚などコミュニティで子育てして両親は食物採取に行ける、という記述もあり、内容的に混乱してしまった…

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Posted by ブクログ 2019年07月24日

今まで読んだダイアモンドの作品とは一線を画している様な気がする。

この作者がずっと研究してきた伝統的社会との比較を通じて、現代社会への問題提起をしている。
どれが正しいとか間違っているとかの判断を下そうというものではなく、哲学的な色が強いかな。
恐らく晩年に達している作者は、自分の研究から得...続きを読むた考えを集大成的する意味合いで作ったと思う。それだけに作者の強い思いが伝わってくる。


自分と他者とを区別する境界線から始まって、「平和と戦争」・「子育てと高齢者」についての考察が上巻の内容。
作者のいうところの工業化社会に属している自分にとって、全く別の価値観(伝統的社会の価値観)を提示することで、自分たちの考えを俯瞰して冷静に見ることができる。
こういう風に自分の価値観をひっくり返す作業は、頭を柔らかくするには一番な気がする。


個人的に面白かったのは終盤の高齢者の位置づけと価値の話。
特に高齢化社会が今後も進んでいく日本としては、作者が提示する高齢者の価値(子育て・経験の共有・高齢だからこそできる仕事)は暗い問題に対する希望になり得るんじゃないだろうか。

下巻への期待も込めて星四つで。

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Posted by ブクログ 2018年10月20日

狩猟採取社会や首長部族社会などの伝統的社会と現代の国家的社会を比較する。狩猟採取社会は人間が現代のような社会を形作る以前の何万年と進化してきたものだ。その社会で採用されている風習は進化の波に洗われてきたものといえる。伝統的社会との比較による知見をこれからのわれわれの政策に生かすことを目的にしたという...続きを読む

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Posted by ブクログ 2017年04月08日

「銃・病原菌・鉄」では、人類の文明が発達したのかを説明した著者が文明化した社会と未開社会(この本では伝統的社会)を比較を論じたもの。
前著が文明社会が伝統社会に対して優越していることを前提で書かれていたのに対して、この本では文明社会の抱える問題に対する解決策のヒントが伝統的社会にあるのではないかとい...続きを読むう視点で書かれている。上巻は紛争、育児、老人について、述べられている。

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Posted by ブクログ 2015年04月13日

銃・病原菌・鉄 の作者 ジァレド・ダイアモンド の新作

ニューギニアを調査し、文明の源流と人類の未来を考える

子育て、高齢者への対応
嬰児殺し、敬うか、遺棄するか、殺すか?


伝統的戦争と国家戦争

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Posted by ブクログ 2020年07月15日

かなり内容の濃い本だった。筆者の基本的なスタンスとして、とことんまで事実を調べて、それと比較が出来る別の事象までも集めてきて、細かすぎるまでに徹底的に論理的に検証を進めている、ということが伝わってきて、どの話も、とても説得力が有る。
扱っているトピックも、戦争や、子殺し、賠償、などどんな小さな村や社...続きを読む会にもあるような普遍的で、かつ生々しい、根源的な事柄を取り扱っていて、どれも人間の本性について考えさせられる興味深い内容ばかりだった。

いかに自分が、自分の育ってきた世界の価値観に染まりきっているかということがよくわかる。
世界には様々な価値観があって、その間に優劣はないし、どれが絶対的に正しい常識ということもない。
自分がもし、日本とは違う国や、今とは違う時代に生まれ育っていたら、まったく違う常識や判断基準を持ち、したがって、今の自分とはまるっきり違う人間になっていただろう。
たとえばもし自分が「子供への体罰は良くないことだ」という価値観を持っていて、それに絶対の自信を持っていたとしても、それは自分が熟考を末によってそういう価値観にたどりついたわけではなく、前提として、自分が育った環境の価値観をストレートに受け継いでいる。

【興味深かった話し】
ピマ族やナウル島人には飛び抜けて糖尿病の人が多い。
肥満になりやすい体というのは、エネルギーである脂肪を体に蓄積出来るということで、飢餓の状況での生存に有利なので、周期的な飢餓にさらされていたピマ族では、そういう体質の人が多く生き残った。皮肉なことに、それらの人が急速に文明化して、日々の食べ物に困らなくなった途端に、一気に糖尿病によって死ぬ人が激増してしまった。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2015年02月01日

