あらすじ
なぜあの商品は売れなかったのか?
世界の経営思想家トップ50(Thinkers50)連続1位。
「破壊的イノベーション論」の提唱者、クリステンセン教授による、待望の最新刊!
顧客が「商品Aを選択して購入する」ということは、「片づけるべき仕事(ジョブ)のためにAを雇用(ハイア)する」ことである。
『イノベーションのジレンマ』の著者による、21世紀のベスト・オブ・ビジネス書!
イノベーションの成否を分けるのは、顧客データ(この層はあの層と類似性が高い。
顧客の68%が商品Bより商品Aを好むetc)や、市場分析、スプレッドシートに表れる数字ではない。
鍵は「顧客の片づけたいジョブ(用事・仕事)」にある。
世界で最も影響力のある経営学者クレイトン・クリステンセンが、
人がモノを買う行為そのもののメカニズムを解き明かす、予測可能で優れたイノベーションの創り方。
・顧客が商品を買うこととは、片づいていない「ジョブ(用事・仕事)」を解決するために何かを「雇用」することである。
・ビッグデータは顧客が「誰か」を教えてくれても、「なぜ」買うのかは教えてくれない。
・数値化できない「因果関係」にこそ、成功するイノベーションの鍵がある。
・自社製品も他社製品も買っていない「無消費者」を取り込め。
[本書で取り上げる事例]
イケア、ゼネラルモーターズ(GM)、サザンニューハンプシャー大学、
プロクター&ギャンブル(P&G)、エアビーアンドビー、アマゾン他
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
モノを売る、ということに携わる人には必読いただきたい名書です。
⚫︎冒頭にある問い
とあるアメリカのハンバーガー屋さんでシェイクをもっと売り込みたい。ある方法で成功したのだが、どう成功したのでしょう?
↓
以下ネタバレ
↓
⚫︎不正解
・値段を変える
・味を甘くする
・量を増やす
。。。etc
⚫︎正解
・シェイクを溶けにくくした
⚫︎正解の背景
シェイクを買う顧客の多くは、アメリカ国内を移動する長距離ドライバーたち。彼らは移動中ヒマになるため、シェイクを飲んで気晴らしをしていた。シェイクが溶けにくくなることで、シェイクが長持ちし、気晴らしに使える時間が長くなった。
このように、顧客というのは『モノを買う』のではなく『困りごと(ジョブ)を解決する』というのがジョブ理論。
たしかに昔、任天堂の山内組長が『みんなゲームをやりたくて、仕方なくゲーム機を買うんだよ。』と言うておられた気がします。
モノを買ってもらうことに携わる人は知っておくべき考え方が満載、ぜひ読んでもらいたい名書籍です!
Posted by ブクログ
イノベーションにおいて「顧客課題から始めるべき」という誤った論説が流布しているせいで、その誤った宗教に染まっている人も多い。そんな人たちにせひ読んでほしいのが「ジョブ理論」だ。
この本の中核をなすのが「人は製品やサービスを“ジョブ(やるべきこと)”のために雇う」という視点だ。「ジョブ」とは願望や欲求そのものではない。それは、“不完全な現実”において、“仕方なく”選んだ手段であり、「本当はこうしたい」が実現できない文脈にこそ宿る。
たとえば、あの有名なミルクシェイクのエピソード――朝の通勤時、子どもを静かにさせたい父親が、粘度の高いミルクシェイクを“雇う”という話。ここには、「子どもがジュースを好きだから」という表層ではなく、「静かにしてほしい」という背景の“仕事”がある。この視点の転換がまさに「顕在化された課題」とその先で行き着く「矮小なアイデア」から脱却する鍵になる。
ジョブ理論を応用した「ジョブ・ストーリー」の構文はぜひ参考にしたいフレームワークだ。
・When(状況)
・I want to(やりたいこと)
・So I can(目的)
・But(阻害要因)
・Therefore I have to(雇われた手段)
これを活用して顧客理解を進めることで、「非言語のインサイト」に光を当ててくれる 。単なる課題解決ではなく、「この人がなぜこの選択肢を選ばざるを得なかったのか」という現実の葛藤に向き合うことで、より強いプロダクトコンセプトを生みだすことができる。
