【感想・ネタバレ】日本の近代とは何であったか 問題史的考察のレビュー

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Posted by ブクログ 2024年01月02日

一般的には「遅れた閉鎖的な時代」と片付けられてしまう江戸時代の環境が、実は細かい合議制で成り立っており、そのことが「近代」としての明治時代の成立に大きな意味をもった、というのは面白かった。また、「幕府」的な存在を排除したことが、分立した権利のまとめ役の不在を生み、そのまとめ役として政党内閣が誕生した...続きを読む、という内容も興味深かった。
最初の導入部が非常に難解なのがもったいなくは感じたけれど、論の展開を考えるとやむを得ないように思う。

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Posted by ブクログ 2018年12月12日

近代国家形成に向けて日本がどう歩んできたのか、「政党政治の成立」「資本主義の形成」「植民地帝国の経緯」「天皇制とは」という4つの観点から学術的に説く。前近代において他国からの侵略、宗教の諍いが限られていた日本では、事情の異なる西欧の近代化を倣うにあたって試行錯誤が続く。植民地領有の理由については、西...続きを読む欧では経済的利益を求めたのに対し、日本では軍事的安全保障を求めたものであることが明確に示される。著者を極左と責める向きがあるが、現在の西欧での移民、難民の問題はもちろん、日本での近隣諸国との関係で精算しきれない問題は、それぞれが植民地帝国であったゆえの負の遺産であることを受けとめたい。そしてそれを教訓とし、未来というより常に今この時のありようを考えていかなければと思う。

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Posted by ブクログ 2017年08月26日

著者の問題意識と分析は頷けるところ多々あるが、将来展望の部分はりそうしゅぎてき、希望観測的すぎないか。

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Posted by ブクログ 2017年06月18日

かつて三谷先生が講義のなかで、現憲法が帝国憲法の改正により誕生したことを強調されていたことを思い出します。その時には、8月革命説等へのアンチテーゼなのかなくらいに思っていましたが、本書を読んで自分の浅い理解に気づきました。
明治にプログラミングされた近代的な設計は戦前戦後問わず生きているのだし、様々...続きを読むな近代性は現代を規定しているという問題認識が前提とされているということに。

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Posted by ブクログ 2017年04月16日

我が国の近代史について、テーマ別にまとめた本。各テーマについて、筆者なりの軸を持ってまとめられている点が良い。

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Posted by ブクログ 2017年04月14日

今年御年81歳の三谷先生の岩波新書。すごく面白かったです。お勧め。しかし、80歳を越えて知的な刺激を与えられるってすごいですね。

決して易しい本ではないけれども、一般読者にもわかりやすく書かれている。バジョットの本を導きの糸としながら、日本の近代とは何であったのか、政党政治、資本主義、植民地帝国、...続きを読むそして天皇制とそのアポリアに迫る。

自立的資本主義路線から国際資本主義路線へと転換する松方財政期。そして、松方と前田、井上と高橋との対立などについても新たな視点を提供している。

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Posted by ブクログ 2023年02月20日

読んでいて眠くなるので、寝る前に30分本書を読むと快眠出来た。
途切れ途切れにしか理解は出来なかったけど、近大日本がどのように政党政治を立脚し、どのように資本主義体制を整えて、どんな風に植民地帝国へと進み、どんな風に天皇を位置づけてきたのかを知ることが出来た。
大日本帝国時代の人はあんな無謀な戦争仕...続きを読む掛けてアホやなあと思ってたけど、当時もやっぱり自分の何倍も賢いインテリ層は存在して、当時なりに色々考えてたんだなあって思った。

議論による統治 バジョット 慣習の支配からの脱却

日本に政党政治が成立した経緯 政党政治の成立 江戸幕府からの受け継ぎ 天皇主権を確立するための権力分立 立憲的独裁に

日本の資本主義導入 大久保利通の殖産興業化 不平等条約改正 対外平和 大久保暗殺
自律的資本主義 松方正義 非外積依存 明治天皇 グラント大統領 条約改正 日清戦争 外積依存 高橋是清
井上準之助 金解禁 国際資本主義 世界恐慌 自律的資本主義

