あらすじ
「百の物語には天然自然の生命力がみなぎっていて、読者の五感を楽しませるが、心の琴線にもふれる。一つとして退屈な話はない」(解説より)。物語文学の最高傑作の全訳決定版、完結編。
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Posted by ブクログ
上巻・中巻に続き、本巻が最後。8-10日にわたる30話を収録しています。
話の内容は相変わらずトンデモ話やエロ話なのですが、一番強烈だったのは第9日第10話。ピエトロ親父の妻を神父さんが魔法で雌馬に変えるお話。生々しくて粗筋を書くのも躊躇する笑。興味がある方は是非読んでみてください。
他方、第10日は「愛やその他のことについて、立派なことをした人の話」というテーマが掲げられます。ここではこれまでと趣向がやや異なり、理性・忠節・貞節・騎士道といった美徳・人徳が発揮されたエピソードが描かれます。
ですから、とりわけこの下巻を読み終えて感じたのは、人間の振れ幅の大きさ。邪悪にもなれれば気高く振舞えることこそ人間の特徴なのだなあとひとりごちた次第です。
かつてドイツの哲学者のマックス・シェーラーはこのような人間の可塑性を世界開放性Welt-offenheit (ドイツ語怪しいです) と表現しましたが、本デカメロンはそのような人間の特性をありありと表していると感じました。
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中世文学の金字塔たるデカメロンは後世への影響も大きく、『エプタメロン』(7日物語。ヴァロア朝フランソワ1世の姉が記す)や『カンタベリー物語』(英国版デカメロン)が模して著わされました。こうした作品も機会を見つけて読んでみたいと思います。