あらすじ
色とりどりの言葉が世界に小さな奇跡をおこす中埜菫(なかの・すみれ)は、担当教師に才能を見出され、17歳の若さで詩人としてデビューした――。姉の自由さに苛立ちながら憧れを抱く妹。伸び悩む新人に苦悩する編集者。不思議な魅力を持つ隣人にときめく大学生。生徒が書いた補習授業の作文に驚く高校教師、意外な形で同級生と再開する販売員。幼い娘の成長に不安を覚える母親。詩人「すみれ」とかかわった人々が見つける幸せの形を描く、青春&家族小説。
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Posted by ブクログ
ぱりぱりって何?と思いながら読みはじめたけど、あっという間に読み終わりました。
少し変わった子供だと思われていたすみれ。
そのまますみれが、ただの変わった子、として育てられていたら、この物語のような素敵な展開はなかったんだろうな。
両親はもちろん、時々嫌気がさしながらもあたたかく見守った妹、才能を発掘した先生、編集者。
みんなが優しくて、あたたかかったからこそ、すみれはメモに詩を書き続けることができているのだと思う。
そして何より、すみれと碧の出会い。嬉しかったなぁ。
周りの人があたたかかったのはもちろん、すみれ自身にあたたかさがあるからで。誤解されやすいかもしれないけど、本当は優しさと一生懸命であふれている人なんだと思う。
全ての章のお話が、本当に丁度良い塩梅で終わっていて、それがものすごく気持ちよかった!
ぱりぱり。題名も、表紙のデザインも、全てが気持ちの良い本でした。すき!
Posted by ブクログ
表題作の「ぱりぱり」のラストが秀逸でした。
中埜菫(なかのすみれ)というひとりの詩人。
私たちから見れば、変わった女性。
この人に翻弄される周囲の人たちの
それぞれの視点で描かれる連作短編集。
すみれが「いたせいで」苦悩し
すみれが「いたおかげで」自分自身の
気づきを得る。
すみれを触媒として、自分の生き方を
一歩前へと進めてゆく人々は、それぞれに素敵。
でもひとつだけ不満なこと。
すみれは何を思い、何を感じているのか。
難しいのだとは思うが、私はすみれの目に
映るものの美しさを、すみれの視点から見たかった。
要するに、すみれの詩をもっと読みたかった。
すみれというフィルターを通過していく人たちの
その生き方の変化は、時に清々しくて心地よい。
でもそれでは、人としてのすみれがいない。
すみれが一番その姿を見せてくれるはずの言の葉、
彼女が書きためた詩の数々を散りばめてほしかった。