あらすじ
田中幸乃、30歳。元恋人の家に放火して妻と1歳の双子を殺めた罪で、彼女は死刑を宣告された。凶行の背景に何があったのか。産科医、義姉、中学時代の親友、元恋人の友人、刑務官ら彼女の人生に関わった人々の追想から浮かび上がる世論の虚妄、そしてあまりにも哀しい真実。幼なじみの弁護士たちが再審を求めて奔走するが、彼女は……筆舌に尽くせぬ孤独を描き抜いた慟哭の長篇ミステリー。
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Posted by ブクログ
この物語に私に伝えるメッセージはなんだろう、と考え始めたのは、中年の専門講師の「物語には必ず著者のメッセージがあって、それを言語化できなければならない」という言葉を聞いた時からだった。
その言葉を聞いた時私は、否定も肯定もできなかった。肯定すれば今後の物語との出会いに何か制限を課せられたような気がしたからだ。否定できなかったのは、反論する程の論理を立てられなかったからだ。
そして今日私は、その専門講師の言葉が崩れていくのを感じた。なぜか、私は、この本で田中幸乃の人生を見たからだ。それは、こういう風に生きろとか説法を唱える文章ではなかった。田中幸乃という人生が伝える一言では済まされない、現代の言葉では表現しきれない何か、その解説でようやく腑に落ちる。
田中幸乃を物語の一人として受け入れられない。確かに柔和な表情をこぼす彼女を私は見た。そして、彼女をかたちづくる、一番の理解者である早見和真先生も隣にいる。
早見先生、田中幸乃の人生を見せてくれてありがとうございます。
本がある理由を教わった一冊になりました。
Posted by ブクログ
あまりにも悲しい、辛い、虚しい、、、そういった言葉だけでは形容しがたいほど衝撃を受けた。
章が進むにつれて加速度的に物語にのめり込んだ。
次の日仕事にも関わらず読み始めてしまったのが運の尽き、寝不足で仕事へ行くことになってしまった(まったく後悔はない)。
最後のシーン、心の底から「お願い!気を失って!」と何度も脳内で祈り叫んでいた。声に出ていたかもしれない。
けれど、ふと我に返ったとき、
それは田中幸乃にとって幸せなのか?
この気持ちは彼女を取り巻く人達と同じように、一方的な優しさという名の傲慢ではないのか?
と気づかされた。
複雑な感情が脳内をぐるぐる渦巻く読後感がしばらく続いていた中、辻村深月さんの解説が本当に言い得て妙でした。
また、慎一がようやく真実にたどり着いたのに、本当にあと一歩のところで間に合わなかったシーン。
本当に歯がゆい気持ちになった。
そして、慎一や老婆は、死刑執行の事実を知った時どのような心境だったのだろうか。
『店長がバカすぎて』で早見和真さんを知ったけれど、本当に同じ作者?と疑いたくなる程のギャップに驚かされた。
今までヒューマンドラマや社会派小説ばかり読んできたが、ミステリーの良さを知ることができた作品。
またジャンルの幅が広がっていく。楽しい。
Posted by ブクログ
めでたしめでたしではない物語だった。
とても考えさせられる物語。
読後感が凄まじい。
田中幸乃という人物。
元恋人の一家を殺害したとして
死刑判決を受ける。
その見た目だけで、育った家庭環境だけで、
最初はぜったいこの人がやったと思った。
しかし、物語を読み進めていくうちに
田中幸乃の本質が明らかになってゆく。
冤罪はあってはならない。
たとえ本人が死を望んでいたとしても。
死刑を食い止めようとした幼少期の友人を
信じて欲しかった。
とても悔やまれる。
Posted by ブクログ
何処までも救いがないように見えて、しかしその"救い"の招待すら読み手のエゴであり価値観なだけなのかも知れないなあと思う内容でした。
私は死刑制度は今後もあるべきだと思っています。
司法制度に対してまだまだ勉強中の身ではありますが、今の日本は加害者にばかり寄り添って被害者には厳しい世の中だと感じていました。
もし私が田中幸乃の起こしたニュースを見たとしたら、幸乃が死刑判決を下されてもあまり心は動かないのではないかと思います。
でも、事件の真実や背景を知ってしまうとどうしてもやりきれない気持ちになりますね。慎一の「今は、とりあえず加害者の側だから」という台詞が個人的に1番しっくりきました。
私はただの傍観者でしかないけれど、幸乃が最期少しでも苦しまず穏やかに逝けたならそれでいいのかもしれません。
Posted by ブクログ
女性死刑囚の死刑に至るまでの生い立ちが、彼女に関わった人々の目線から描かれる。