多くのマーケティングやペルソナ分析が見落とすのは、「顧客は論理的に意思決定をしているわけではない」という点だ。ジョブ理論は、合理的なニーズではなく、“文脈における衝動”を扱うフレームである。
「顧客課題から始める」とこうした“無意識の圧力”を見落としたまま、仮説検証を進めてしまうことで、イノベーティブさから程遠い「矮小なアイデア」に行き着いてしまう。
顧客のインサイトとは、とどのつまり「課題は“感じていない”が、困っている」という矛盾だ。そして向き合うべき"Pain"は、「それでも現状維持する理由」である。ジョブ理論は、まさにこの違和感に名前を与え、構造として抽出してくれるツールだ。
ただし、あえて一石を投じるなら、ジョブ理論の危うさは“個別性”への過信にある。最初の一歩としてN=1に向き合うことで、それを浮き彫りにすることは当然すべきである。一方で、「ジョブは状況ごとに異なる」と言い切ると、スケーラビリティの視点が抜けがちになってしまう。
事業において重要なのは、「どこまでが個別性で、どこからが共通性か」を見極める設計力である。N=1のインサイトを、どうN=1000に拡張可能な言語に変換するか。この「編集力」こそ、ジョブ理論の“次の地平”として持つべき観点であり、これを「グランドデザイン思考」と名付けた。
『ジョブ理論』は、マーケティングでも、事業開発でも、「顧客理解とは何か」を再定義する思想書である。単なる手法ではなく、「どの視座で顧客を観察するか」という根底の“問い”に迫る。この本を読んだ後、誰か一人の顧客に深くインタビューしてみてほしい。きっと、あなたの見ていた「顧客像」が、音を立てて崩れていくはずだから。
Posted by ブクログ
消費行動の理由がわかり、行動の本質を学べる一冊。
本質を知る上で「なぜ」そのサービスを利用するのかを考え続けることで目的を把握できる。
対企業において、ジョブの本質に応え続けた企業は続いている。その生存理由と背景「ある特定の環境・状況」についても理解しやすい。
「ジョブ」は人がある特定下で成し遂げたい進歩。
【明日からのtodo】
自身の消費行動はジョブ理論の何に該当するのかを言語化する。
【本の難易度】
最初の話で理解できなくても、具体例(企業等)をもとに説明があり、理解しやすい。
Posted by ブクログ
顧客はプロダクトを買っているのではなくジョブを雇っている(解雇もする)
企業は物を売っていると思っていても実際にはジョブを解決するために雇っていることが多い
ミルクシェイクを買う人はミルクシェイクを飲みたいのではなく通勤中の暇な時間の暇を潰すために飲んでいる。
・ジョブは動詞で表せる
・ジョブは適切な抽象度で表せる
・ジョブはあらゆる業界での解決策を有している
Posted by ブクログ
星4.5 最高の良書、ホームラン本(樺沢紫苑氏の言葉)だった。この著者の本は有名な本たくさんあるがまだ見れていないので早速購入したいと思った。
Posted by ブクログ
とても面白い視点を得られた。
ユーザーが購入するというのはジョブをなし得ると捉えるのはとても新しい視点だと思う。
もともと仕事というのはそういうものだったのかもしれない。
Posted by ブクログ
新規機能開発において、要求・要件定義の指針がほしかったので、読みました。「ジョブ」とは、「ある特定の状況下で顧客が成し遂げようとする進歩」と理解しました。ジョブの設定において特定のプロダクトやサービスは特定されず、また名詞と動詞で表現されます。私が朝出社する途中にあるドトールコーヒーに入るのは、「コーヒーを飲む」というジョブではなく、「出勤時間までの間に落ち着いて本を読む」というジョブです。ジョブを定義し、組織をそのジョブに向かわせ続けることが、イノベーションへの道であるという論旨です。主張が明快かついまの自分にとって考えを巡らせる材料になりそうで、とてもよい本でした。
Posted by ブクログ
顧客の求めているものをわかったつもりでは、イノベーションが成功するかは、一か八かだ。
何が顧客にその行動をとらせたのかを真に理解していないかぎり、賭けに勝つ確率は低い。
ものの見方を変えること。大事なのは、プログレス(進歩)であって、プロダクト(商品)ではない。
私たちが、商品を買うということは、基本的に、なんらかのジョブを片付けるために何かを「雇用」することである
