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政党政治を生み出し、資本主義を構築し、植民地帝国を出現させ、天皇制を精神的枠組みとした日本の近代。バジョットが提示したヨーロッパの「近代」概念に照らしながら、これら四つの成り立ちについて論理的に解き明かしていく。学界をリードしてきた政治史家が、日本近代とはいかなる経験であったのかを総括する堂々たる一冊。
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Posted by ブクログ
一般的には「遅れた閉鎖的な時代」と片付けられてしまう江戸時代の環境が、実は細かい合議制で成り立っており、そのことが「近代」としての明治時代の成立に大きな意味をもった、というのは面白かった。また、「幕府」的な存在を排除したことが、分立した権利のまとめ役の不在を生み、そのまとめ役として政党内閣が誕生した...続きを読む、という内容も興味深かった。 最初の導入部が非常に難解なのがもったいなくは感じたけれど、論の展開を考えるとやむを得ないように思う。
近代国家形成に向けて日本がどう歩んできたのか、「政党政治の成立」「資本主義の形成」「植民地帝国の経緯」「天皇制とは」という4つの観点から学術的に説く。前近代において他国からの侵略、宗教の諍いが限られていた日本では、事情の異なる西欧の近代化を倣うにあたって試行錯誤が続く。植民地領有の理由については、西...続きを読む欧では経済的利益を求めたのに対し、日本では軍事的安全保障を求めたものであることが明確に示される。著者を極左と責める向きがあるが、現在の西欧での移民、難民の問題はもちろん、日本での近隣諸国との関係で精算しきれない問題は、それぞれが植民地帝国であったゆえの負の遺産であることを受けとめたい。そしてそれを教訓とし、未来というより常に今この時のありようを考えていかなければと思う。
著者の問題意識と分析は頷けるところ多々あるが、将来展望の部分はりそうしゅぎてき、希望観測的すぎないか。
かつて三谷先生が講義のなかで、現憲法が帝国憲法の改正により誕生したことを強調されていたことを思い出します。その時には、8月革命説等へのアンチテーゼなのかなくらいに思っていましたが、本書を読んで自分の浅い理解に気づきました。 明治にプログラミングされた近代的な設計は戦前戦後問わず生きているのだし、様々...続きを読むな近代性は現代を規定しているという問題認識が前提とされているということに。
我が国の近代史について、テーマ別にまとめた本。各テーマについて、筆者なりの軸を持ってまとめられている点が良い。
今年御年81歳の三谷先生の岩波新書。すごく面白かったです。お勧め。しかし、80歳を越えて知的な刺激を与えられるってすごいですね。 決して易しい本ではないけれども、一般読者にもわかりやすく書かれている。バジョットの本を導きの糸としながら、日本の近代とは何であったのか、政党政治、資本主義、植民地帝国、...続きを読むそして天皇制とそのアポリアに迫る。 自立的資本主義路線から国際資本主義路線へと転換する松方財政期。そして、松方と前田、井上と高橋との対立などについても新たな視点を提供している。
読んでいて眠くなるので、寝る前に30分本書を読むと快眠出来た。 途切れ途切れにしか理解は出来なかったけど、近大日本がどのように政党政治を立脚し、どのように資本主義体制を整えて、どんな風に植民地帝国へと進み、どんな風に天皇を位置づけてきたのかを知ることが出来た。 大日本帝国時代の人はあんな無謀な戦争仕...続きを読む掛けてアホやなあと思ってたけど、当時もやっぱり自分の何倍も賢いインテリ層は存在して、当時なりに色々考えてたんだなあって思った。 議論による統治 バジョット 慣習の支配からの脱却 日本に政党政治が成立した経緯 政党政治の成立 江戸幕府からの受け継ぎ 天皇主権を確立するための権力分立 立憲的独裁に 日本の資本主義導入 大久保利通の殖産興業化 不平等条約改正 対外平和 大久保暗殺 自律的資本主義 松方正義 非外積依存 明治天皇 グラント大統領 条約改正 日清戦争 外積依存 高橋是清 井上準之助 金解禁 国際資本主義 世界恐慌 自律的資本主義 植民地主義 軍人と文官の朝鮮半島統治を巡るせめぎあい 美濃部達吉 植民地の法的位置づけ 憲法講和 異法区域 民族運動 同化政策 拓務省拓殖務省 帝国主義から地域主義へ 戦後もアメリカによる地域主義が続いていた 日本の近代において天皇制おは何であったか ヨーロッパ化という課題 機能主義的思考様式 キリスト教の機能的等価物としての天皇制 グナイストは仏教を 君主観の違い 教育勅語はいかに作られたか 国務大臣の副著が無い 政治上の命令では無い 立憲主義との整合性 神聖にして侵すべからず 天皇側近vs官僚の対立 中村正直vs井上毅 宗教性を入れるべきか 政治要素を入れるべきか
タイトル通り、日本の「近代」の意味に関する歴史的論考。天皇制や植民地政策などのデリケートな論題を平易に論じている点が好ましい。
明治期に近代化を進める中で、近代化には欧州におけるキリスト教が果たした役割を、天皇に求めた。それにより、明治憲法の立憲民主主義と天皇の存在に矛盾が生じた。 教育勅語が天皇の神性を強め、立憲君主の枠を超越する存在にしてきたとしている。 であれば、その内容に関わらず、二度と教育勅語を復活させてはならない...続きを読む。
日本政治外交史の泰斗による日本の近代論考。政党政治、資本主義、植民地に加えて天皇制についても述べられています。 日本に憲法を導入しようと渡欧した伊藤博文に対し、プロイセンの公法学者グナイストは、社会の結びつきを強める機能を宗教に認め、「日本は仏教を以て国教と為すべし」と勧告します。 対して伊藤は、既...続きを読む存の日本の宗教にヨーロッパにおけるキリスト教の機能を見出だすことはできず、「我が国にあって機軸とすべきは独り皇室あるのみ」との断を下します。「神」の不在が天皇の神格化をもたらしました。 この伊藤の判断が、戦前においては天皇の神聖不可侵性に、戦後には日本国民の象徴へとつながっていきました。 筆者は宮内庁参与として、象徴天皇を誠実に務められた平成天皇を間近で見てこられました。 平成から令和へと時代は移っても、平和を願い国民の象徴を模索され続けた陛下の思いは大切に守っていかなければならないと再認識させてもらえた著作でした。
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日本の近代とは何であったか
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三谷太一郎
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