【感想・ネタバレ】デーミアンのレビュー

あらすじ

些細な嘘をついたために不良に強請られていたエーミール。だが転校してきたデーミアンと仲良くなるや、不良は近づきもしなくなる。デーミアンの謎めいた人柄と思想に影響されたエーミールは、やがて真の自己を求めて深く苦悩するようになる。少年の魂の遍歴と成長を見事に描き、世界中で“悩める若者たち”に読み継がれる青春小説。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ストーリーが面白いといえば面白いんだけど、キングがバックマン名義で出してたときみたいなバックボーンがあるのとか、第一次世界大戦の頃にこういう精神世界を書いて評価されるのとか付随的な要素が面白い
若さと並走する不全感に対して示唆が得られればというスタンスのキャッチコピーみたいだけど自分の苦悩は唯一無二と思いたいのが若さだからむしろ100年以上前から厨ニ病はあったんだって史料的な着眼点で読んだほうが楽しめると思われ
この裏でどれほどの貧困があったのかと思うとまあそれはそれこれはこれ

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2025年09月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

すごく読みやすくてありがたかった。
それでいて格調もある。

酒寄氏も解説に記されているとおり、ユング全開といってもいいくらいの作品であることにあらためて驚いた。(それなのにユングに言及されていないという酒寄氏の指摘。おもしろい。)

ベアトリーチェは見るからにアニマだし、クローマーはたしかに「影」。エヴァ夫人は太母だけれどもアニマ的なところもあるのかな。デーミアンはすべてを包摂した「自己」だと解説には記されていてなるほどと。そうするとラストでシンクレアは自己の統合を果たしたということになるんだろうか。

西欧の精神史をたどるような内容でもあり、さまざまに読める奥深さを持っている。個人的には、冒頭のクローマーとのいざこざがしつこく描かれなくて好みだった。

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2019年04月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ヘッセ=甘い、ロマンチストというイメージを感じさせない鋭さを持った内容。
自分を見つめ苦悩するシンクレア、エーミール。デーミアンと出会い己との向き合い方を探り成長していく。

その過程の分厚さに腹が膨れる。

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2018年10月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

始まりの一節、ラストの一節。

自分とはいったい何なのか…の始まりと見つけたラスト。

若い頃、時間があり、思考ばかりしていると考える。

シンクレアは10歳でイジメにあい、善悪を見つけ出す。
だいたいそのぐらいの年齢で子供は気付くのだと思う。
成長過程において。
私も善悪を強く意識したのも10歳だったと思う。
無邪気に友達と遊ぶだけでは済まなくなる。

内面を見つめる工程は結構陰気な感じで、今でいうと厨二病という感じか。
ヘッセの描くこの厨二病はなぜかじわーっとやってきて、綺麗にすら見えてしまう。描き方なのか。
ドストエフスキーは、鬱陶しさのある感じで、作家によって異なる。当たり前だけど比べちゃう。

早熟なデーミアン。
私の周りにはこんな友達はいなかったな。

ラストの一文で、眼前にそのイメージが浮かび、余韻を残した。

娘も大なり小なりこんな時代を過ごすんだろう。
自分で考えて自立できる女性になってくれればいいな。
そのためには親である自分も導いてやらねば。




最初
「迸り出る自分の思いそのままに生きようとしただけなのに、なんでそれがこうも難しかったんだろう。」

ラスト
「その黒い鏡を覗き込みさえすれば、そこに自分の姿が見える。その姿は彼に瓜二つ。ぼくの友であり、導き手である彼に。」


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2018年09月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

シンクレアは日々の生活、それらが積み重なった結果としての人生に起こるさまざまな出来事に対して感受性が豊かなのだなと感じた。だからこその彼の苦悩が胸に痛かった。そして、彼の傍から見れば単に無頼な転落も、彼のような人間だからこそのものだと思えた。
人生や物語に何かしらの解決がなければならないという訳ではないが、ストーリー上の「解決」を用意することが非常に難しい物語(趣旨)だと思った。そのうえで、あのラストがすごく味わい深かった。

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2024年03月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

主人公の内面描写が細かい分、モヤっと感じることが多い作品でした。特に最初がそう感じられ、主人公幼少期の裕福で温かい世界と級友の貧乏で必死に生きている世界との対比は、互いの世界のルールは通じない。一歩足を踏み入れてしまえば、もう前と同じように戻ることはできない、という苦難と憂鬱さが描かれていました。にも関わらず、青年期に再度踏み入れていく、というジレンマは人間の複雑さを伝えてくれます。やがてデーミアンを通じて知る“自分の意思に従い生きていけるか”ということは、現代の私たちに共感できる場面が多いと思いました。