■ジョブ理論の概要
・ジョブを明らかにして把握できたあとは、そこで得た知見を優れた、プロダクト・サービスの開発に落とし込む青写真に書き換えなければならない。
・ジョブには複雑さが内在する。機能面だけでなく、社会的及び感情的な側面もある
・ジョブはつくりだすのではなく、見つけ出すものだ。
・ジョブそのものは変化しなくても、解決の方法は、時が経つにつれて、大幅に変化することがある
・顧客がなぜその選択をしたのかを理解できていなければ、根本的に欠陥をかかえたプロセスの進め方がうまくなるだけだ
・イノベーションをみると、その中心にあるのは、顧客ではなく、顧客が片づけるべきジョブである
・ジョブを最初に発見するのは、偶然やあてずっぽうではない。ジョブ理論を深く理解することで組織はイノベーションの取り組み方と成長する方法を根本から変える能力を手に入れられる
■ジョブ理論の奥行と可能性
・問題は道具にあるのではなく、何を探し、観察した結果をどうつなぎ合わせるのかにある
・ヒントは、①身近な生活の中、②無消費に眠る機会、③間に合わせの対策、④できれば避けたいこと、⑤以外な使われ方、のなかにある
・片づけるべきジョブは、市場調査に頼るのではなく、人々の生活を注意深く観察して彼らの望みを直感し、それに従って進むことによって、探すことができる
・市場に成長の余地はもうないと感じられたら、ジョブを適切に定義できていない可能性がある
・できれば避けたいジョブは、進んでやりたいジョブと同じくらい沢山ある
・人は視野を広くもたなければならない。システムの世界で、ユーザ体験というと、美しい画面にボタンを使いやすく整列させることがすべてとおもいがちだ。
・顧客が自分の要求を正確にもれなく表明できることはめったにない。顧客の行動の動機は、本人がいうよりも複雑であり、何かを購入するまでの道筋ははるかに入り組んでいる。
・顧客が達成しようとする進歩は、文脈の中で理解しなければならない
・顧客がなしとげようともがいていることは何か、それがうまく機能していないのはなぜか、何か新しい解決策がほしいと彼らに思わせているのは何か
・ジョブを思いつくときには直観がものをいう。感覚としてはあっている
・片づけるべきジョブを明らかにするのは、最初の一歩にすぎない。あなたが売るのは、進歩(プログレス)であって、商品(プロダクト)ではない
・新しいプロダクトが成功するのは、その特徴や性能がすぐれているからではない、それに付随する、「体験」がすぐれているからだ
・もっとも知りたいのは、同じジョブのためにそのプロダクトを雇用したレビューアたちが何と言っているかである
■かたづけるべきジョブの組織
・プロセスは目で見て理解するのが難しい、プロセスは、公式に文書化された手順と、非公式な習慣的な行動とでできている。
・プロセスは手で触ることができない。企業と一体化している。
・痛みを伴うリストラクチャリングは、だいたい臨んだ成果に結びついていない
・ジョブのレンズを通すと、誰が誰の指揮下にあるかよりも、顧客のかたづけるべきジョブを完璧に解決するプロダクト・サービスを組織が体系的に提供できることのほうがはるかに重要である
・顧客の片づけるべきジョブを中心に組織全体をまとめるには、予測可能で、反復可能なプロセスがなければならない
・うちでは、組織よりも、プロセスのほうをはるかに重視している。当社が迅速に動ける理由のひとつは、会社全体を通じて、同じ技術、同じプラットフォームを使い、同じ指針に沿っていることだ。
・プロダクト指向ではなく、プロセス指向だ
・顧客がほしいのは、プロダクトではく、問題の解決策だ。
・イノベーションのデータの誤謬
①組織の情報フィルターが多層化するにつれて、ジョブではなく、企業は数字を管理するようになる
②大きな利益、すなわち、見かけ上の成長へフォーカスしてしまうと、ジョブへのフォーカスを失ってしまう
③確認したいデータのみに目がいってそれ以外のデータに注目しなくなってしまう
・組織に選択を正しく行うことができるようにするためには、かたづけるべきジョブのコンセプトを単純にしなければならない
・ジョブ理論が力を発揮すると、業務は引きしまる。無駄や、間接費が体系的に減り、使う時間や、エネルギーイや資源が最小化される。
