【感想・ネタバレ】月山・鳥海山のレビュー

あらすじ

いまも読み継がれる、芥川賞史上最高作と名高い小説

出羽の霊山・月山の山ふところにある破れ寺に、ひとりの男がたどりつく。炉ばたでひたすら割り箸を作り続ける寺の男、女たちによる念仏のあつまり、庭を見せようと豪雪にもかかわらず雪かきにはげむ老人……。雪に閉ざされた山間のむらで、不思議な村人たちと暮しをともにするこの男が知った此の世ならぬ幽明の世界。芥川賞受賞作「月山」と、その姉妹篇ともいうべき「天沼」、著者の〈月山への道〉が浮き彫りにされる短篇集「鳥海山」を収録。

【目次】
月山
月山
天沼

鳥海山
初真桑

光陰
かての花
天上の眺め

解説 小島信夫

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Posted by ブクログ

「食って、寝て、起きそして食べる」

森敦(1912-1989)の『月山』は1974年に第70回芥川賞を受賞した作品で、
森は62歳、黒田夏子が75歳で受賞するまでは最年長記録だったそうです。
この度文春文庫で新装版が出たので手にとってみました。
そして驚愕で身が震えるほど感動しました。

月山の麓にある古ぼけたお寺に一冬居候することになった「私」。
本を読むでもなく、絵を描くでもない私は、
寺の仕事手伝うでもなく雪深い農家をただぶらりとし、農家の人々の話を聞く。
「私」がやったことといえば、お寺の隙間風を防ぐため
お寺にあった古い古い祈祷帖の和紙で蚊帳をつくっただけ。
あとは寺男のじいさまがつくった大根だけ入った味噌汁とご飯を食べ、
毎日まいにちぼぉ~と過ごしていたのです。
それでもこの小さな農家ではいろいろなことがおきますが
「私」は何をするでもなく、それらをじぃ~と見聞きしているのです。
そして春、友人が来たのでお寺を去ることを決意します。
別れにあたって寺にじいさまは手弁当と手作り割り箸を差し出し、
紐で結んだ眼鏡を外して涙するのでした。

この作品はこれまでのものとは全く異質の、
ほとんど起伏のない、雪が深々と積もるような静かな世界を綴っています。
そして今、思うことは、「私」という男は古代の人と同じように、
ただ飯を食って、寝て、起きそして食べる、
他の動物とほぼ変わらないような生活してきたということです。
ひょっとしたら人の一生も煎じ詰めればこれに尽きるのではないか?

ここの農家の人々もごく普通の人間ですかから少しは遊び
(古儀⇒日常的な生活から別の世界に心身を開放してその中に身を浸すこと)を
していますが、彼はそれにも無関心だったのです。
いわんや金持になって美味しものを食べ、何でも手に入れられような人にも、
また偉い人になって人を指図するように人々にも、
「私」は全く関心をしめさなかったのです。
これが仏教で言う無私なのでしょうか?

この小説の文頭に、「未だ生を知らず 焉んぞ死を知らん」
という孔子の言葉が掲げられています。
勿論、どなたにもというわけにはまいりませんがお気にめされたらご一読ください。

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2017年08月03日

Posted by ブクログ

森敦さんといえば最高齢(62歳)で芥川賞を受賞したという印象、
それは1974年のことで
のちに(2013年)黒田夏子さんが75歳で受賞なさって記録が塗り替えられた
そのことも話題になった

すなわち、世に知られるのが遅いということである
そのような作家の作品は奥深いかもしれない

という期待を裏切らない、森敦さんの『月山』を初読みで
なるほど、ストーリの内容としても文章としても味わい深いのであった

枯淡かな思えば、この物語の主人公の年齢はまだ若いらしい

「未だ生を知らず
焉(いずく)んぞ死を知らん」

などと扉に掲げて、実社会からの逃避して
月山という奥深い雪山寺での極貧生活をやる

なのに山の生活は
生々しいような、霞がかかったような、にぎにぎしい有様

ここもにも過去あり、現実あり、将来がある
と言えば月並みのようだが

導入文章に魅せられる​
「ながく庄内平野を転々としながらも、
わたしはその裏ともいうべき肘折(ひじおり)の渓谷にわけ入るまで、
月山がなぜ月の山とよばれるかを知りませんでした。」

もちろん、作者森敦さんが若い時に文才を認められつつもその後長らく放浪生活を
おくっていた作家だとの印象があるからこそ、どんな?なぜゆえに?
という興味が湧くので、いやましに期待するところもある

『鳥海山』のほうも同様の漂白旅路の果ての決算のような物語で
名文でありながら、遅れて再登場というキーワードが
後押しにもなれば、でないと書けなかったのではないかという作品であった

0
2019年03月10日

Posted by ブクログ

東北の雪深い山の雰囲気に染まれる。芥川賞受賞の月山が特に人間模様などがあるので面白い。庄内セミナーの下調べに。

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2018年09月02日

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