【感想・ネタバレ】日本の近代とは何であったか 問題史的考察のレビュー

あらすじ

政党政治を生み出し、資本主義を構築し、植民地帝国を出現させ、天皇制を精神的枠組みとした日本の近代。バジョットが提示したヨーロッパの「近代」概念に照らしながら、これら四つの成り立ちについて論理的に解き明かしていく。学界をリードしてきた政治史家が、日本近代とはいかなる経験であったのかを総括する堂々たる一冊。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

もう80歳になる歴史学者である著者の総括的な作。政党政治、資本主義、植民地、天皇制、といった「日本の近代化」に伴う重要テーマを様々な史料をひきながら「こってりと」考察している。
教科書を超えた史実の意味合いをとらえるには格好の書。

以下要点。

0)バジョットの前近代の「慣習による支配」から近代の「議論による統治」

1)日本における政党政治の成立
・幕藩体制下の権力抑制均衡メカニズム:日本は、分権的発想が江戸時代からの相互抑止の仕組みをもとに憲法に埋め込まれていたがゆえに憲法外で統合する作用が働いたというのはとてもおもしろい。体制統合の主体としての藩閥と政党があったとの見方
・幕末の危機下において権力分立論と議会制論が展開され、「公議」=パブリックオピニオンの考え方が基礎づけられた。明治憲法が想定した権力分立制は、幕府的存在の出現の防止を目的として王政復古の理念に適合。立法と行政の両機能を連結する政党内閣を本来排除する志向
・政党政治が終わり「立憲的独裁」=議会制からの離脱と否定へ

2)日本における資本主義の形成
・日本の資本主義は、国家主導自立型資本主義から国際的資本主義を経て排他的資本主義へ
・自立型資本主義・・・大久保の果たした役割の大きさには驚くべき。特に、外債に依存しないという方針を貫き通したことはほめてしかるべきこと
ー政府主導の殖産興業
ー国家資本の源泉としての租税制度。地租改正の意義
ー資本主義を担う労働力の育成
ー対外平和の確保
・松方の超均衡財政の強行と積極的正貨供給政策=大隈の基本政策の転換
・大久保のもとで育った高橋(過渡期)、大久保の後継としての松方正義
・国的資本主義のリーダーとしての井上準之助。高橋とは断絶。金解禁は失敗に終わる

3)植民地帝国化
・踏み出したのは、日清戦争の前後。台湾や澎湖諸島の植民地化。条約改正後の国際的資本主義へと転換した時期
・欧米諸国と異なる軍事力への依存度の高い「公式帝国」への道を歩む。イギリスとは異なる「帝国」
ー実質的意味の国際メンバーではなかった
ー軍事的安全保障関心から発し、国境線の安全確保への関心と不可分
・山県有朋の「主権線と利益線」・・・利益線の焦点は朝鮮半島。
・形成過程・・・・帝国主義だけではなく、新しい国際秩序イデオロギーとしての「地域主義」の観点の重要性
ー日露戦争後ー朝鮮と関東州租借地の統治体制の形成
 ー大正前半期ー主導権確立をめざす陸軍
 ー大正後半期ー朝鮮の三・一独立運動とそれへの対応
 ー1930年代ー「帝国主義」に代わる「地域主義」の台頭
 ー太平洋戦争後」ー米国の「地域主義構想」とその後

4)天皇制の捉え方
・日本の近代は歴史的独創ではない
・ヨーロッパというモデルはあった。前例のないヨーロッパ化の実験
・歴史的実体としてのヨーロッパを導入可能な諸機能の体系(システム」とみなした
・西欧のキリスト教に対比される天皇制(機能的等価物)
・日本における「神」の不在が、天皇の神格化をもたらした
・教育勅語を天皇の政治上の命令と区別し、社会に対する天皇の著作とみなした・・・天皇の政治的意味合いと道徳的リーダーシップ

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2021年04月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

日本の近代を西欧をモデルとした機能的近代化を中心に考察した本。私の知的レベルでは十分な理解ができないので評価は3にしたが、読む人が読めば素晴らしい考察の本なのだと思う。

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2017年06月07日

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