【感想・ネタバレ】こちらあみ子のレビュー

あらすじ

あみ子は、少し風変わりな女の子。優しい父、一緒に登下校をしてくれる兄、書道教室の先生でお腹には赤ちゃんがいる母、憧れの同級生のり君。純粋なあみ子の行動が、周囲の人々を否応なしに変えていく過程を少女の無垢な視線で鮮やかに描き、独自の世界を示した、第26回太宰治賞、第24回三島由紀夫賞受賞の異才のデビュー作。書き下ろし短編「チズさん」を収録。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

今村夏子さんは、世の中の “ 普通 ” とは、ずれた人たちをただ、そのまま書く人、という印象。そこが好きです。
絶対に忘れられない小説を書く作家。

あみ子はもうまさに。少し風変わり、なんて可愛いものではない。
周りのチョコだけ舐めあげたクッキーを、好きな男の子にあげるのですよ。。クッキー食べようと思ったけどまわりのチョコ全部舐めたらお腹いっぱい→のり君が好きだからこれあげよう!…なんという完璧なあみ子理論。
のり君に告白するシーンは壮絶の極み。

あみ子にロックオンされたのり君が不憫でしょうがないし、再婚相手の子供があみ子だった母親にも同情してしまう。なのに。

なぜだか、「あみ子に傷ついてほしくない」という気持ちになる。
父親から祖母の元に厄介払いされたあみ子が、たくさんの人を忘れていて、よかった。

あみ子が坊主頭君に、自分の気持ち悪いところを教えてほしい、とまっすぐに問う場面が忘れられない。

「こちらあみ子」以外に「ピクニック」「チズさん」という短編も収録。

「ピクニック」が今村さんらしい、やばい人の周りもこれまたやばかったパターンで、一気に読みました。

今村さんの小説を読むと、人間はおもしろいけれど怖いと感じる。
普通だと信じている自分も、そうじゃないかもしれない。

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2025年12月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

あみ子は、「悲しみ」「寂しさ」「怒り」などの感情があまり見られず、周りの人が当たり前のようにこなす「空気を読む」こと、「気を遣う」ことができない少女だ。発達障害だと思う。そのずれが、あみ子の意図とは関係なく、周囲との対立やすれ違いを生じさせていくところに、どうしようもない切なさを感じた。
このような子供に強い感情が生じる時、周りが押さえられないような特有の爆発性がある。心理学でも習った気がする。例えばのり君に「殺す」と言われてもなお「好きじゃ」と叫びながら伝える場面だ。「あみ子のこころは容赦なく砕けた」という文章からは、他の場面では感じられないあみ子の感情の昂りが伝わってくる。
私の周りに、特に小学生の頃、あみ子のような子供がいたら、私はあみ子に優しくできるだろうか。自信を持って「できる」と答えることができない。そしてそれが間違ったことなのかも分からない。あみ子の母親やのり君のように、あみ子の言動によって傷つく人はどうしてもいるからだ。
そして、私が小学生の頃同じクラスにいた発達障害の男の子のことを思い出した。周りからの怒りやいじめに気付かず、でも突然泣き叫んだり怒りを爆発させる。私の気持ちや態度は、やはりあみ子の周りの子供と同じだったと思う。
完読後、
「なんで誰も教えてくれんかったんじゃろう。いっつもあみ子にひみつにするね。絶対みんなひみつにするね。」
というあみ子の言葉を何度も反芻して、空虚な、埋まらない寂しさを感じた。

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2025年08月24日

ネタバレ 購入済み

小説とは

小説とは、読者に気づきを与えきっかけを作るツールなのだなと改めて気付かされた。
ただただ、現実。
誰も悪くないけれどそれが現実で痛い。
あみ子なりに感じ傷つき、忘れ、喜び、悲しみ。彼女の事は誰が1番理解をしてくれてだんだろう、と想像した。各々の関わりの深さと関係性。
家族ってそれでも家族。生きる上で色々な問題が起こるし、あなただったらどう解決する?と聞かれているような気もした。もし、自分が登場人物の母だったら、同級生だったらと想像した。
私自身、あみ子の幻聴と決めつけていて面くらい、
ただの読者としてもあみ子を信じていなかった事に気付かされた。
天晴。

