あらすじ
ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を安定的に維持する―このことを可能にする社会的装置が「社会的共通資本」である。その考え方や役割を、経済学史のなかの位置づけ、農業、都市、医療、教育といった具体的テーマに即して明示。混乱と混迷の現代を切り拓く展望を開いていく、著者の思索の結晶。
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Posted by ブクログ
1928年生まれの著者
2000年刊行の岩波新書
なのだが、内容は2021年現在深刻に語られているすべての経済的、SDGS的持続可能社会への道標となる考察に満ちている。
俊英としてアメリカ経済学界でノーベル賞受賞のスター学者たちの中にあっても一目置かれていたという宇沢氏が、日本に帰国、高度成長真っ只中で積み上げていった知見。
時代より早過ぎたのかなあ。
そして本書に書かれていることが、過去50年に少しでも顧みられていたならば、地球の現在はもう少しマシになっていたはず。
しかし、経済が自己増殖し続け、環境も人のコミュニティも破壊し続け、ついには崖っぷちまで来てしまった現状、理性や良心や次世代への思いやりなどを当てにしていてはその力に歯止めをかけることはできない。
藤原正彦氏などに共通する、旧制高校出身エリートの良心を感じる本。