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2022年11月07日

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ネタバレ

感受性の高いシンクレア少年と大人びたデーミアンとの奇妙な出会いと別れまでのお話。内気で孤独なシンクレアの唯一といってもいい心の支えだったデーミアンが、最期の最期に語りかけた言葉が切なく、優しく、それでいてちょっと残酷だなと思ってしまった。

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2022年06月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

少年時代のシンクレアの心中には共感できる部分があったが、青年時代の心の探求の部分では、彼の心中から少し遠ざかってしまった。あまりに深く自分の心の中を考えすぎているように感じたが、人間はその自己を知るということが必要なのだという。私はこの時代を知るものではないので、シンクレアとの乖離を感じるのかもしれない。
心について深く考えることは自己の反省につながり、延々と自分の嫌な部分を思い出すループに陥る気がしてならない。この反省の先に、シンクレアのように、何か運命を得ることができるのだろうか。

印象に残っているところは、「人は夢を見て生きている。しかし、多くの人が見ている夢は自分自身の夢ではなく、他のものなのだ」というところ。私も、自分自身の確固たる夢を持てたなら、と考えてしまった。
深く考えさせられるところが多く、すばらしい小説だった。

シンクレアとエヴァ夫人とのやりとりにはちょっとどきどきさせられたが、何もなくてほっとした。
しかし、最も期待していたがきっとないだろうと思っていたデーミアンとシンクレアのやりとりが最後に行われたのには、興奮で顔が紅潮し、深い溜息をついてしまった。

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2020年10月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

光文社古典新訳文庫はガチで読みやすい。苦手だった海外古典文学がためらいなく手に取れるようになったのは、このシリーズのおかげである。古典を古典として読むのが億劫になってきたので、きっとこれからもお世話になると思う。
本書の訳者は酒寄進一氏。以前読んだシーラッハの『犯罪』もたしかこの方の訳書だった。翻訳にあたっての難所についてや、デーミアンのBL要素といった可能性などまで、訳者あとがきも非常におもしろく本書についての理解をより深めてくれる。

で、デーミアン。第一次世界大戦直後に発表されたドイツ文学である。
日本で有島武郎の『或る女』などが発表された1919年にヘルマン・ヘッセが匿名で発表した作品で、今年で発表からちょうど100年と聞き、せっかくなので読んでみようという気になった。作品の内容をひと言で表すとすれば、「既存の価値観と対峙する、若者の青春期」といったところだろうか。

主人公はエミール・シンクレアという青年で、彼の幼少期からの成長を追っていく構成となっている。彼は世界にはきれいな世界と汚れた世界があることに気付く。守られた清らかな世界で生きている人は汚れた世界を見ないふりをしているが、たしかに存在することを彼は知っている。ふたつの世界について知った彼が、どう生きていくのか…思春期の問い、と簡単に言うには重すぎる「世界」との対峙について、キリスト教の宗教観のなかでデーミアンという導き手の影響を受けながら答えを模索していく。

思い返せば、僕は比較的丁寧な世界で育ててもらった。暴力や貧困の世界があることは知りながら、そこに足を踏み入れないでいいように守られて生きてきたと思う。ところが社会に出て、今はどちらかというと本書で言う「汚れた世界」に近づいてきている。低層というと好ましくない言い方かもしれない。うまく言えないが、直接税を納めていなさそうなわりに、間接税(主に酒税、タバコ税)を大量に支払っていそうな人たちとともに生きている。また、直接税をきちんと納めていながら、他人を不快にさせる言動を悪びれもせずに言い放つような人間も身近にたくさん見てきた。そして、僕にはカインの印なんてものはない。

汚れた世界にフタをして、きれいな世界で生きることもできるだろう。きれいな世界を離れて、汚れた世界に身を置くことも容易かもしれない。また、どちらも選ばない第三の道もまた考えられる。本書に出てくるアブラクサスという神は「神性と魔性を合わせ持つ」という象徴的な役割を担っている。

対立する二つの世界があるとして、どちらの世界でどう生きるのか。はたまた世界そのものを疑い、否定し、打ち破ることができるのか。この本は戦後の世界的なブームのほか、ベトナム戦争の後などにも迷える若者たちの間で度々手に取られてきたという。さらなるパラダイムシフトも簡単に起こりえる今現在、そしてこの先も、世界と対峙する上で多様な示唆を与えてくれる物語である。

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2020年01月30日

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