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2021年02月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

冒頭の6ページで、その世界に運ばれてもう出られない感じがした
坊主頭の彼の広島弁がとても好きだった
応答のある世界でよかった

あにきか、それともはげか
父親か、それともメガネか
「あんたはあれじゃね。さてはあみ子をよく知っとるひとじゃね」

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2026年01月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

​『こちらあみ子』『ピクニック』、そして『チズさん』。この短編集を読み終えた今、私は非常に不思議な感覚に包まれている。怖い話を読んでいるような、あるいはSFを読んでいるような、現実から離れた異世界に触れたような感覚。しかし、どの話も限りなく現実に近い、今村夏子ならではの剥き出しの語りだった。
​中でも最も強く心を揺さぶられたのが、『ピクニック』だ。
序盤、そのタイトルから、私は主人公の七瀬とタレントの春元気との間に生じる明るい交流の物語だと思っていた。しかし、その期待は残酷に裏切られる。二人の関係は七瀬の痛々しい妄想に過ぎず、ドブ川で携帯を探し続ける狂気的な行動も、存在しない接点を繋ぎ止めるための空虚な努力だった。
​ここで最も「怖い」と感じたのは、七瀬を囲む職場の先輩たちだ。当初は「いい人たち」に見えた彼女たちの態度は、実は現代にも通じる残酷な「いじり」そのものではなかったか。象徴的なのは、対岸にいる七瀬にピーナッツを投げるシーンだ。これは親愛の証などではない。得体の知れない動物を檻の外から眺め、反応を楽しむための「餌付け」だ。彼女たちは七瀬を対等な人間としてではなく、安全圏から観察して楽しむ「おもちゃ」として扱っていた。
​七瀬が語る東京での架空デートも、彼女たちの「デートはしないの?」という執拗ないじりに対する、精一杯の見栄だったのだろう。周囲の嘲笑的な期待に応えるために嘘を重ねたのか、あるいはそれすらも彼女の妄想の一部なのか、その境界は判然としない。しかし、途中で明かされる「七瀬の部屋は汚い」という一行は、彼女の精神的な異質さを一気に際立たせ、読者が抱いていた「健気な善人」というフィルターを粉々に砕いてしまう。
​この「噛み合わなさ」から生じる恐怖は、他の収録作にも通底している。病的なまでに素直すぎて、誰も悪くないのに周囲を壊していく『こちらあみ子』。老いという抗えない現象に付け込まれる『チズさん』。これらは決して特殊な話ではない。人生で一度は経験したことがあるような、私たちのすぐ隣で起きている現象なのだ。
​人間の生きにくさをドラマチックに脚色せず、顕微鏡で覗くように淡々と切り取る今村夏子の筆致。現実から離れているようでいて、実は剥き出しの人間臭さを突きつけてくる。読み終えた後に残るこの不思議なモヤモヤこそが、映画『花束みたいな恋をした』の台詞が示した通り、この世界の「不気味さ」を敏感に感じ取ってしまった証拠なのだろう。何度も読み直して、この「理解できなさ」の正体をさらに深めていきたい。

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2026年01月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「こちらあみ子」
発達障害、知的障害と思われる主人公あみ子。
両親、兄、同級生ののり君はいずれも寄り添う姿勢で接しているが、あみ子の言動に振り回され、のちに離れていく。
何が起こっているか、何が問題かも分かっていないあみ子。
何がまずかったのか教えてあげれればよかったのかな。教えてあげたら、彼女は理解できたのかな?周りのキャラクターたちには、とっくに諦められてしまっている。(諦めていない同級生もいるのだ泣。あみ子は興味なさそうだけど)
彼女は一応幸せそうに暮らしているようだから、そこは救い。

