【感想・ネタバレ】財務省と政治 「最強官庁」の虚像と実像のレビュー

あらすじ

国家の財政を担い、「官庁の中の官庁」「最強官庁」と称される財務省(旧大蔵省)。55年体制下では自民党と蜜月関係を築いた。だが90年代以降、政治改革などの統治構造改革が、首相の指導力強化と大蔵省「解体」を推進。2001年には財務省へ衣替えした。小泉政権、民主党政権、第二次安倍政権と政治が変動するなか、経済停滞と少子高齢化により財政赤字の拡大は続く。20年以上の取材をもとに「最強官庁」の実態を追う。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

55年体制下の大蔵省から、省庁再編後の財務省に代わり、二度の政権交代を経て役割を転じた財務省の実際に迫ったもの。かつての、調整役・憎まれ役をしていた時代とは法的権限も変わり、求められる新たな役割を模索している財務省。ある意味、大蔵省優勢下の政治状況を撃つ崩すという政の悲願は達成されたものの、政も官もその後の新たな構造というか関係というか役割分担を見いだせずにいる現状。明日はどっちだ!?
そして、民主党政権時代について複数の新たな知見を得ることができたことは特機に値する。
一つ:小沢一郎が自民党幹事長だった時代は、ほっといても財政が健全化するタイミングだったので、『財源は言えば出てくる』は彼が本気で思っていた可能性。
二つ:民主党政権は自民党政権時代以上に財務官僚に依存していた(秘書官の面でも、政権運営の面でも)官僚との接触が、鳩山政権時の財務副大臣、菅直人政権時の財務相と財務官僚としか接触の無かった野田総理が、外務省や経産省も財務相と同じように『官僚の枠を越えた』政治的情報収集や根回しをやってくれているものと誤解したというのも、悲喜こもごもな話である…

0
2018年10月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

政治と財務省の関係を時系列を追って記述し、その立ち位置と絡みの深さを事実として示した2015年の本。元日経記者というだけあって淡々とフラットに書かれている。
自民党長期政権と大蔵省の体制の序章から始まり、バブル崩壊後の新党さきがけへの政権交代、金融危機と大蔵省解体とどんどん進んでいく。

政治や経済に詳しくない自分にとって、「常識やぶりの驚天動地」として書かれていることも今ひとつ分かりづらく、数多く出てくる人名に馴染みもなく、読み進むのに苦労した。記者として中立の立場を維持して書きたいのはわかるが著者は財政規律派だろう。ある程度主張の入った解説を混じえてくれるほうがわかりやすいのにと思う。

しかし、小泉政権のあたりから、知らなかった政治の裏側が覗けたようで面白くなった。財務省と政治のかかわりを書いているのだが、それは政局の最も中心の動きと言えるのだろう。表向きの報道と実際の政治で起こっていることはまったく違うとわかって気が遠くなる。

財務省は、首相はじめ政治の中枢にいる政治家たちに頼られたり嫌われたり避けられたり恫喝されたりしながら提案したり誘導したり調整したりして最後はどうにかまとめて実行する組織である。

政治家は財務省と距離をとって自分の主張を通すため、独自に学者を起用しようとしても、結局は各方面との折衝・調整・実務に長けた財務省に頼らずには立ち行かない。

消費税引き上げの法制化は民主党時代の野田佳彦首相が政治生命を懸けて実現したという。あれ? 自民党じゃなかったのか……と、そら恐ろしくなった。自民党は消費税を上げても「だって民主党が法律で決めたんだから」と責任逃れの言い訳ができるわけだ。
どの政党が政権を取っても、変わらず財務省の思惑どおりだ。財務省最強。

内閣が強権な政治主導となってからは、財務省は内閣と与党の間に立って調整役となる。総括すると著者はそれが財務省の役割としているようだけど、それでいいのかとても疑問が残った。誰が首相になろうとも、財務省は財務省。事務次官になると名前が出てくるけれど、組織として「財務省は」という主体がある。そこで根拠となる経済理論はどうやって選択されているのだろう? 逆に財務省を洗脳しているのは誰なんだろう? 
たぶん、財政規律という強い信仰のもとに動いているのだろうけど、その信仰の強さで国民から搾り取ることばかり考えられてはたまらない。

いろいろな力関係や駆け引きがあって政府も与党も官僚も大変なんだな。ご苦労さまだと思うものの、そこに力のない国民のことを考える余地は全くなさそう。
経済活性化のために法人税を引き下げ、消費税は上げる。賃金引き上げを奨励するというけど、それで給料があがるのは大企業だけだし。たぶん、国民の生活は国の存続のため犠牲にすべしくらいに思っているんだろう。

置き去りにされる境遇の者としては、絶望感をおぼえる本であった。本書は足りない財源は消費税引き上げで賄うのが既定路線としている。軽減税率の話すらなく、あまりに能が無いように見えてしまう。

0
2025年06月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

雑誌か新聞の書評にて紹介されていましたので、手にとってみました。著者は日経新聞の編集委員で、財務省と政治の関わりを長年に亘って取材してきました。その大成が本書です。

官庁の中の官庁として、戦後55年体制の中で行政の中核的役割を果たしてきた大蔵省が、93年の自民党下野、バブル崩壊による金融危機、そして小選挙区制への移行に伴う内閣主導の政治体制への流れの中で、財務省と金融庁に分割されます。そして、官邸との調整や間合いの取り方が重要になって来ている現状を活写しています。

バブル後の税収の減少と高齢化による社会保障費の増大で、悪化する一方の国家財政の再建について、そして安倍内閣が推進するアベノミクスについて、普段見聞きするニュースや新聞記事とは違う長期的時間軸での見方が得られるのは、大変参考になります。終章にて、財務省が海外の投資家へのIR活動を強化し、日本の財政への理解を得る努力をしていることが印象に残りました。

0
2018年12月02日

「ビジネス・経済」ランキング