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Posted by ブクログ 2022年07月24日
55年体制の自民を序章に、非自民連立政権、橋本行革、小泉官邸、民主政権、安倍官邸など、それぞれの時代のおける政治と大蔵・財務省の関係が、ドキュメント的に描かれている。
登場者がどの視点からどのように財政や金融を動かそうとしたか、その流れの概略が掴める。財務省自体を細かく解説するものではなく、政治との...続きを読む関係を焦点にしてその考え方や行動原理を浮かび上がらせたもの。意図してかどうか、戦後後期の政治史としても面白い。
Posted by ブクログ 2018年10月14日
55年体制下の大蔵省から、省庁再編後の財務省に代わり、二度の政権交代を経て役割を転じた財務省の実際に迫ったもの。かつての、調整役・憎まれ役をしていた時代とは法的権限も変わり、求められる新たな役割を模索している財務省。ある意味、大蔵省優勢下の政治状況を撃つ崩すという政の悲願は達成されたものの、政も官も...続きを読むその後の新たな構造というか関係というか役割分担を見いだせずにいる現状。明日はどっちだ!?
そして、民主党政権時代について複数の新たな知見を得ることができたことは特機に値する。
一つ:小沢一郎が自民党幹事長だった時代は、ほっといても財政が健全化するタイミングだったので、『財源は言えば出てくる』は彼が本気で思っていた可能性。
二つ:民主党政権は自民党政権時代以上に財務官僚に依存していた(秘書官の面でも、政権運営の面でも)官僚との接触が、鳩山政権時の財務副大臣、菅直人政権時の財務相と財務官僚としか接触の無かった野田総理が、外務省や経産省も財務相と同じように『官僚の枠を越えた』政治的情報収集や根回しをやってくれているものと誤解したというのも、悲喜こもごもな話である…
Posted by ブクログ 2017年01月19日
大蔵省、財務省が、その時々の政権と、どのように関わってきたのかが、重要な改革(省庁再編)から時代を追って書かれています。かつては最強官庁と言われていたものの、政治主導の世論を背に受けた、首相による圧力に翻弄され、苦労する実態を詳細に知ることができることは大きかったと思います。必死になって勝ち取ったも...続きを読むのの、実は双方痛み分けという現実がこの世の中には多いのだということ、完璧には物事は決まっていかない、流動的なものであるということ。政治の世界もそうなのだと、その生々しさを読むことで知ることができました。税金をめぐる戦いはまだ続いているということもわかりました。
Posted by ブクログ 2016年04月27日
大蔵・財務省は「最強官庁」と呼ばれる/呼ばれていた。官房長官を名指して「彼に聞いても何もわかるはずがない」と言い切ったという話だから、確かに彼らはそれほどの権力を持っていたのかもしれない。
ではこの財政状況は、一体どうしたものだろう。もし財務省が本当に「最強」の力を持っていたのだとすれば、GDPの...続きを読む二倍もの借金を背負い込むはずがないではないか……。
という疑問に、当時の政治状況や、政治家や議員、官僚といったプレイヤーの動きを追いながら答えてくれるのがこの本。
ごくごく大雑把に要約すると、財務省は確かに調整能力で他の官庁や政治家よりも優位性を持っていたけれども、小選挙区制以降、相対的に力を弱めてきた、というのが実態。特に小泉/第二次安倍政権では、その力をコントロールしようとする姿勢が伺える(このあたり、メディア戦略とも重なる部分で、両政権はとても似ている)。
余談になるけれども、著者は新聞記者ということで、ニュー・ジャーナリズム的な手法が取られている。
Posted by ブクログ 2015年12月07日
本書は、「55年体制の爛熟期から安倍政権まで、大蔵・財務省と政治の綱引きを追い、それを平成の統治構造改革の潮流にも位置づけて実像を描き出す試み」であると著者は言う。確かに、財務省を軸とした主に1990年代以降の日本政治史としてよくできていると思う。著者はベテランの経済記者だけあって、取材の蓄積に裏付...続きを読むけられた重厚なドキュメンタリーになっている。
「最強官庁」と言われる財務省(大蔵省)だが、90年代以降、政治との関係では苦戦を強いられることが多かったことがよくわかる。大蔵省が最強官庁であるゆえんは、予算編成権というのもあるが、55年体制下の自民党との蜜月関係が大きかったのだと思われる。それが崩れるきっかけとなったのが、非自民連立政権時の自民党の大蔵省への遺恨であり、住専処理を嚆矢とする金融危機だったのである。
そして、財務省と政治との関係をはじめ、「政権交代と首相主導」をもたらす90年代以降の統治構造改革が日本政治に与えたインパクトがいかに大きかったのかということがよくわかった。
「建設国債は容認、赤字国債は回避」の大蔵省路線を揺さぶったのが加藤紘一だったということや、主税局は増税の難しさを知り抜くからこそ消費税増税に前のめりにはならなかったということ、民主党政権の閣僚が財務官僚を個人スタッフに求める傾向が強かったということなど、「へぇ」というような興味深いエピソードもを知ることができた。
Posted by ブクログ 2018年10月19日
55年体制末期の竹下による財務省コントロールは、財務省インテリジェンスを基礎に外交・皇室情報なども合わせて半年・1年先の政治日程を主体的に制御する手法であった。これにによって中長期の政局シナリオを描き、着地点から逆算して今打つべき手を熟考することができた。
本書は、竹下以降、平成になってからアベノミ...続きを読むクスに至る、政治と財務省の二重螺旋運動のような経緯を、日経記者としてウオッチし続けてきた清水がクロニクルとして解説したもの。
Posted by ブクログ 2018年12月02日
雑誌か新聞の書評にて紹介されていましたので、手にとってみました。著者は日経新聞の編集委員で、財務省と政治の関わりを長年に亘って取材してきました。その大成が本書です。
官庁の中の官庁として、戦後55年体制の中で行政の中核的役割を果たしてきた大蔵省が、93年の自民党下野、バブル崩壊による金融危機、そし...続きを読むて小選挙区制への移行に伴う内閣主導の政治体制への流れの中で、財務省と金融庁に分割されます。そして、官邸との調整や間合いの取り方が重要になって来ている現状を活写しています。
バブル後の税収の減少と高齢化による社会保障費の増大で、悪化する一方の国家財政の再建について、そして安倍内閣が推進するアベノミクスについて、普段見聞きするニュースや新聞記事とは違う長期的時間軸での見方が得られるのは、大変参考になります。終章にて、財務省が海外の投資家へのIR活動を強化し、日本の財政への理解を得る努力をしていることが印象に残りました。