メディアを通した彼女の人生は“いかにも”で、“整形シンデレラ”と大衆がいかにも騒ぎ立てそうな呼び名までつけられる。
しかし実際は母親が事故死するまではたしかに幸福なものであり、人生の岐路で信頼していた人にことごとく利用され裏切られたことによる結末だった。
そのエピソードがつくづくしんどかった。
幸乃の死刑確定が報じられ、姉や中学時代の友人らがほっとしているようなのもやるせなかった。
人間の弱さやずるさをこれでもかと見せられたように思う。
追い詰められると自己保身のために他人をここまで貶めることができるのか。
慎一はなぜそこまで幸乃にこだわるのか始め疑問だったが、幸乃という一見不幸でしかない女性を救うことで自分が救われたかったのかなと思う。
幸乃に万引きの罪を着せたままだったわけだから。
でも、幸乃にとっては無罪が証明されることも死刑を免れることも全く望んでいなかった。
でも執行前に幸乃に生きてほしいと願う人が一人でもいたという事実は、死に向かう彼女の心をほんの少し温めたのではないかと思う。
Posted by ブクログ
必要とされたいという誰しもが持っているであろう普遍的な感情、その想いをことごとく幼少期から大人になるまで踏み躙られてきた幸乃が選んだ結末は、あまりにも悲しく、胸を掻き毟られる想いだった。
恵まれない家庭環境で育った人と接すると、必要とされたい、愛されたい、といった感情を異常なまでに感じる事があるが、それが叶わないと諦めてしまった時、また幾度とない失望に晒されて、希望を抱くことすら恐怖に感じた時、人はこの世にいることを諦めてしまうのだと思うと、身の回りの人にも起こり得そうな気がして、言葉を失った。
様々な事情から、承認欲求や愛を渇望してる人たちに、自分は何をしてあげられるのだろう。
一生彼らを必要とし、愛を与え続けられるだけの覚悟が自分にはあるのだろうか。そう思うと、これまでの自分の軽率な行動に目を覆いたくなる。
またこの作品では、人がいかに表面的な所で他者を判断しているか、という事も思い知らされる。
マスコミの報道然り、外見しかり。これもまた、日常の中で気付かぬうちに多々おきているであろう事で、日々の自分の行動を鑑みずにはいられない。
他者や他者の気持ちに対する想像力を働かせる労力と時間を皆んなが少しずつ増やせば、もしかしたら周囲の目や見えない空気に押し潰されそうになる人も少しずつ減るのかもしれないと思った。
悲しいけれど不思議と爽やかな話
ストーカー行為の末、元彼の奥さんと二人の子供を(お腹の子供を入れれば3人)放火で殺害した罪で死刑判決を受けた女性。
その女性を助けようとするかつての幼なじみ達の何年にも渡る奮闘を描いている。
真相はほのかに予測していたが、ラストは…
淡々と時が流れていくストーリーが最後になって急にサスペンスっぽくなって、一気に読みきってしまった。
私はもう一つのラストシーンを想像した「間に合っていたら」
しかし何故がこのラストが爽やかな印象を残す。
心に残る作品
Posted by ブクログ
僕は幸乃を信じることができませんでした。
幸乃は作中を通して常に善人として描かれていたのに、彼女が殺人事件を起こしたことを疑問にすら思いませんでした。慎一は幸乃ちゃんはやってない。みたいなセリフでは翔と同じようにそんなことねーよ頭お花畑かよ。と思いました。これを読んだ人は誰しもそう思ったのではないでしょうか。作者にしてやられました。悔しいです。信じることって難しいですね。
Posted by ブクログ
痛すぎる。
本当にイノセントデイズだった。
最後の、私を必要としてくれる人がいて、その人にもう見捨てられたくない。
っていう。だったら死んだ方がいい。って。
物凄くわかるからめちゃ泣いた。
幸乃にとっては死刑が救いだったのかな。
他の人には救いにはならないけど、凄くわかる。自分の発言も怖いけど、凄くわかる。
にしても、学生時代の皐月や理子たちには腹がたってしょうがない。悲しすぎた。
Posted by ブクログ
最後まで鬱感が消えなかった。
仕事の休憩中にラストを読んでしまったがためにその日は午後仕事に身が入らなかったです汗
人は自分勝手で逃げる生き物なのだと改めて痛感しました。
1日を大切に生きようと思いました
Posted by ブクログ
幸せな子供時代、最愛の母親が亡くなってしまった。そこから人生が一転してしまう。沢山の人に裏切られ見捨てられ…これ以上また誰かに見捨てられる事が怖い、それならば死ぬ方がマシだと語る幸乃。
自分で自分の人生を諦めてしまったら終わりという事なんじゃないかな。
刑務官の存在だけが救いだったかな。
Posted by ブクログ
ギリギリ⭐︎4
ミステリー‥なのかな?
