あらすじ
人口減少が進み、働き手が減っていく日本。財政赤字は拡大の一途をたどり、地方は「消滅」の危機にある。もはや衰退は不可避ではないか――。そんな思い込みに対し、長く人口問題と格闘してきた経済学は「否」と答える。経済成長の鍵を握るのはイノベーションであり、日本が世界有数の長寿国であることこそチャンスなのだ。日本に蔓延する「人口減少ペシミズム(悲観論)」を排し、日本経済の本当の課題に迫る。週刊ダイヤモンドの2016年〈ベスト経済書〉第1位。
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Posted by ブクログ
解するに、日本に蔓延している「人口減少ペシミズム」とは、一つは国富の源泉たる労働人口の減少、もう一つは人口減少と同時進行する高齢化に伴って増大する社会保険料負担の2点に由来するのだと思います。
前者の「国富の源泉たる労働人口減少」が真実なら、後者の社会保険料負担増加は必然なので悲観するのも無理はないですが、本書では前者のテーマを歴史的・統計的に論駁します。
日本だけを見ても、人口と労働生産性が比例しないケースがたびたびあった。つまり両者は比例せず、別の要素が関わっていると解釈すべきである。とすれば、人口減少の中でも国富(本書ではGDPにフォーカス)を増進させることは可能であり、そうなれば社会保険料負担率も低減できる。
乱暴に要約すると本書の趣旨はそんなところでしょうか。
ただ、マクロにとらえれば人口減少の中でもGDPの伸長は図れても、ミクロに見た場合に問題はないのか、という点が若干気になりました。つまり格差拡大が進むのではないかという点が。
しかし論理構成は明快で、参考になる統計情報も豊富。大変勉強になる1冊でした。
本書の結びでは(上記の論理展開から)、企業は人口減少から将来を悲観して守りの経営を行うのではなく、積極的にイノベーションを起こしていくべき、と提言しています。
これは昨今のキャッシュ経営に対する苦言ではなく、またバブルの頃のように営業CFがマイナスなのに更に銀行から借金して投資せよ、と言ってるわけでもないと思います。
それは、「極端に守りの経営を行うのではなく、しかるべき研究開発を進め、前向きに経営すべきだ」という至極まっとうな提言だと私は受け止めました。