・私たちは、あらゆるものを測定できる。しかし、何を測定するかが重要だ。
目次
序章この本を「雇用」する理由
第1部 ジョブ理論の概要
第1章 ミルクシェイクのジレンマ
第2章 プロダクトではなく、プログレス
第3章 埋もれているジョブ
第2部 ジョブ理論の奥行きと可能性
第4章 ジョブ・ハンティング
第5章 顧客が言わないことを聞き取る
第6章 レジュメを書く
第3部 「片づけるべきジョブ」の組織
第7章 ジョブ中心の統合
第8章 ジョブから目を離さない
第9章 ジョブを中心とした組織
第10章 ジョブ理論のこれから
謝辞
日本語版解説
索引
ISBN:9784596551221
出版社:ハーパーコリンズ・ジャパン
判型:4-6
ページ数:392ページ
定価:2000円(本体)
発売日:2017年08月01日第1刷
発売日:2018年05月20日第6刷
Posted by ブクログ
『イノベーションのジレンマ』で破壊的イノベーションがどのようにおきるのかを明らかにした著者が、なざイノベーションはおきるのか? どうすればイノベーションを起こせるのか? を書いたのが本書になる。
顧客はいったいどんなジョブを片付けるために商品を雇用したのか?
製品やサービスを、その性能でとらえるのではなく、それを使う人がそれを必要とする理由に注目することを教えてくれる。
「人は4インチのドリルではなく、4インチの穴がほしいのである。」
人は、特定の場面で、ほしい変化があるから、その商品やサービスを求める。
例えば、朝、ミルクシェイクがほしいのは、長い通勤時間に、気を紛らわせてくれて、小腹も満たしてくれ、しかも、運転中に片手で飲めるものがほしいからだ。
特定の場面で、ほしい変化を本書ではジョブと呼び、そのジョブに注目して、製品を考えていくことがイノベーションを起こすことにつながると述べている。
仕事をする上で、自分たちの提供しているものは、はたして、どんなジョブの為に求められているのか、もっとジョブに注目したものにすべきでないか、考え続けることが重要だと感じた。
Posted by ブクログ
ジョブという言葉を「顧客が解決したい問題」だと脳内で上書きするまで時間がかかるが、ニーズ (顧客が欲する商品・サービス) との違いがわかればどんどん読み進められる。商品・サービスの機能自体ではなく、そこから得られる体験を重視するトレンドは「CX」書籍からも認識できるが、具体例の豊富さ・わかりやすさで理解がより深まる。
読者は自分の立場に照らして「当社の商品・サービスは顧客の人生を向上させるために役立っているか」という根本的な問いを立てるところから始める必要があるのではないだろうか。
Posted by ブクログ
プロダクト設計を担当する人は必読
プロダクトを作る上で、考えるべきことは「ジョブ」である。
“ジョブはそれが生じた特定の文脈に関連してのみ定義することができ、同じように、有効な解決策も特定の文脈に関連してのみもたらすことができる。”
性年代別のクラスタリングによる設計ではなく、ジョブを軸にしたプロダクト設計を行うことが重要であると感じた。
ジョブを片付ける上で考慮すべきなのは無消費の存在である。
競合は、類似のプロダクトや同じジョブを片付けるプロダクトだけではなくそれを消費しないことも競合になりうる。
プロダクトを作っている人は、一読するとプロダクト設計を考える上での有益な視点をもたらしてくれる本だと感じた。
メモ
==========
ジョブの定義には「状況」が含まれる。ジョブはそれが生じた特定の文脈に関連してのみ定義することができ、同じように、有効な解決策も特定の文脈に関連してのみもたらすことができる。ジョブの状況を定義するにあたり、重要な質問はたくさんある。「いまどこにいるか」「それはいつか」「誰といっしょか」「何をしているときか」「 30分前に何をしていたか」「次は何をするつもりか」「どのような社会的、文化的、政治的プレッシャーが影響を及ぼすか」などだ。ここでいう「状況」とは、その他の文脈上の要素、たとえば、ライフステージ(学校を卒業したばかりか、中年期の危機に陥っているか、もうすぐ定年か)や、家族構成(既婚、未婚、離婚? 乳幼児が家にいるか、親の介護が必要か)、財政状態(債務過多? 超富裕層?)などに拡大することができる。ジョブを定義するのに(その解決策を見つけるためにも)状況が不可欠なのは、なし遂げたい進歩の性質が状況に強く影響されるからだ。