田中幸乃の生涯、まわりの友達の話
翔ちゃんや慎一郎くんが幸乃の無実を晴らそうと頑張っていたけど、結局は刑が執行されて死刑になっちゃった。
おばあさんの孫が犯人だけど、その孫の仲間たちは自首しないのかな。幸乃が可哀想なだけだった。
Posted by ブクログ
多くの読者にとっての「バッドエンド」が、幸乃にとっての「ハッピーエンド」で、かつそのハッピーエンドが「死」であることに何とも言えない気持ちになった。
様々な場面で、現在社会の縮図を見たような思いがした。
人間は基本的に利己的であるというところ。
優しすぎる人がしんどい思いをするところ。
メディアは都合の良いように書き、人々がそれを良いように解釈するところ。
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「もし本当に私を必要としてくれる人がいるんだとしたら、もうその人に見捨てられるのが恐いんです」
そして幸乃は微笑みながら、ゆっくりと私から視線を逸らした。
「それは何年もここで堪え忍ぶことより、死ぬことよりずっと恐いことなんです」そう繰り返す彼女は、驚くほどキレイだった。いつか誰かに最期の瞬間を尋ねられたら、このことを伝えよう。願いを叶えようとした幸乃は間違いなく美しかった
Posted by ブクログ
誰かが必要としてくれてるけど、1人だと思いそれに気づかないでしんだほうがいいと思ってる主人公がつらい。
最後は全然ハッピーエンドじゃなく、こういうことで冤罪もうまれるんだなと思った。
スッキリはしない小説
Posted by ブクログ
間に合って!!!
そう願う事を雪乃はきっと
望んでないのだろうけど
願わざるを得ない。
まぁそれにしても
こうも彼女の周りに悪意の塊のような
人達ばかり集まるもんですか。
もう悔しくて悔しくて
腹立たしいわ、悲しいわ
やるせないわ、読むのがしんどくなる
作品でした。
あの事件も、この事件も
すべて真相を明かし、雪乃の潔白を
証明して欲しい。
そして、すでに時効となった事件だったとしても
彼女、彼らには制裁が下りますようにと願う。
Posted by ブクログ
これだけ生きることに執着がないことに驚いた
極悪人かと思いきや、とても優しい性格が垣間見えてくる。その中でも殺人を犯しているから絶対に許しては行けない人と思って読みすすめたがが、真実が明かされると、田中幸乃が本当に優しい人で環境が悪かったが故によくない方に流れていってしまった人なのか心苦しく感じた。
Posted by ブクログ
ほぼ自殺。そう考えるとすこし腑に落ちる。
だからこそ死んではいけなかったとやっぱり思ってしまう。
慎ちゃんが間に合っていたら、というタラレバを考えてしまう。それでも死刑執行を望むのだろうか。
そして幸乃に言いたい。幸乃は見捨てられてきたんじゃない。幸乃が幸せになるために、幸乃が見捨てていい相手だったのだと。
優しさにつけこみ、利用するだけ利用し、都合が悪くなると捨てる。幸乃の周りが、人としてクズだっただけ。
そんなクズに気付けず、縋ってしまう幸乃の生い立ちが不幸なだけだ。
幸乃にとっても全然ハッピーエンドじゃない。
クズに縋らずに済む人生を手に入れることが必要だったのに。
翔のおじいちゃんはヒカルが事故で亡くなった時、手を差し伸べられなかったのか?など、また余計なタラレバを考えてしまう。
そこは繋がりがなかったのか??
続きが気になってサクサク読めたけど、色々としんどかった…