あらすじ
これからのビジネスを考える上での最重要コンセプトであるプラットフォームについて多角的に解説。
デジタルエコノミーの勝者と敗者を分けるプラットフォームの戦い方について、最新事例をもとにして、理論とカラクリがわかる!
プラットフォームは次のような特徴を持っている。
・急速に成長することができる
・一人勝ちすることがある
・一人勝ちが突然くつがえされることがある
なぜ、こういう特徴が生じるのか? その要因は主として次のようなものである。
・レイヤー構造
・ネットワーク効果
・エコシステム
・アマチュアエコノミー
プラットフォームに関連する技術の進歩や新興勢力の出現は、古典的産業では考えられないほど速い。
だからプラットフォームでの戦いに挑むには、常に「次」を考えておくことが欠かせない。
本書では、その「次」を考えるためのヒントも提供したい。
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Posted by ブクログ
ユニコーン企業トップ10(2017年10月時点)のうち、プラットフォームをビジネスモデルとする企業は8つを数える。ユニコーンとは企業価値が10億ドルを超える非上場のベンチャーを指す。UberやAirbnbが代表格。圏外であるが日本企業では、メルカリが有名だ。プラットフォームビジネスがなぜこれほど急成長し注目を浴びるのか、紐解くため手にとる。
プラットフォームの特徴としてレイヤー構造、ネットワーク効果、エコシステム、アマチュアエコノミーの4つが挙げられている。急成長という意味では、レイヤー構造、ネットワーク効果、アマチュアエコノミーのどれも重要だが、最も頭を悩ますのがエコシステムだろう。例として挙げられているのが、任天堂のファミコン。自前でゲームソフトをつくることもできたが、自社以外にも機会を提供し、その代わりゲーム機とソフトとの接着技術を特許化しロイヤリティ収入を得るビジネスモデルを構築したといった具合だ。
但し、勘違いしやすいのは、ロイヤリティ収入を得るエコシステムを構築する余り顧客ニーズを軽視してしまうことだ。これは載ってはいないが、同じゲーム業界で3DO(スリーディーオー)の事例が当てはまるだろう。任天堂より安いロイヤリティでサードパーティを集めることを目論んだが、小売価格が54,800円と高額だったため失敗に終わった。
プラットフォームの急成長が特に欧米で目立つのは、旧来型のビジネスに新しいエコシステムで、いかにゲームチェンジ(変革)を仕掛けていくかという視点を持ち合わせているからだと、エコシステムのwikiを併せて読んで納得がいった。そういう意味では規制が厳しい日本では既存産業を守る方向に力学が働き、生まれにくい環境になっているのかもしれない。メルカリで盗品や現金が出品されていた問題が起こったとき、メルカリが日本のみを市場としていたら、マスコミによって潰されていただろう。
最後に、プラットフォームの一人勝ちの条件や、反対に阻害要因を整理していたりと、企業同士が競争していく視点で書かれているのはビジネスをしている立場にとって嬉しい。プラットフォームのビジネスモデルを理解する上で読んでおきたいー冊だろう。
Posted by ブクログ
プラットフォームについてわかりやすく解説されていた
・プラットフォームは一人勝ちしやすい
・一人勝ちの逆転も起こる。起こるのは、PCからスマホに変わる等変化が起きたとき。
・プラットフォームビジネスでは信頼と信用が重要。エアビーでは、口コミ、クレカ登録、本人確認等で補った。
・一人勝ちを逆転するには、価格競争を仕掛けることに加え、新たな収益源を得ること。食べログは、掲載費用をなくし、リアルな口コミを強化。その後、課金するサービスを構築。
・ラインが成功したのは機能が充実していたからではなく、スマホの流れが来た時にenough な機能を持ち合わせていたため(facebookはPC向けで機能充実)。facebook等を利用していない10代にとっては、facebookが競合とならなかった。
Posted by ブクログ
レイヤー構造や、WTA、サイド内・サイド間ネットワーク効果、マルチホーミングなどなど、プラットフォームに関する戦略が凝縮された1冊。まさに教科書。
Posted by ブクログ
お仕事的にも個人的な関心においても外せなさそうなタイトルだったので2度通読した。
「教科書」というだけあってきちんと基本を抑えた感じ。網羅的に学ぶにはとても良いと思うが、正直目新しさはあまりない。
90年代のWindiws95の普及以来、この手のトピックは「ネットワーク効果」「ロックイン効果」「収穫逓増」で語れる。いずれも本書で著者指摘の通り、基本的な経済原則だ。(しかし、「収穫逓増」って久々に目にしたw 懐かしくかつわかりやすいなw)
今はエンタープライズIT屋の私が一介の経済学部生としてデジタルエコノミーを学んでいた頃からの一番の大きな変化といえば、デバイスとしてスマートフォンが登場したこと。AppleのAppStoreの成功以来、これらの経済原則に「エコシステム」という単語が加わってきたように思う。
エコシステムとはすなわち「全てを自社でやらない」という経営判断だし、それはすなわち「レイヤー構造」を構成することになり、「レイヤー構造」は、その構成要素の「モジュール化」「ソフトウェア化」「ネットワーク化」を促進する。これらは「デジタル化」によってもたらされるようになった変化点だ。
そしてこの「レイヤー構造」において、何が「プラットフォーム」になりうるかは、どの視点に着眼するかによって異なる、というところが本書において一番大事なところ、というのが個人的な感想。
比較的古くて新しいテーマだが、デジタルエコノミーの世になって以来、WTA(独り勝ち、本書ではWinner Takes All=WTAとしている)は起こりやすくなり、しかしライトイヤーのスピード感での栄枯盛衰の移り変わりもまた日常茶飯事。この相反する要素もまた経済学的に観測した際に面白いところだ。
せっかく独り勝ちしても、そこで気を抜くとゲームチェンジを仕掛けられて、あっという間に転落してしまう。
「なにがプラットフォームとなるかは視座の置き方次第」という点はきちんと理解しておかないと、プラットフォームを仕掛けても、他者にひっくり返されてしまうのだと思う。
そしてもう一つの変化点は「アマチュアエコノミー」の拡大。エアビーやウーバーのようなシェアリングエコノミーなんてあの頃はまだ姿も形も無かった(はずw)
「アマチュア」すなわち不特定多数の参入を前提とするため、その仕組みの信用と信頼を如何に担保するか、というまた異なるテーマが追加される点が興味深かった。何年か前に「ツイッターノミクス」という本が話題になったが、あの世界は現実化しつつあるのだと思う。が、エンタープライズITにおけるプラットフォームにおいてはあまり関連しない要素かもしれない。
残念ながら、プラットフォームのマネタイズについては通り一遍の事例考察にとどまり、有用な示唆は得られなかった感がある。
企業側としては、どこで稼ぐのか?という点が最大の関心事であろうし、この点はやや残念なところ。
ただ確立しつつあるプラットフォームをどう覆すか、などの思考実験も展開されており、その点はとても興味深かった。