さすがジャレド・ダイアモンド…と、唸らせる内容。
伝統文化と近代文化の対比による、現代社会の問題点への指摘と対策、決してユートピアではない伝統文化の在り方を、滑らかな筆致で読ませる。下巻を読むのが楽しみ。

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Posted by ブクログ 2014年02月22日

 興味深かったのは、ニューギニアで交通事故を起こした場合の調停の部分。

 使用人として事故を起こした場合は会社が責を負い、すべて対応するのは当たり前ですが、報復殺人を避けるために代理人を置いてわずか5日程度で調停が終了する。代理人は被害者・加害者とは別の部族のものが行い、ほぼ1回の調停で賠償額(S...続きを読むorry Money)を決め、報復殺人が行われないと確信した時点で被害者・加害者ともに葬式が行われた。もし個人で起こしてしまった場合には、加害者の村・親類縁者が賠償することになる。
 このような状態になっているのは、現代社会において事故など発生しても当事者同士がかかわることはまずないが、ニューギニアでは反対に一生関係を持ち続ける可能性があるからだ。

 マオリ族の遠隔地戦争を支えたのが、従来栽培されてきたサツマイモではなくて、ヨーロッパからもたらされたジャガイモで、それは生産性が高かったから。

 マオリ族の一部の部族がマスケット銃を得て、ほかの部族を滅ぼしていったが、ほかの部族にもマスケット中が行き渡った結果、武力紛争は終結した。現代もあまり変わらない。

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Posted by ブクログ 2014年01月24日

  ジャレド・ダイアモンド「昨日までの世界(原題:The World until Yesterday~What can we learn from Traditional Societies?)」の上巻を、やっと、本当にやっと読み終わる。
  この人の本は、「銃・病原菌・鉄」、「文明崩壊-滅亡と存続...続きを読むの命運を分けるもの」に続く三回目、それぞれ上下巻二冊で、どれも、もぉぉ~本当に分厚くて長い。小さい活字で頁にびっしりというのが定番だ。なぜこんなに長いのか? それは彼が実際に見聞きした事実を隠さずに克明に書こうとしているからだ、ということになるだろう。今回はインドネシアのニューギニア島でのフィールドワークで見聞し体験したことをベースとしたものだが、伝統的社会(要するに西洋文明に染まっていない現地人の社会)にどっぷりと浸かって調査するといういつものパターン。よくぞここまでするものだと感心させられるのだが、そんな中での具体的な見聞記だから、それは実に興味深く面白くないわけがない。ボリュームにうんざりしながらもつい読み進むというわけだ。

  現地人の生活ぶりを様々な視点から分析してゆく中で、やはり切実なのが「高齢者への対応」。伝統的社会では、高齢者はどのような扱いを受けるのか。かつて日本でも姨捨山の例があったようだが、ニューギニア高地人でも事情は同じ、いやむしろ遥かに厳しいと云えるのかも知れない。要はただお荷物になってしまった老人はもはや生きる道がない。一方で、貴重な知識や技能をもつ、役に立つ老人のみが尊重されるという事実。ギリギリの食料事情の中では当然のことなのかも知れない。生きることを許されなくなった老人には、部族によって異なるものの、①完全に無視され食事は与えられず放置される、②移動の途中で置き去りにされる、③自殺を求められる、そして④我が子によって殺される(殺し方も衝撃的なものが多い)、というパターンに分かれるよう。それにしても現代の我々から見ると想像を絶する酷い扱いとしか云いようがない。しかし食物が十分ではない極限に近い状態で生活している人間にとっては、生き延びるためには止むを得ないことでもある。
  文明社会に生きる我々は、今、世界に食料が絶対的に不足しているとは云えない(偏りはあるが)中で、何も役に立たずともこのような酷い扱いを受けることはありえない。社会保障制度の恩恵でもってそれなりには生きてゆけるわけだが、果たしてこれが永続できるのかという疑問。どういう形にせよ老人がどのように社会に貢献すべきか、ということがこれからの大きな課題になるのは必至だろうし、そしてまた究極の問題にはなるのだが、最近話題になりつつある安楽死というテーマも避けては通れないのに違いない。我が身の処しかたも含めて大きな課題というべきだろう。実に厳しいことだが。