植民地主義
軍人と文官の朝鮮半島統治を巡るせめぎあい
美濃部達吉 植民地の法的位置づけ 憲法講和
異法区域
民族運動 同化政策 拓務省拓殖務省
帝国主義から地域主義へ 戦後もアメリカによる地域主義が続いていた

日本の近代において天皇制おは何であったか
ヨーロッパ化という課題 機能主義的思考様式
キリスト教の機能的等価物としての天皇制 グナイストは仏教を 君主観の違い
教育勅語はいかに作られたか 国務大臣の副著が無い 政治上の命令では無い 立憲主義との整合性 神聖にして侵すべからず
天皇側近vs官僚の対立
中村正直vs井上毅 宗教性を入れるべきか 政治要素を入れるべきか

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年04月24日

もう80歳になる歴史学者である著者の総括的な作。政党政治、資本主義、植民地、天皇制、といった「日本の近代化」に伴う重要テーマを様々な史料をひきながら「こってりと」考察している。
教科書を超えた史実の意味合いをとらえるには格好の書。

以下要点。

0)バジョットの前近代の「慣習による支配」から近代の...続きを読む「議論による統治」

1)日本における政党政治の成立
・幕藩体制下の権力抑制均衡メカニズム:日本は、分権的発想が江戸時代からの相互抑止の仕組みをもとに憲法に埋め込まれていたがゆえに憲法外で統合する作用が働いたというのはとてもおもしろい。体制統合の主体としての藩閥と政党があったとの見方
・幕末の危機下において権力分立論と議会制論が展開され、「公議」=パブリックオピニオンの考え方が基礎づけられた。明治憲法が想定した権力分立制は、幕府的存在の出現の防止を目的として王政復古の理念に適合。立法と行政の両機能を連結する政党内閣を本来排除する志向
・政党政治が終わり「立憲的独裁」=議会制からの離脱と否定へ

2)日本における資本主義の形成
・日本の資本主義は、国家主導自立型資本主義から国際的資本主義を経て排他的資本主義へ
・自立型資本主義・・・大久保の果たした役割の大きさには驚くべき。特に、外債に依存しないという方針を貫き通したことはほめてしかるべきこと
ー政府主導の殖産興業
ー国家資本の源泉としての租税制度。地租改正の意義
ー資本主義を担う労働力の育成
ー対外平和の確保
・松方の超均衡財政の強行と積極的正貨供給政策=大隈の基本政策の転換
・大久保のもとで育った高橋(過渡期)、大久保の後継としての松方正義
・国的資本主義のリーダーとしての井上準之助。高橋とは断絶。金解禁は失敗に終わる

3)植民地帝国化
・踏み出したのは、日清戦争の前後。台湾や澎湖諸島の植民地化。条約改正後の国際的資本主義へと転換した時期
・欧米諸国と異なる軍事力への依存度の高い「公式帝国」への道を歩む。イギリスとは異なる「帝国」
ー実質的意味の国際メンバーではなかった
ー軍事的安全保障関心から発し、国境線の安全確保への関心と不可分
・山県有朋の「主権線と利益線」・・・利益線の焦点は朝鮮半島。
・形成過程・・・・帝国主義だけではなく、新しい国際秩序イデオロギーとしての「地域主義」の観点の重要性
ー日露戦争後ー朝鮮と関東州租借地の統治体制の形成
 ー大正前半期ー主導権確立をめざす陸軍
 ー大正後半期ー朝鮮の三・一独立運動とそれへの対応
 ー1930年代ー「帝国主義」に代わる「地域主義」の台頭
 ー太平洋戦争後」ー米国の「地域主義構想」とその後

4)天皇制の捉え方
・日本の近代は歴史的独創ではない
・ヨーロッパというモデルはあった。前例のないヨーロッパ化の実験
・歴史的実体としてのヨーロッパを導入可能な諸機能の体系(システム」とみなした
・西欧のキリスト教に対比される天皇制(機能的等価物)
・日本における「神」の不在が、天皇の神格化をもたらした
・教育勅語を天皇の政治上の命令と区別し、社会に対する天皇の著作とみなした・・・天皇の政治的意味合いと道徳的リーダーシップ