・ジョブとは、特定の状況で人あるいは人の集まりが追求する進歩である。・成功するイノベーションは、顧客のなし遂げたい進歩を可能にし、困難を解消し、満たされていない念願を成就する。また、それまでは物足りない解決策しかなかったジョブ、あるいは解決策が存在しなかったジョブを片づける。・ジョブは機能面だけでとらえることはできない。社会的および感情的側面も重要であり、こちらのほうが機能面より強く作用する場合もある。・ジョブは日々の生活のなかで発生するので、その文脈を説明する「状況」が定義の中心に来る。イノベーションを生むのに不可欠な構成要素は、顧客の特性でもプロダクトの属性でも新しいテクノロジーでもトレンドでもなく、「状況」である。・片づけるべきジョブは、継続し反復するものである。独立したイベントであることはめったにない。
ジョブ理論が重点を置くのは、?誰が?でも?何を?でもなく、?なぜ?である。
その人がなし遂げようとしている進歩は何か。
苦心している状況は何か。
進歩をなし遂げるのを阻む障害物は何か。
不完全な解決策で我慢し、埋め合わせの行動をとっていないか。
その人にとって、よりよい解決策をもたらす品質の定義は何か、また、その解決策のために引き換えにしてもいいと思うものは何か。
たとえば、ティーンエイジャーには昔から、口うるさい両親に邪魔されずに連絡をとり合いたいというジョブがある。
何年かまえまでは、学校の廊下でメモを渡すか、自室のいちばん端に長々と電話コードを引っぱっていったものだった。だが最近のティーンエイジャーは、メッセージが届くとほぼ同時に消えるスマートフォンのアプリ〈スナップチャット〉など、数十年前には想像すらできなかったものを雇用しはじめている。スナップチャットの考案者はティーンエイジャーのジョブをよく理解し、優れた解決策を生み出した。しかしもちろん無敵ではなく、特定の状況における社会的、感情的、機能的側面の入り混じったティーンエイジャーの複雑なニーズをさらによく理解した競合相手が現れれば、とって代わられるだろう。
人がフェイスブックを雇用する理由も多くが喫煙と共通している。仕事の合間に休憩しようとフェイスブックにログインし、仕事とは別のことを考えながら数分ほどリラックスして、遠く離れた友人たちと仮想井戸端会議を開く。ある意味フェイスブックは、じつはタバコと同じジョブをめぐって競い合っているといえる。喫煙者がどちらを選択するかは、その特定の時点でその人が置かれている状況によって異なる。
社会的、感情的、機能的側面については何を考慮すべきか。
Posted by ブクログ
顧客提供価値を高めるために、多くの人が考えるのは機能的な価値をどう付加するか考える、蓄積したデータだけを信じて改善を考えるなど、顧客を分かったつもりになってしまっている。イノベーションを生み出すようなサービスを考えるのは、人がなぜある特定の商品やサービスを購入するのか、という因果関係を明らかにしなければいけない。人はどんなジョブを片付けたくて、そのプロダクトを雇用するのか?私たちが商品を買うということは基本的に何らかのジョブを片付けるために何かを雇用するということである、ということ、この問いを考えることが、考え方のアプローチとして学びとなった。
ジョブを起点に考えられる組織とそうでない組織にどのような違いが出てくるのか、多くの事例からジョブ起点に考えることの重要性、その考え方を学ばせてもらえる本。
データについて、そもそも人の手が介在して出ているもので、必ずしも鵜呑みにしてはいけないということ、データがどういう形で出されたものかを押さえることや、感情や社会的側面など定性による要素も含めてジョブを捉える必要があることが学びとなった。
Posted by ブクログ
概要:
「ジョブ理論」(原題:Competing Against Luck)は、クレイトン・クリステンセンが提唱したマーケティング理論。顧客が「商品を購入する理由」を「ジョブ(用事)」という観点から捉えることで、顧客ニーズを深く理解し、イノベーションや新しいビジネスモデルを生み出すアプローチ。
主要なポイント:
1.ジョブとは何か?