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Posted by ブクログ 2014年01月16日

今回も膨大なページ数。
「内容紹介からの引用」
600 万年におよぶ人類の進化の歴史のなかで、国家が成立し、
文字が出現したのはわずか5400 年前のことであり、
狩猟採集社会が農耕社会に移行したのもわずか1 万 1000 年前のことである。
長大な人類史から考えればこの時間はほんの一瞬にすぎない。...続きを読む
では、それ以前の社会、つまり「昨日までの世界」の人類は何をしてきたのだろうか?
領土問題、戦争、子育て、高齢者介護、宗教、多言語教育
……人類が数万年にわたり実践してきた問題解決法とは何か?

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Posted by ブクログ 2013年05月29日

伝統的な社会(西欧的の反対)と、我々の社会(西欧的)を、その良いところ悪いところを比較しています。伝統的な社会も、我々が通ってきた世界で、タイトル通り「昨日までの世界」。現代の我々が、何を得て、何を失ったのか、冷静に見ることができます。
上巻は、自分以外の他人への対応、戦争、子育て、高齢者への対応に...続きを読むついて。
今までの著作よりも、冷静な視点から書かれているのを感じました。

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Posted by ブクログ 2013年05月17日

『銃・病原菌・鉄』、『文明崩壊』のジャレット・ダイヤモンドの新作。

著者が文化人類学者として実地でのフィールドワークをしていたことを初めて知った。特に鳥類学者でもあったとは。本書は、クロード・レヴィ・ストロースにとっての『悲しき南回帰線』と同じような位置付けなのだろうか。前二著とは趣がやや違い、特...続きを読む徴であった壮大な論理的な推定はやや影をひそめ、その代わりに著者の実体験のエピソードが出てくる。もちろん「昨日までの世界」についての文献を広く確認し、単なるエッセイではない。『銃・病原菌・鉄』の重要な結論 ― 文明の発展は地理的な条件がたまたまそのように恵まれていたから ― の元になる経験はここにあったのかと知ることができた。

タイトルにもなっている「昨日までの世界」とは、いわゆる伝統的社会 ― 人口が疎密で、数十人から数千人の小集団で構成される ー のことである。紀元前9000年ごろになって始まった食料生産以前には国家は成立しえなかった。初めて国家らしきものが成立したのは紀元前3400年前後で、それまで少なくとも人類は「昨日までの世界」を生きていた。どちらかといえばそちらの方が本来的なものである。WEIRD = Western, Educated, Industrial, Rich, Democraticな社会は人類の歴史の中では奇妙(weird)なものなのである。「昨日までの世界」のことを知ることで、現代の世界でも役に立つことが出てくるのではないのか、というのが著者も目的のひとつでもある。

社会は、その規模により、「小規模血縁集団(Band)」、「部族社会(Tribe)」、「首長制社会(Chiefdom)」、「国家(State)」に分けられる。この分類は学術的にも一般的らしい。この社会構造の中で、他人は、「友人」、「敵」、「見知らぬ他人」に分類されるが、この中で見知らぬ他人に対する態度が伝統的社会と現代社会の大きな違いだという。また、もちろん食料調達と分業にも違いが生じる。"Size does matter"なのだ。これにより、紛争解決の方法、戦争、子供、高齢者、危険(リスク)、宗教、言語、健康、などが異なってくる。現代の司法制度と刑罰というものが特殊なものであることもわかる。本書では、それらの違い、「優劣」ではない、を丁寧に解説している。

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昨日までの世界が一世代も経たないうちに現代化され、ほぼ世界中からなくなっていこうとしている。このことは、近代化の時期が早かった地域は、その土地形状と生息生物にたまたま恵まれていただけである、という著者の『銃・病原菌・鉄』での主張につながっているように思う。また、現代化が非可逆的な過程であることも結果的に示されてもいる。