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Posted by ブクログ 2021年03月23日

タイトル通り、日本の「近代」の意味に関する歴史的論考。天皇制や植民地政策などのデリケートな論題を平易に論じている点が好ましい。

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Posted by ブクログ 2019年12月11日

明治期に近代化を進める中で、近代化には欧州におけるキリスト教が果たした役割を、天皇に求めた。それにより、明治憲法の立憲民主主義と天皇の存在に矛盾が生じた。
教育勅語が天皇の神性を強め、立憲君主の枠を超越する存在にしてきたとしている。
であれば、その内容に関わらず、二度と教育勅語を復活させてはならない...続きを読む

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Posted by ブクログ 2019年04月30日

日本政治外交史の泰斗による日本の近代論考。政党政治、資本主義、植民地に加えて天皇制についても述べられています。
日本に憲法を導入しようと渡欧した伊藤博文に対し、プロイセンの公法学者グナイストは、社会の結びつきを強める機能を宗教に認め、「日本は仏教を以て国教と為すべし」と勧告します。
対して伊藤は、既...続きを読む存の日本の宗教にヨーロッパにおけるキリスト教の機能を見出だすことはできず、「我が国にあって機軸とすべきは独り皇室あるのみ」との断を下します。「神」の不在が天皇の神格化をもたらしました。
この伊藤の判断が、戦前においては天皇の神聖不可侵性に、戦後には日本国民の象徴へとつながっていきました。

筆者は宮内庁参与として、象徴天皇を誠実に務められた平成天皇を間近で見てこられました。
平成から令和へと時代は移っても、平和を願い国民の象徴を模索され続けた陛下の思いは大切に守っていかなければならないと再認識させてもらえた著作でした。

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Posted by ブクログ 2019年03月08日

日本政治外交史の碩学である著者が、日本近代についての「総論」を目指して執筆した本。ウォルター・バジェットが提示した「議論による統治」を重視した「近代」概念を参照しつつ、「なぜ日本に政党政治が成立したのか」「なぜ日本に資本主義が形成されたのか」「日本はなぜ、いかにして植民地帝国となったのか」「日本の近...続きを読む代にとって天皇制とは何であったか」という4つの問いについて歴史的考察を行いながら、現在の日本が置かれている歴史的位置の確認を含めた日本近代についての総合的考察を試みている。
骨太の日本近代史論であり、日本近代史の本質をつかむことができる一冊である。明治憲法下の権力分流体制とそれゆえの統合主体としての政党、自立的資本主義の発展の一つの条件としての明治前半期の戦争の回避、日本の近代を貫く機能主義的思考様式、西洋諸国における国家の基軸としてのキリスト教の機能的等価物としての天皇制といった本書の指摘は、日本近代史を理解する上で、目から鱗だった。
ただ、終章で触れられている今後の日本の展望については、国際共同体に基盤を置いたグローバルな規模での近代化路線の再構築という内容に異論はないものの、歴史的考察からはいささか飛躍した論であるように感じた。

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Posted by ブクログ 2018年04月13日

総論・俯瞰的な近代の考察。

・慣習から議論へ
・自立的資本主義の条件
・国際的資本主義への転換
・国体と政体

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Posted by ブクログ 2018年03月08日

序論のバジョット論はとっつきにくかったが,日本の具体論に入ってからは楽しく読めた.「議論による統治」を標榜してそれを実現してきた明治国家の政治面での動き,さらには大久保利通を元とする経済面での展開もおおよそ理解できたと思っている.議会の中での枢密院の存在をクローズアップして,植民地に対する法制度の動...続きを読むきは特に面白かった.台湾と朝鮮では大きく異なっていることも知らなかった.最後に出てきた「教育勅語」の成立する過程の話は天皇と憲法との絡みがあることだと知り,意外な事実だった.歴史の授業は近代史まで進まなかった記憶があるが,教えておく必要があると感じている.

