あらすじ
人生の途中、はからずも厄介ごとを抱えることになった人々。
でも、「たとえ行き止まりの袋小路に見えたとしても。根気よく探せば、どこかへ抜け道があったりする。」(「トオリヌケ キンシ」より)
他人にはなかなかわかってもらえない困難に直面した人々にも、思いもよらぬ奇跡が起きる時がある――。
短編の名手・加納朋子が贈る六つの物語。
(収録作品)
・高校に入ってから不登校・引きこもりになってしまったある少年。ある日彼の家に、一人の少女がやってきた。少女はかつて少年に助けてもらってもらったことがあるという――。『トオリヌケ キンシ』
・「ある形」を見つけてしまう能力以外はごくごく平凡な女子高生。そのふしぎな力を生物の先生は「共感覚」と分析した……。『平穏で平凡で、幸運な人生』
・やさしかった母がある日豹変、家の中でいじめられるようになってしまったタクミ。つらい日々の救いは、イマジナリーフレンド(想像のお友達)の存在だった。『空蝉』
・人の顔が識別できない――「相貌失認」の「僕」は、高校入学を機にそのことをカミングアウトする。あろうことかその後「僕」はある女の子から「好きです」と告白される。不思議な始まりの恋の行方は? 『フー・アー・ユー』
・長く連れ添った夫人を突然に亡くし、気落ちする亀井のおじいちゃん。家の中でひとりのはずが、ある日「座敷童がいる」と言い出した!『座敷童と兎と亀と』
・前日に高熱を出して受験に失敗した「俺」は、ある場所に引きこもり、自分でコントロール可能な「明晰夢」を見る日々を過ごしている。そんな中で出会った女の子「ミナノ」、彼女は夢だったのか、それとも?『この出口の無い、閉ざされた部屋で』
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Posted by ブクログ
目次
・トオリヌケ キンシ
・平穏で平凡で、幸運な人生
・空蝉
・フー・アー・ユー?
・座敷童と兎と亀と
・この出口の無い、閉ざされた部屋で
どうして本屋大賞は加納朋子を選ばないんだろう?
私は結構彼女の本に背中を押されて前向きになれることがあるんだけど、いい年をして私が単純すぎるのかなあ。
短編はどれも、それぞれ生きていくにはちょっとしんどい、けれど人には人には伝わりにくい困難を抱えた人が出てくる。
「場面緘黙症」「共感覚」「ネグレクト」「相貌失認」「醜形恐怖症」「半側空間無視」など。
本人が一人で悩んでいるうちは、それはとてもつらい。
でも、傍で支えてくれる、見守ってくれる、一緒に歩いてくれる人がいたら、少しは楽になるかもしれない。
出来すぎな話?
そうかもしれない。
本当の人生は、そんなものじゃない。
でも、ふわふわと生きているわけじゃあないのだ。
しっかりと生きようと思うから、辛いのだ。
『この出口の無い、閉ざされた部屋で』について言えば、作者自身がこの部屋から出てきた人だから。
好きなのは、『平穏で平凡で、幸運な人生』。
確かに主人公が葉山先生と出会えたのは、最強に幸運だったと思う。
逆に読んでいてつらかったのは『空蝉』。
子どもが辛い目に合う話は、読んでいてやっぱり辛い。
結果的に状況は改善したとしても、長いこと辛い思いをしてきた時間はやり直しがきかないのだし。
それでも、一番短い話だけど、本のタイトルを『トオリヌケ キンシ』にしたのは正解だと思う。
”たとえ行き止まりの袋小路に見えたとしても、根気よく探せば、どこかへ抜け道があったりする。”
どうして本屋大賞は加納朋子を選ばないんだろう?