【感想・ネタバレ】反脆弱性[下]―――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方のレビュー

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Posted by ブクログ 2020年09月17日

非常に面白い。

反脆弱性、反脆さは耐久力や頑健さを超越する。衝撃を糧にする。

土地の反脆弱性について。著者の故郷であるベイルートは8回破壊され、8回再建したらしい。今回の爆発で、9回目ということか。

人間の反脆弱性について。心的外傷後成長。心的外傷後ストレス障害とは逆で、過去の出来事で心に傷を...続きを読む負った人々が、それまでの自分より強くなるという現象。

逆に、脆さについて。暇な人は時間を無駄にしてしまう、忙しい人はどんどん仕事をこなす。怠惰が人をダメにする。

システムが反脆ければ、事故やトラブルによってシステムは強くなる。飛行機事故によって、飛行機業界全体は同じ事故のリスクを減らすことができる。経済は巨大な一つのシステムになっているので、連鎖倒産などが起こる。つまり経済のシステムは反脆くない。

物事を決めるときに、いくつも理由があるときは、それをしないほうがいい。理由をいくつも挙げて自分を説得しようとしているからだ。これは人生において使えると感じた。

この本を読んで、多くの人が思うことを自分も思った。
これからは反脆く生きよう、と。
人はいくらでも強くなれる。その意思があれば。

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Posted by ブクログ 2020年07月19日

タイトルの反脆弱性というのは、脆弱性の英語「fragility(もろさ)」の対義語がないことから、著者が作り出した造語“Antifragility”の日本語訳。

あらゆる物事は、脆弱、頑健、反脆弱の3つに分けることができ、この本で最も大切とされているのは、この反脆弱性です。

反脆弱性と言われ、ぱ...続きを読むっと頭に浮かんだのは、心理学の「レジリエンス」でした。
また、先日読んだ「ネガティブケイパビリティ」も、「不確実性に耐え抜く力」と捉えれば、こちらに当てはまると思っていましたが、この本ではそれらは「頑健さ」というカテゴリーになります。

反脆弱性とは、簡単に言えば、「不確実性を糧にして成長すること」です。
これだけで考えれば、なんだレジリエンスと一緒ではないかと思うかもしれませんが、
反脆弱性は、「能動的に小さな失敗をすることで、成長していくこと」を言います。

人は快適性・利便性・効率性を求めて、リスクやストレスを避けている、と著者は説きます。
また、こうしてリスクを避け続けると、ブラックスワン(システムが一気に崩壊すること)にでくわし、大きな損失を生み出します。
(この箇所を読んで、この本がコロナウイルス関連本の中にあったことの意味がなんとなくわかりました。)

全体を通して読んでいて、この本が素晴らしいと思った点は、筆者が自分の主張と行動を合わせていることでした。

一見、普通なことのようにも思えますが、言っていることとやっていることが矛盾している人はかなり多くいます。

リスクを負うべきだと言いながら、自分だけオプションをもらいながら安全圏にいる人など、数えればきりがありませんが、著者が本の中でバッサバッサと力強い言葉で切り付けていく様は、痛快で、英語がもう少しできたら原本で読みたい、と思うほどでした。

文章に力がこもっていて、日本語訳にもそのエッセンスが見事に詰め込まれていて、文章の奥ゆかしさを改めて実感させられました。

大切なのは、著者の考えを知り、自分ならどうするべきかを導き出すことだと思います。

知識を得るだけでは、脆いと思います。行動に移し、身銭を切り、失敗を繰り返すことで経験は磨かれ、自分だけの経験則(ヒューリスティック)は作られていくのだと思います。