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Posted by ブクログ 2018年01月03日

幕末から明治の時代、自分はその時代を生きたわけではないので想像することしかできないけど、きっと庶民ですら社会の激変を肌で感じたのだろうと思う。その改革には良いこともあれば悪いこともあった。端的に言えば西欧列強に倣った帝国主義が禍根を残し、現在の外交にも影を落としている。決して遠い昔の話ではなく、今日...続きを読むの我々の生活にも脈々と受け継がれているトピックを知ることができる。

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Posted by ブクログ 2017年07月22日

大正デモクラシー研究の泰斗が、日本の近代の成立過程を概括する。

とりわけ終章とあとがきは、歴史家の存在理由を後世に書きつける渾身の文章ではないだろうか。

「歴史は現実であり、現実は歴史であるというのが私の実感です。」と結ぶ。


再読せねば。

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Posted by ブクログ 2017年06月16日

3章における後に大東亜共栄圏の概念に図らずも繋がる「地域主義」構想は初めて知り勉強になった。
他の章も日本史を詳しく再勉強することができたが、各章間の繋がりがやや弱い印象。終章にて現代の評価、将来への展望をもう少し記して欲しかった。それは著者より数世代下の我々に課せられた課題ということかな。

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Posted by ブクログ 2017年06月09日

序章で気楽に読もうとする読者を潰しにかかっているのかと思いましたが、第1章からはわかりやすく、また、興味深く読むことができました。

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Posted by ブクログ 2017年05月14日

著者の三谷太一郎氏は、日本政治外交史を専門とし、東大法学部学部長も務めた政治学者・歴史学者。
本書は、明治維新後の日本の近代化を、政党政治、資本主義、植民地化、天皇制という4つの切り口から考察したものである。尚、「近代」の概念については、19世紀後半の英ジャーナリスト・W.バジョットを引用し、「「慣...続きを読む習の支配」する「前近代」から、貿易と植民地化を変革要因として、「議論による統治」の確立したのが「近代」」としている。
4つの切り口の主な分析は以下である。
◆政党政治・・・明治憲法下での体制原理ともいえる日本の立憲主義は「権力分立制」と「議会制」を基礎にしているが、幕藩体制の中に既に、「合議制」、「権力分散メカニズム」、「相互的監視機能」として、立憲主義を受け入れる条件が準備されていた。更に、明治憲法の特質であった分権主義的な体制を統合するためには、非制度的な主体の役割が求められたが、それは、藩閥と政党が自らの限界を認識した結果相互接近することにより、政党が幕府的存在化し、複数政党制が出現することになった。しかし、大正の終わりに本格作動した政党政治は、1930年代初頭には「立憲デモクラシー」から「立憲的独裁」に変質していった。
◆資本主義・・・明治維新後の日本は、外資導入に不利な不平等条約下にあったため、「自立的資本主義」に向かわざるを得なかった。それを可能にしたのは、①政府主導の殖産興業政策、②国家資本の源泉としての租税制度、③資本主義を担う労働力の育成、④対外平和の確保の4つであり、その「自立的資本主義」は、「消極的外債政策」、「保護主義的産業政策」、「対外的妥協政策」という特徴があった。日清戦争後~日露戦争時は、不平等条約の改正、金本位制の確立等を背景に、「国際的資本主義」に移行しつつ、外債依存度が増大したが、その後の世界恐慌、満州事変等により、各国で国家資本・経済ナショナリズムの台頭が起こり、国際的資本主義は崩壊した。
◆植民地化・・・日清戦争後、欧米の「自由貿易帝国主義(非公式植民地帝国)」に対し、まだ最恵国条款が得られなかった日本は「公式植民地帝国」を目指さざるを得なかった。満州事変後には、「帝国主義」に代わるイデオロギーとして「地域主義」が台頭してきたが、それは、「民族主義」の対立概念として、東亜新秩序を基礎付け、日本の対外膨張を追認・正当化する役割も担った。
◆天皇制・・・日本では、ヨーロッパ近代化の軸となる「キリスト教」に代わるものとして、「天皇制」が位置付けられた。「天皇制」は、聖俗が分離したヨーロッパと異なって、それらが一体化したものであった。天皇の「神聖不可侵性」は、明治憲法では明確化することはできず、「教育勅語」で明示する策をとった。太平洋戦争後は、教育勅語が廃止されるとともに新憲法が施行され、天皇制の役割は変化した。
そして、これからの日本が進むべき道として、「重要なのは各国・各地域のデモクラシーの実質的な担い手です。また、デモクラシーにとっての平和の必要を知る「能動的な人民」の国境を越えた多様な国際共同体の組織化です。すなわち国家間の協力のもとに、市民社会間の協力を促進する努力が必要なのです」と結んでいる。
日本の近代化を振り返るとともに、現在世界で進む「立憲的独裁」に対して、「立憲デモクラシー」を取り戻す必要性について考えさせる良書である。
(2017年5月了)