上巻は、紛争解決、戦争、子供、高齢者、まで。どれも現代社会でも重要な問題である。もちろん、昔はよかったなんてことにはならないので、安心を。

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Posted by ブクログ 2020年06月15日

ダイアモンド先生はおもしろいなあ。



しかし「なのである」「食する」とかが多くてなんか違和感。

倉骨先生ってこんな訳文つくる人だっけか。

短期間で翻訳するために下請け変えたのかな。

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Posted by ブクログ 2020年10月25日

上巻しか買っていない本

ジャレドダイアモンド 「昨日までの世界」

伝統的社会(狩猟や牧畜を生業とする社会)を西洋社会(国家が支配する工業化社会)と対比して研究した本。上巻のテーマは戦争、子供、高齢者

高齢者の有用性と社会の処遇についての論述は 人類史というより社会
学に近いが、かなり切り込んで...続きを読むいる。この章のサブタイトルが「敬うか、遺棄するか、殺すか」

高齢者を敬う社会の例
*若者に対してタブーを設けた伝統的社会
*儒教の影響を受けた家父長制社会

高齢者を遺棄、殺す社会の例
*高齢者が移動狩猟生活の足手まといとなる社会
*食糧不足時に多数が生き残るためには高齢者が犠牲となる社会
*アメリカはじめ現代社会

アメリカはじめ現代社会において、高齢者の地位が低い理由
*労働しない高齢者は 社会的地位が低い
*個人主義のアメリカは 自分を頼りに生きる社会であり、自分で自分の面倒を見れなくなり、他者に依存する高齢者を忌み嫌う
*若さやスピードの礼賛


著者は提案として、孫の面倒、知見や人間関係能力の高さを活かす仕事 を上げているが、高齢者は知見がある、人間関係能力が高いことに根拠はないように思う


本書の仮説は「伝統的社会から西洋社会へ移行する際に淘汰された伝統的社会の思考や慣習の中に 残すべきものがある」


伝統的社会の人間関係を重視する仕組みは、個人の自由より集団の規律を重視しているように感じる

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Posted by ブクログ 2020年01月27日

著者のニューギニアでの体験を通じて伝統的社会のあり方を振り返るとともに、現代社会との対比を説明した書籍。切り口は、戦争、子供、高齢者。(生活への余裕が生まれ)文明の成熟とともに司法が発達し、当事者間に委ねない仲裁手段が発達した。高齢者は経験、知識、技術が若年者より優れていたため重宝されていた。子供・...続きを読む高齢者ともに、集団にとって負担になる場合口減らしをすることもあった。

伝統的社会は、生きることが最重要課題であり、食糧に余裕が無い時代のことである。人間も生物として、種の存続に必至であった時代のことだ。意図的な口減らし、当事者による報復合戦など、現代社会と比較して、酷な一面もある。一方で、現代社会は、食糧供給安定、文明の発達、平均寿命向上・技術革新を経て、資産を持たない高齢者への社会の関与の仕方、環境汚染などの別の面で問題が発生している。総じて、社会は改善してきているが、何をするにも副次的な影響があり、そこから発生する課題を予見しながら対処することが望まれるのは、これまでも、これからも変わらないのであろう。この普遍的な考え方を理解出来た点はよかった。

現代の高齢者の価値が、保有資産に比例するのは些か寂しい面があり、著者提示の、孫世代の育児への参加、知識経験の若年層への提供、管理者監督者としての指導は高齢者とともにある有用な選択肢であろう。

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Posted by ブクログ 2015年07月10日

ニューギニアなどの伝統的社会のあり方を類例に、現代社会の価値判断を問いかけていく。
「文明崩壊」「銃・病原菌・鉄」に比べると落ちるが、それなり以上に面白い。
上巻のラストは高齢者が大切にされない米国社会への愚痴で締め。ウザい。

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Posted by ブクログ 2015年06月07日

「銃・病原菌・鉄」で著名な生物学者が、研究のために定期的に訪れるニューギニアでの生活をもとに、伝統的社会と工業化社会との広範囲かつ詳細な比較を通して、現代社会が抱える課題と解決策を提示した大作。

著者は、我々が常識として受け容れている文化や生活様式が、実は人類の長い歴史からすれば「つい最近」作...続きを読むられたものであり、 人類が圧倒的に長い時間を過ごしてきた「昨日までの世界」における人間関係、紛争解決、リスク回避、宗教、子育て、高齢者対策の中に、「今日の世界」が物質的豊かさと引き換えに抱えた新たな社会問題を解決するためのヒントがあると主張する。