•顧客が特定の状況で達成したい目的や解決したい問題のこと。
•例:「お腹が空いたからコンビニでおにぎりを買う」 → ジョブは「空腹を満たすこと」。
2.ジョブ理論の4つの構成要素:
•状況: 顧客が置かれた具体的なシチュエーション。
•進展: そのシチュエーションで顧客が達成したい進展。
•障害: 進展を妨げる障害や不安。
•代替手段: 現在使っている解決策(競合)。
3.ジョブを見つける手順:
•顧客インタビューを行い、「どのような状況で、なぜその商品を選んだのか?」を深掘りする。
•表面的な機能ではなく、「なぜその商品を雇用したのか?」という視点で考える。
4.顧客の進展を助けることが価値創造:
•商品の機能だけでなく、「顧客が望む進展」を理解し、それをサポートするサービスや製品を提供することが重要。
5.イノベーションの源泉:
•ジョブ理論を活用することで、顧客の隠れたニーズを発見し、既存市場の再定義や新市場の開拓が可能となる。
具体例:
•ミルクシェイクの例:
•あるファストフード店で、朝の通勤時にミルクシェイクを買う人が多いことが発見された。
•調査の結果、「退屈な通勤時間を楽しく過ごしたい」「空腹を満たしたい」がジョブだった。
•その結果、「持ち運びしやすく、満腹感を与えるミルクシェイク」が最適解として商品改善が行われた。
ビジネスへの応用:
•新商品開発: 顧客の「ジョブ」に基づいて商品を設計する。
•マーケティング戦略: 広告メッセージを「ジョブ」に合わせて訴求。
•顧客分析: 購入動機を「ジョブ」として捉え、ターゲティングを再定義する。
⸻
ジョブ理論の強みは、「顧客の行動の背後にある目的(ジョブ)」を掘り下げることで、新しい価値提供の道筋を発見できる点です。これは従来の属性分析とは異なるアプローチであり、顧客の生活シーンや行動を深掘りすることで、新たな製品・サービスの着想を得る手法です
Posted by ブクログ
「顧客はなぜ自社の商品を買うのか」→「顧客はどんなジョブを片付けたくて、自社の商品を雇用するのか」ととらえるジョブ理論。
本書ではデータばかりにとらわれ、相関関係をもとに策を出すのは間違いだと批判している。相関関係は因果関係ではない。顧客がどんな『片付けるべきジョブ』を抱えているのかを知り、向き合って寄り添うことの大切さを説いている。
「顧客がほしいのはドリルではなく穴」の例が本書内でも紹介されているなど、決して目新しかったり難解だったりする理論ではないが、大切なことを述べている。最近のポピュラーなビジネス書ほどの読みやすさはないけれど、事例紹介も多いので経営学の土台がなくても全然読み切れる。一度は触れておいて損はない本。
Posted by ブクログ
前から一度読んでおこうと思いつつ時間が経っていたがようやく読んだ。
すでに他の書籍で読んでいた事例も多数あったが、後半のジョブを中心に据えた組織の構築という部分は特に参考になった。
Posted by ブクログ
この本のここが好き
「画期的なインサイトは、あとから振り返ればあたりまえに見えるかもしれないが、あたりまえであったことはほとんどない。そうしたインサイトはむしろ、逆張り屋のこじつけに見えることすらある。その人に見えることがほかの人には見えないからだ」
Posted by ブクログ
顧客ではなく、ジョブにフォーカスすることの重要性が語られている一冊。顧客が成し遂げたい目的(ジョブ)は何か?ジョブを具体化するために必要なのは購買理由を知ること。何を買うか(手段)ではなくなぜ買うか(目的)。事例に基づきジョブを知る必要性が紐解かれていく。