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Posted by ブクログ 2018年10月21日

明治以降の日本の体制について研究した本。政治体制、資本主義、帝国主義、天皇制について詳しく述べている。知らなかったことが多く、勉強になった。ただし項目によっては、特に、植民地獲得の拡張的政策については違和感のある論述もあった。はっきりとは言えないが、なにか違うような気がしてならない。学術的ではあった...続きを読む
「日英の政治には、決定的な違いがありました。英国には自由主義的伝統、とくにその主要な要素である「個人の尊重」の伝統が影響力をもっていたのに対し、日本にはそれはたしかになかったのです」p18
「(マックス・ウェーバー)合議制というのは行政任務の専門家が進行して、専門家が不可欠となってくるような状況において、支配者が専門家を利用しつつ、しかも専門家の優勢がますます増大していくという傾向に対応して、自己の支配者としての立場を守ろうとする目的意識に適合した典型的な形式です。つまり、支配者は合議制によって、それに参与する専門家たちを相互に競わせ、それを通じて彼らをコントロールする」p44
「大久保利通の海運保護政策は、徹底して三菱会社に及ぼされました。大久保は内務省駅逓寮に所属していた汽船13隻を挙げて三菱に付与し、補助金年25万円を14か年にわたって給付することとしました。また廃藩置県後に政府が諸藩所有の汽船を収め、これらをもって組織させた郵便蒸気船会社が危機に瀕した時、大久保の提議によって所有船18隻を政府が購入し、これらも三菱に付与しました。こうして政府の厚い保護を受けた三菱は沿岸航路から外国海運業者を駆逐し、極東海域全域を掌握することになります」p94
「日本が欧米諸国との間で大使の交換を認められるのは日露戦争後のことです。日露戦争の勝利によって日本は国際社会においてはじめて一等国として認知され、実質的意味の国際社会のメンバーとなったのです」p150
「朝鮮ではついに一度も文官総督が出現しなかったのとは対照的に、台湾総督には九代にわたって文官が任命されます」p179
「挑戦と台湾における教育について、日本人と現地人とを分けず、同一勅令によって規定し、実質においては日本人と現地人との間に、ある範囲の共学を実施するとともに、大学教育の導入等現地人に対する教育水準の引き上げを図った」p182
「教育勅語のいう、天皇の祖先が忠孝の徳を立て、臣民が心を一にして世々その美をなしてきた。これこそわが国体の精華であって、教育の淵源もまたここに存する」p228

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Posted by ブクログ 2018年07月29日

政党政治・資本主義・植民地・天皇制を切り口に日本近代史を総論しようとする一冊。
大ベテランの先生こそ専門の研究領域の総論を書くべきだと思うので、こういう本は大事。「青春期の学問」ではできない「老年期の学問」として総論を書くというスタンスもある意味正しい。ただ「最近の研究成果を踏まえていない」という批...続きを読む判をかわす方便というか、開き直りにも見えて、なんだかなぁという気持ちにもなる。。。

自分には少し難しかったので要再読だけど、資本主義の章はちょこちょこ気になった。たとえば不平等条約の下では外資に依存しない資本主義にならざるをえなかったとか、自国文明への「恥」の意識が近代化の促進要因になったと書かれている。面白い理解なんだけど、ずいぶん消極的な印象も受ける。本当にそうなんだろうか。

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Posted by ブクログ 2018年07月20日

日本の近代について、政党政治、資本主義、植民地、天皇制という4つの点から考察。

教科書で習うような近代の概念をさらに深掘りし考察を加える。

部分的に見れば、近代の概念を覆される。特に意識をしなければ、戦前=近代は遠いものだとどこか自分の離れたところに置いていたが、その形成過程を見ることで、当時を...続きを読む生きた人々がどのような考えに基づいて「近代」を作ったかが考察でき、その制度の合理性および非合理性について整理することができる。