「反脆さ」という考えを知ることにとどめることなく、自らも「反脆弱性」を身につけていきたいですね。

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Posted by ブクログ 2020年06月20日

コロナ危機を受けて再読した。本当に素晴らしい本だと思う。ブラックスワンの頃から読んでいないと分からない部分も多いと思うが、この本に書いてあることは類を見ないクォリティと革新性だ。タレブはかなり昔から物事のオプション性の危険性と対処の仕方を様々な形で話している。冗長である事や細かな間違いを全体に反映す...続きを読むる事ができる事が非常に重要であること、合理的な手法や様々な仮定の上に成り立つエセ科学的な理論の危険性を繰り返し指摘し、脆弱ではない事とはどのような事かを説明する。その内容は圧倒的だと思う。パンデミック後の社会を考える上で非常に重要だと思う変わらないだろうと思いつつ、この本の偉大さに感じ入る。

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Posted by ブクログ 2019年11月10日

「まぐれ」「ブラックスワン」のタレブの本。

この人の本は久し振りに読んだけど相変わらずのキレキレ。文句なしにおもしろい。


反脆弱性の概念は一見分かりにくいのだが、

ながーい上下巻を通してイヤと言うほどエッセンスを語られるのでおぼろげながらも言いたいことは掴めてくる。


今まで教えられてきた...続きを読むリスクの観念とか、

投資の観念からは際立って異なるかんがえかたなので、

タレブの言っていることは頭では理解できるものの、

どこまで実践できるかというとなかなか難しい。

でも、今後本を読む際に、批判的な見方やタレブ的な見方をする事もすごく大事という観点をもてたのは良かったと思う。


ブラックスワンよりだいぶ難しい気がするので、

タレブファンにはオススメ。いきなりこれから読むと面食らうかな。

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Posted by ブクログ 2019年10月28日

上巻につづき、おすすめの本です。

七面鳥問題というものがあります。
七面鳥はかいがいしく世話をしてくれる飼い主からの愛を毎日感じて生きています。今まで毎日受けている世話という"データ"によると、今後もずっとこの幸せな生活が続くことが予測できる、と七面鳥は考えました。この幸せが終...続きを読むわりを告げる、という証拠はどこを探しても見つからないのですから。しかしクリスマスイブがやってくると、七面鳥は屠殺されて飼い主の食卓に並びましたとさ。

著者は、今までのデータを元にして今後を予測するのはとても困難であることの例として、この七面鳥問題を挙げています。"証拠がない"ことは、"ないことの証拠"ではないのです。
馬鹿馬鹿しいと思うかもしれませんが、実際多くの人はこの七面鳥と同じような間違いをおかしています、
例えば2008年頃の投資家達。彼らはこの成長が終わる"証拠はない"、として、今後もこの成長が続くと"予測"していました。しかしリーマンショックによってその成長は終わりを告げます。

この七面鳥の誤謬からわかるように、現実世界という極めて複雑なシステムにおいては、予測というのはほぼ無意味です。どんなにデータがあっても、この予測不可能性は原理的にかわりません。
上下巻を通して、著者はこのような世界でどう生きていくか、についての方針を与えます。

この下巻の付録にはグラフを用いたわかりやすい解説があり、本編でなんとなくの理解で終わっていたものも、数学的、視覚的な表現で理解を深められるようになっています。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2018年10月14日

とても示唆に富む本なのだけど、色々考えてしまって進みませんでした。でも、もう少し通して理解しないといけない内容でした。自分もモデルを作っていたからわかるけど、モデルは基本的に線形結合。特に一昔前の多変量解析は線形推定検定論以外の何物でもない。ただ、こうした推論で行くと、どうしてもテールの事象、すなわ...続きを読むち出現確率が小さくて、でも起こった時のエクスポージャーが大きなものは過小評価されてしまう。特に損失期待値などを出そうものなら、頻度の小ささでエクスポージャーの大きさを見失ってしまう。ただ、テール事象は思ったほど起こらないことではない。そして起こった時に関連性があって、連鎖的に起こる事象も無視できない。その時のエクスポージャーの大きさは推論の域を超えているかもしれない。それから、昔からあり淘汰されていないものが正しいという考え方。リスクを取っている奴が偉いという考え方。どれもこれまでの自分の思考と違うように思うけど妙に説得力がありました。この辺が消化しきれていないけど、とても気になった点。いずれまた整理します。

