あらすじ
全世界で大ベストセラーを記録した第1回「ビジネス・ブック・オブ・ジ・イヤー」賞受賞作が装いも新たに普及版になって新登場。ピュリツァー賞を3度受賞したジャーナリストが、インド、中国、日本、欧米諸国の経営者や政治家らへの綿密な取材をもとに、全世界で起きている巨大な変化を鮮やかに活写する。
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Posted by ブクログ
フラット化する社会
インターネット革命により、個人の力が強くなってきた。しかし、機会はすべての人に平等ではない。貧困、代理戦争、民族紛争、飢饉。それらを是正しなければ、本当のフラット化にはならない。私たちは、世界の地平線までみえるようになったが、見る見ない、そこへ向かうかどうかは自分次第である。
Posted by ブクログ
本書を一言で表すと・・世界のバリュー創出の指揮系統は垂直から水平に変わった。一人の知恵よりも多数の知恵の方が優れており、独り占めせずに水平に反応するシステムを創り上げれば、より良いものが作れる。といったところだろう。バブル崩壊後の不況によって、企業はアウトソーシングやオフショアリングを進めた。その結果、グローバリゼーションは加速した。三重の集束(テクノロジー、プラットホーム、リソース)のおかげで、フラット化した世界の新プラットホームは、壁と屋根と床を実質上、一気に吹っ飛ばした。つまり、光ファイバーとインターネットとワークフロー・ソフトウェアが世界を結ぶと、共同作業を阻んでいた壁が吹っ飛ばされた。ITバブルとその崩壊は「始まりの終わり」にすぎない。←このセリフはかこいい・・
真のグローバリゼーションについて、ケースを交えながら深い洞察と新たな示唆を与えてくれる本。必読。
グローバリゼーション3.0は世界をSサイズからさらに縮め、それと同時に競技場を平坦に均した。グローバリゼーション1.0の原動力が国のグローバル化であり、2.0の原動力が企業のグローバル化であったのに対し、3.0の原動力―これにたぐいまれな特徴を与えている要素―は、個人がグローバルに力を合わせ、また、グローバルに競争を繰り広げるという、新しく得た力なのである。
一例として、以下を紹介している。「2003年にはアメリカの所得税申告2万5千件がインドで処理された。2004年には100万件になった。2005年は約40万件だった。10年後には、アメリカの公認会計士は、少なくとも所得税申告書のごく簡単なものはすべてはアウトソーシングで処理すると思われる。」仕事は、最も効率的かつ効果的に行われる場所でなされる。それによって解放された人間と資本をまったく違う高度な仕事にふりむけることができるようになるから。これは企業でも同じだが、人はそれぞれ、自分の経済的な運命に適応しなければならないと筆者は述べている。
また、これらのイノベーションが起こった理由やこれから模索すべき道にも言及している。
誰であろうと、自分たちの付加価値がなんであるかを、見据える必要があることや、
変化は自然であり、今に始まったことではなく、重要な意味があるとしている。
アメリカのサービス業の一部をインドにアウトソーシングしても、インド経済の成長はそれを超えるアメリカの製品とサービスへの需要を創出しているのである。
また、イラクを飛行する無人機は、ラスベガスから遠隔操縦していること、ネットスケープのおかげで、インターネットが相互使用可能なったこと、UPSによるインソーシングなどのケースを通してそれを実感することができる。
また、インターネットという手段がコモディティ化した現代においては、消費者が企業に求めているのは、インターネットに接続する手段ではなかった。接続後に何ができるかという面で、さまざまソフトウェアの開発競争をしてほしいと考えていると述べるとともに、すべての人間のソフトウェアが他人のソフトウェアと連携するとなると、ワークフローはこれまでになく円滑に進むようになったばかりでなく、これまでとは違って、細かく切り分け、分解して、世界のどこへでも送れるようになっている。
また、ソフトウェア産業は、人間とコンピュータのグローバルな労働力が使えるグローバルなプラットホームを創り上げた。スタンダードが決まると、人間はやり方ではなく、それでできることの品質を高めるほうに注意を集中する。従来のヒエラルキー的な組織や機構を経なくても、個人もしくは自己啓発的なコミュニティが、ファイルをアップロードし、コンテンツをグローバル化できるようになった。企業は、自分たちだけのために設計され、誰も所有していないシステムがほしい。自分たちのために設計され、誰も持っていないITツールがほしい。だから、まだ商用ソフトウェア・システムの活躍の場は膨大であるとマイクロソフトは思っているとも述べている。
また、おもしろかった表現として以下のものがあった。 「信じられなった。-おおぜいが使うものがいじれるなんて。コードをちょっと書き換えると、有名な製品のウインドウの変化をこの目で見ることができるんだ。世界中で使われているアプリケーションを変えることができる」ダウンローディングと対極にあるアップローディングの魅力を、これほどうまく表現した言葉は、ほかにないだろう。
さらに、メディアに対しても議論を展開しており、メディアに対しては受け身でいるのではなく、積極的に参加したいという、インターネット世代の大きな変化を表している。つまり、参加を促すのが成功の秘訣となるとしている。たしかに・・
Y2Kはインドの独立記念日にすべきである。なぜなら、光ファイバ―ネットワークによる相互依存によって、インドは欧米の企業と共同作業をする能力をものにした。それによって無限の可能性が広がり、どこで誰のためにどう働くかということに関して国民に真の選択の自由が与えられた。
衝撃的で耳が痛いという一文ではこのように書かれていた。
いまだに何かを労働集約型で生産しているなら、出血死する前にやめるべきだ。ここで5%、あっちで5%というふうにして切りつめても効果はない。中国の製造業者でもその程度の修正は可能である。競合するにはまったく新しいビジネスモデルが必要だ。
あらら・・
ようするに、欧米が世界のフラット化やすべての市場と知識センターの連結から恩恵を受けたいなら、一番足の速いライオンぐらいの速さで走らなければならない。一番足の速いライオンは中国であり、それにとてつもなく速いに違いない。
世界のフラット化があってこそ可能になったその何かは、世界をさらにフラット化するはずだ。Googleの成功も、世界の知識を指先を動かすだけで自分のものにできることに、人々が絶大な関心を寄せている証左だろう。
最後に、たとえやる力があっても、抜け目なくやる必要がある。オールオアナッシングでは生き延びることはできないとも警告している。それを踏まえた上で、欧米の人々はアウトソーシングに不満を鳴らすべきではないとし、高い目標を掲げて自分たちの水準を上げ、より高度なことをやろうと考えるべきである。