Posted by ブクログ
あらゆる商品を購入する顧客は、そのプロダクトを購入したいのではなく、何かジョブを片付けるために購入するのである。
ジョブとは特定の状況で人あるいは人の集まりが追求する進歩である。ジョブは日々の生活の中で発生するもので、その文脈を説明する状況が定義の中心に来るイノベーションを生むのに不可欠な構成要素は、顧客の特性でも、プロダクトの属性でも、新しいテクノロジーでもトレンドでもなく状況である。
例えば、家を建てて売るビジネスだと思っていたビジネスが、実際には顧客の人生を移動させるビジネスなのだとわかった時、それは新しいジョブを提示することになる。
Posted by ブクログ
目に見える属性に注目した通常の市場調査からは見えない、生活様式や行動様式に注目して顧客自身も気付いていないもしくは当たり前で半ば諦めていた潜在的かつ共通性のある欲求(ジョブ)を明らかにすることの重要性がきれいに説明されていて面白かった。
実際にマーケティングに落とし込む際には「ジョブはこれでしょ?それならこのサービスが最適。」と当てがうのは禁物で、顧客が自分で選択したと感じさせることが重要かつ難しいポイントだろう。著者がジョブを考える時には適切な抽象度が重要だと言っているのは、この辺りと相性の良いと感じた。
Posted by ブクログ
クレイトン・クリステンセンが「なぜそれを買うのか」でイノベーションの鍵を解説。ジョブ理論に基づき、商品の売れなさや成功の要因を明らかに。ビッグデータだけでなく、「顧客の片づけたいジョブ」に焦点を当て、無消費者も取り込む戦略を提案。事例としてイケア、GM、P&Gなどを取り上げ、ジョブ中心の組織づくりやデータ活用の重要性も論じる。最新のビジネス書として注目される。
Posted by ブクログ
「ジレンマ」に比べるとBtoC向け。結局良いイシューを見つけて、一番に解決するってことのよう。ブルーオーシャン戦略に似ている。最近だとチョコザップが例に挙がりそう。
Posted by ブクログ
・顧客の購買目的は製品やサービスの購入ではなく「進歩(プログレス)」である
・「進歩」は、「ジョブ」を片付けるもの=製品やサービスの雇用で実現できる
・顧客の抱える片付けるべきジョブをもとにブランディングを考えるべきである
Posted by ブクログ
マーケティングでよく言われる「顧客ニーズ」というものの解像度を高めたのが「ジョブ」であると感じた。
本書を読み、「ジョブ」に関して以下のように捉えた。
・顧客が特定のプロダクトを生活の中に引き入れる理由を説明するのが「片付けるべきジョブ」理論
・ジョブの定義は、「ある特定の状況で顧客が成し遂げたい進歩」
・自社商品を雇用する顧客のジョブを捉えることで、自社商品が万能の薬と思い込まないようにする
・ジョブは適切な抽象度を持たなくてはならない
Posted by ブクログ
印象に残ったことは「何も雇用していない人からも学ぶことがある」。
「ジョブ」という視点で考えれば、競合する相手は競合他社の製品ではなく、一見全く異なるもの・ことかもしれない。あるいは無消費かもしれない。
これは手段と目的と近い考え方かもしれない。
「子どもが両親を雇用して片づけるジョブは何か?」にハッとした。
子どもが私を雇用して片付けようとしているジョブは、抱っこしてくれる。自分を見てくれる。甘えさせてくれる。であって、スマホでクリスマスプレゼントを探すことではないと気づいた。