いつまでも幼い子供のように純粋で素直なあみ子に憧れる、という方も多いようであるが、私はどうしても周りのキャラクターたちに肩入れしてしまう…
あの子は変わってるから仕方ない、とはいえ、チョコレートを舐めとった湿ったクッキーを食べさせられたりしたらさぁ、たまったもんじゃないよ…

「ピクニック」
七瀬さんみたいな人にどう接したら良かったのか。
ルミたちのようにするしかない気もする。
決して虐めてる訳ではない、無視する訳でもない、なんとなく優しくしながら、どこか小馬鹿にして…
この構図はどこでも見かける。

「チズさん」
私の読解力が足りず、意図が読み取れなかった。
主人公は何なんだよ。こえーよ。チズさんに何を求めてるんだ。

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2025年10月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

映画『花束みたいな恋をした』の作中で登場した絹ちゃんの「あの人はきっと、今村夏子の『ピクニック』を読んでも何も感じないんだろうな。」といった趣旨の、嫌味を効かせたセリフに出てきたお話が入っている本書を、五年前映画館の入っている商業施設の本屋で購入した。当時は受験期で忙しく本棚にしまわれたままになっていたが、この度読んでみることにした。
三作品が一冊となっており、まずは『こちらあみ子』。あみ子は素直で純粋な子だった。何か病名を付けることはできるだろうが端的に言うと、誰しもが心の中にかつて持っていた幼く素朴な心を小学校、中学校、そして卒業後にも変わらず持ち続けている子だ。それは、生まれ持った性質か、はたまた彼女の家庭環境が幼少期の彼女に影響を与えたのかは分からないが、彼女の純朴さからは赤ん坊の温もりを感じ、彼女に関わる人々からは大人になるにつれ気付かなくなった人の冷たさを感じた。あみ子はたしかに普通の子ではなかったが、彼女の視点に入り込むと真っ直ぐな心で物事を受け止め、感じるままにうごき、しゃべっていた。ただ、あみ子の周りの大人や同級生はもちろんあみ子を避け、煙たがり、いじめていた。そんなあみ子に対して唯一対等に接してくれていたあの男の子、小中と同級生だったがあみ子は気にもとめず名前も知らなかったあの男の子、「お前臭いぞ?風呂入っとんか?」「俺の字も綺麗じゃろう?」とあみ子のことを変なやつと思いながらも、それを個性として受け止めていた男の子。あみ子視点と三人称視点を持つ私にとって、彼の接し方はとても嬉しく、彼のような人間になりたいと思った。

次に『ピクニック』。七瀬さんとその彼氏の話。物語が進んでいくにつれ、七瀬さんは彼氏とは妄想の中で付き合っているにすぎないことが明らかになっていく。そんな彼女の話を楽しそうに聞き、否定したり馬鹿にしたりすることなく接する職場仲間たちの優しさが心に染みた。何とも不思議な話で、言語化することがかなり難しいが、とにかく情に溢れていて職場仲間たちと共に働きたいと思ってしまうほどだった。

3作目は『チズさん』。これは分からん。これから解説見てみる。

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2025年09月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

こちらあみ子
あみ子のことを大切にしてくれていた人たちがあみ子自身の行動によって離れていってしまう。あみ子の親も兄も周りの人間も壊れてしまう。
あみ子はあみ子として人と接しているだけ。救いようのない絶望感、誰もあみ子の事を理解できる人はいないのかと思うと、読んでいてきついものがあった。

ピクニック
虚言癖のある七瀬さんとそれを知らない会社の同僚、虚言癖だと知っている新人の物語。
ドブの掃除をしてうまくいったらピーナッツを投げるシーンが水族館のイルカショーとかを連想できてしまって、気味が悪かった。
何も知らないことは罪になるなと思った。

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2025年09月28日

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