ある程度まとめて言えば、制度とは、なんらかの一貫した意図を持って形成されるのではなく(もちろん形成する当初は一貫した意図があるのだろうが)様々な意図や環境が混じり合って出来るものだと思われる。日本の戦前の政治制度は最終的に戦争に向かい破綻したが、その政治制度は当初からその結末を迎えるように作られたのではなく、合理性を求め作られ、しかし他面的には非合理であり、破綻を迎えた。

現状の政治制度でも、ある面では合理的でも、大きく非合理な面もあるのかもしれない。

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Posted by ブクログ 2017年12月09日

日本の近現代史に疎いので勉強しようと買ったのだが、知りたかったものとは違ったので当てが外れた。

 序章から第二章まではよくわからなかったので読み飛ばした。ただ、教育についてと良妻賢母については記憶にとどめたい。
 後半は面白かった。特に教育勅語はいかに作られたのか、はとても興味深い。井上毅について...続きを読むもっと知りたい。

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Posted by ブクログ 2017年09月05日

 副題に「問題史的考察」とあるように、「政党政治」「資本主義」「植民地」「天皇制」という近代日本の根源に関わる4つの問題を歴史的に考察した書。著者は政治史学界のいわば「レジェンド」的存在の大御所だが、分析視角の鍵としてウォルター・バジョットを持ってきたり、日本の近代化の特殊性を相変わらず西欧(という...続きを読むより英米)との偏差によって規定するあたり、レジェンドであるが故の「古臭さ」は否めない。明治前期の非対外募債主義を幕末の「倒幕派」に遡及している点などおかしいところもある。とはいえ、最近はアプリオリに自明の前提として等閑視されている歴史学の根源的問題、すなわち「なぜ日本は非欧米圏で唯一植民地にならず、近代国民国家の形成に『成功』したのか?」という問いを検討する上で様々な示唆を与えてくれる点は評価するべきだろう。

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Posted by ブクログ 2018年10月20日

幕末以降の歴史が、なぜそういうように進展していったのか、その時々での岐路を明らかにしようとする、著者なりの通史を描こうとする試みであろうか。政党政治、資本主義、植民地帝国、天皇制という四点の側面をとりあげている。
なるほど、これだけの内容を書き込もうと思えば、歴史の大家と呼ばれるような人でないと無理...続きを読むだろう。だが、「天皇制」や「植民地」という古い符丁をわざわざ持ち出しているというところで、著者の立脚点にそもそも違和感を抱く。

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Posted by ブクログ 2017年07月06日

日本の近代成立の過程を、「政党政治」「資本主義」「植民地帝国」「天皇制」から読み説く。
天皇制の成立や教育勅語制定に関する当時の為政者の苦労が興味深い。

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Posted by ブクログ 2017年06月24日

<目次>
序章   日本がモデルとしたヨーロッパ近代とは何であったのか
第1章  なぜ日本に政党政治が成立したのか
第2章  なぜ日本に資本主義が形成されたのか
第3章  日本はなぜ、いかにして植民地帝国となったのか
第4章  日本の近代にとって天皇制とは何であったのか
終章   近代の歩みから考え...続きを読むる日本の将来

<内容>
歯ごたえがありました。ただ近代資本主義の成立、日本の植民地が欧州とは違うところがあること、天皇を明治政府がどう利用したのか、いろいろと示唆があった。

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Posted by ブクログ 2017年06月23日

金解禁と軍縮条約はセットだった、東亜新秩序の地域主義への位置付け、等々自分にとっては新たな視点を提供して頂きました。全ての事柄、歴史には、透徹した論理、理屈、考えがあったんだなあ、と再認識。 ちょっと難しかったけど。またじかんを置いて再読してみようかと思います。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2017年06月07日

日本の近代を西欧をモデルとした機能的近代化を中心に考察した本。私の知的レベルでは十分な理解ができないので評価は3にしたが、読む人が読めば素晴らしい考察の本なのだと思う。

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