ともすれば産業化が遅れた「未開の地」として片付けられがちな伝統的社会に光を当てつつ、それらを手放しで賞賛するような単なる懐古主義に終わらない点は、著者の非常に幅広く学際的な研究領域によるところが大きいと思われる。やや冗長な表現も多いが、時空を超えて視野を広げることができるスケールの大きな作品。

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Posted by ブクログ 2014年07月19日

子どもと高齢者だけじっくり読み。今の生活に生かす気づきを得られたかっていうと微妙だけども、子育てについて、直感も大事にしよう、と感じた。情報に振り回されやすいけど、親子ともに、心穏やかに安らかに過ごしたいし、そのためには常識と思われることでも息苦しそうだったらとっぱらっていいんだな、と。本の感想なの...続きを読むか、って感じだが。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2014年01月27日

著者のフィールドであるニューギニアの暮らしはいわゆる「未開」の社会(伝統的社会)ではあるが、我々が暮らす現代社会は10万年近い人類史から見るとほんの一瞬に過ぎない。農耕が始まる1万1000年前までは狩猟採取の生活であったし、国家の成立もたかだか5400年前。必ずしも伝統的社会はよいことばかりではない...続きを読むが、と断りつつも全体に伝統的社会に対するノスタルジアを感じさせる内容。

・西洋社会は個人主義であり、他人との競争が中心になっている。伝統的社会は個よりも集団としての振る舞いが重要になる。個人がおこした不祥事の後始末もコミュニティ全体でけりをつけるし、その際はこれまでのコミュニティ同士の貸し借りの精算も行なわれる。

・食料などが十分にはない社会では高齢者の口減らしが行なわれることも多い。口伝に頼らなくとも知識が伝えられるようになった現代社会でも「老人の知恵」はさほど必要とされてはいないが孫を育てる手伝いなどをする。

・子育てなどは親以外の人々(アロペアレント)が介入し、子育ての責任は社会全般で共有される。
体罰はしない社会とする社会とがある。一般的に、狩猟民族は子供に対する体罰を行わないが、牧畜民族などでは行なわれる。これは家畜のように希少な共有在を持つ社会では子供の間違った行動によって大きな損失を招く可能性があるからなのだろう。
授乳期は長く、両親と行動を共にすることも多く、アロペアレントによって多くの社会モデルを目にし、スキンシップも多い。こうしたことがよりよい人間に育つ原因である、とややノスタルジックな見方がされる
復讐心や戦争は人類のDNAに刻み込まれているのだろう

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Posted by ブクログ 2013年11月02日

現代社会の1つ前の世界として、独立した生活様式を維持していたニューギニア高地人との比較を通して、戦争・宗教・社会的つながりについて考察した本

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Posted by ブクログ 2013年10月18日

上下巻まとめて。
主にニューギニアにみる、現代に残る「昨日までの世界」と、西欧的な現代の社会をどうすり合わせようか、ということか。
昨日までの世界にある危険と、現代の社会にある危険はさっぱり一致しない。だが昨日までの世界に見られる建設的なパラノイアは、人が人たるためのものであったのではないか、と強く...続きを読む思う。
短い時間で一気に昨日までの世界から現代の社会に放り出されると、人は大変な変貌を遂げてしまう。
上巻の印象は、濃密な関係のある世界と、これっきり会うことがないであろう人々の利害でできた世界の対比。下巻は宗教や言語、食事などに期待された役割とその変貌。他にも多くのトピックがあるのだが、似た話の繰り返し、という気もしなくもない。
やはり隣人とは争うものなのだなあ、などと、きっとテーマとは異なる印象を強くした。

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Posted by ブクログ 2013年08月09日

伝統的社会と現代社会の比較。
思考の流れ、仮説が多く、冒頭か章末に結論、まとめを書いて欲しい。
ニューギニア伝統的社会の事情には相当お詳しいが、近代日本の事情には疎いようだ。

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Posted by ブクログ 2013年12月29日

西洋社会との接触が限定的な工業化されていない小集団社会は、人類600万年の歴史の中で、そのほとんどを過ごしてきた社会である。

改めて、短期間での変化の大きさに気づく。前著作の存在意義がわかる。

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