あらすじ
時は豊臣秀吉の天下統一前夜。肥後国田中城では村同士の諍いの末、岡本越後守と名乗る男の命が奪われんとしていた。だが、そこに突如秀吉軍が来襲。混乱に乗じた男は武器を取り応戦、九死に一生を得る。その戦いぶりを見込んだ敵将・加藤清正は、最愛の女性を人質に軍門に降らせ、越後守を朝鮮の陣に従軍させるが―。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
時代は戦国時代。豊臣政権下での猛将・加藤清正と、一人のこれまた屈強の男・岡本越後守との戦いのドラマだ。舞台は肥後国、そしてそこから秀吉の狂走である朝鮮討伐に巻き込まれて、舞台はさらに朝鮮に移る。
本のタイトルの通り、ここに貫かれているテーマは、岡本越後守が自身の生き方の指標とした「もののふの道」だ。要するに、岡本越後守という男は、「莫迦」という代名詞に置き換えられるほど「もののふの道」にこだわり続け、死んでいく。「莫迦」と呼ばれるほどに信念を貫くところに、ある種の魅力が生まれるのだと思う。
私が読む限り、この小説には他に3人の「莫迦」が登場する。加藤清正は、秀吉に忠誠をつくし続けることを信念とする豊臣莫迦、イクサ莫迦だ。
もう一人は自身の優柔不断のため、越後守の敵になり味方になりながら、結局のところ心の底では越後守の生き方に生涯憧れ続ける粂吉。そして、想いとは反対に越後守と別々の人生を歩むことを余儀なくされる女・たけ。いかなる境遇に陥ろうと、男勝りの潔さで越後守を愛し続ける。
歴史小説としては、豊臣秀吉の天下統一、朝鮮出兵が、いかにわがまま秀吉のアホな発想のもとに行われ、多くの犠牲を出した愚行であったかを再確認できると思う。
そしてまたそういう風に、いつの時代も時の流れに翻弄されながら生きる一人一人が、その中でどう信念をもって生きるべきかを考えてみる契機とするのもよいかもしれないなと思います。