Posted by ブクログ
クリステンセン教授の著作を読むのは「イノベーションのジレンマ」、「イノベーションの最終解」に続き、十年振り三作目。
もっとも有名な前者が、なぜ優秀な会社が元々低位の破壊的イノベーターに負けてしまうのか、を論理的に実証したのに対して、本作は、どうすれば、イノベーションを起こせるか、を問うた本。
ジョブ=お客様が解決したい用事・やっかいごと=(the job to be done) という設定で議論が進む。最初に登場するミルクシェイクの事例は、読んでて「なるほど」と思うものの、そのあとは、同じような驚きはなく、そりゃそうだ、という感じだ。この本の考え方が既に世の中に浸透して長いからかもしれない。
ドリルの刃を買う人は、ドリルの刃が欲しいわけではなく、穴が欲しいのだ、という有名な訓話に近い話が続く。
いわゆる「ソリューション営業」と「インサイト営業」の中間ないしは融合、のようなものかと思う。
Posted by ブクログ
一見、面白い新手の考察かなと感じて読むが、よくよく考えると、著者の論理の強引さによる抜け穴がそのまま、反証として成立する危うさを感じる。つまり「人が何かを買い求める際には必ずしも確度の高い理由がある」、こうした前提は成り立たないという事だ。その理由の深さや広さを尺度として、割とピンポイントのものを〝ニーズ“、付帯する潜在的関連性まで見抜く事を〝ジョブ“と呼んでいる。しかし、換言しているだけで、違いは無い。勿論、この物差しだけで、ある人には気付きを与えるのかも知れない。デザイン思考の手法のように観察すれば見えてくる潜在的な因果律を拾う。しかし、大多数は強い理由などなく、流されるような、経路依存を生きている。そしてこのルーチンから抜け出た微弱な新たな選択も、価格という決定打で簡単に妥協を生む。この抜け穴こそ、我々が与えられた一見新たな論説、言ってしまえば詭弁に感動する本著の建て付けに似ているという事だ。
なぜ売れるのか。なぜ売れないのか。
企業が今ほど顧客のことを知っている時代はなかった。ビッグデータ革命のおかげでデータ収集は多様性でも量でも速度でも、飛躍的な進歩を遂げた。集めたデータを分析するツールも高度化し、データの山から大きな宝を掘り当てようと日々様々な分析が行われている。しかし、データを拠り所にしても、ヒット商品に辿り着かない。本著では、ミルクシェイクを一例に挙げる。ミルクシェイクを朝買う人たちに人口統計学的な共通要素は無い。彼らに共通したのは片付けたい共通のジョブ。長い通勤時間ゆっくり飲めるシェイク、空腹を紛らわすことだと。
また、別の事例も紹介する。パンパースは中国で売れないオムツを売れるように改善するために、オムツを履かせる文化を作ろうとしたが失敗。おむつを履いた赤ちゃんがよく眠れるようになり両親に自由な時間が生まれた、あるいは乳幼児の睡眠時間が知能にもたらす影響をデータ提供したことにより最も売れる紙おむつのブランドとなった。
ここで挙げた二つの例は、いずれも「時間」に関わるものだ。プロダクトの本源は「自己の有する相対時間を向上されるモノ」。つまり、寿命を延ばす、限られた時間を有意義に過ごす、効率的に過ごす、楽しく過ごす、時短、性的接触のショートカットなど。で、偶々それを強く意識付けた、関連付けたプロダクトが先手必勝となるという理屈だろう。だとすれば、時間を要する失敗はしたくないから、日々、同じものを買うのだ。プロダクトの持つジョブとプロダクトを持たぬ状態のジョブの対立。これが、著者の論理の抜け穴ではないだろうか。