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Posted by ブクログ 2018年08月14日

セネカの非対称性の思想やマット・リドレー引用箇所の非線形性のメリットを捉える事ができれば不確実な現代社会でも十分生きていけるのかもしれないが実践することはそんなに簡単ではない事を注意すべきか。技術が科学よりも先に来るという捉え方には大いに納得できた。大変面白かった。

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Posted by ブクログ 2017年10月21日

本書で語られる基本的な概念については、前作「ブラック・スワン」とそこまで大きく変わるものではない。ただ、本書が前作と大きく異なっているのは、不確実性と倫理に関する問題である。

本書では、不確実性をうまく利用して、自らはダウンサイドのリスクを取らずにアップサイドの果実だけを手に入れるような存在が徹底...続きを読む的に否定される。その根底には、そうした存在が倫理的な観点から許されざるものである、という著者の強い意志がある。

腹を切って死ぬべきなのは誰か?そろそろ血が流されるべきなのかもしれない。自戒の念も込めて。

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Posted by ブクログ 2017年09月26日

『THE SINGULARITY IS NEAR』の著者レイ・カーツワイル氏のことを、タレブ氏は「対極にある」(要は「嫌い」)と言っているが、私は両者とも大好きで現代を象徴する思想家であり実践家だと思う。タレブ氏は連続性を断絶させる不確実性を「ブラック・スワン」という概念を以って説明してみせたが、本...続きを読む書ではさらに昇華し、「反脆弱性」という新語を用いて非線形におけるダウンサイドとアップサイドの非対称性を見事に解き明かす。

タレブ氏の発言はやや棘があり誤った認識も見受けられるが、無責任で言いっぱなしのエージェンシーたちへの痛烈な批判は痛快だ。ダウンサイドが限定的かつオプション性がありアップサイドが∞であることを見極められるリスクテイカ―こそ世界を変える者たちだ。『ブラック・スワン』がエポックメイキング的概念であったように、彼らの行動を讃え推奨する『反脆弱性』の理解は転換点をもたらしえるかもしれない。

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Posted by ブクログ 2023年05月11日

上巻に引き続き、伝えたい1つのメッセージが一貫していて面白い。おそらく下巻の結論部分がそのメッセージなので、なんなら結論だけ読んでも学びはあると思う。

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Posted by ブクログ 2021年12月25日

上巻に引き続き、タレブさんの過激な主張が続く。やや横道にそれ、官僚や専門家と言われる人々のポジショントークを批判する箇所が多いが、反脆弱性で説明できるところが面白い。「人々は確率や正しさではなく、脆さに基づいて意思決定をしているという切り口」「定義と説明を間違えないこと」「変化や多様性が大きくなりす...続きを読むぎてシステムに頼りすぎ、結果、分析も説明もできない」というのは、メガバンクのシステム障害などが典型例か。

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Posted by ブクログ 2021年01月01日

元旦早々読み終えました。だってね、テレビがあまりにも面白くないんで、本を読むくらいしかすることないですよ。

さて、本書ですが、ところどころ難解なところはありますが、そうでないところはすんなりと理解&納得できました。会社やその他で付き合っている人に、本書で表わされるような人がいたりするんで、該当する...続きを読むパートはその人を思い浮かべながら読んでみたりしてね。

あんまり、ガチガチに凝り固まって考えるのもよくないようですね。反脆いとは、強いとかの事ではないんですね。事柄に柔軟性をもって対応するというか、何と言うか。かといって、軟弱なわけでもないと。

複雑なこの時代、柔軟性をもって対応するのは必要なスキルですね。

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Posted by ブクログ 2020年04月12日

面白かった
著者のタレブには今後も注目して行きたい

最近も新しい本の日本語訳が出たらしいので読んでみたいと思った

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Posted by ブクログ 2020年02月24日

「ブラックスワン」の提唱者として有名なリスク工学の研究者であり、トレーダーや哲学者の顔も持つ著者が、社会や経済がリスクを予測して回避するよりも、むしろリスクを活用して強くなる「反脆弱性」を養うことの必要性を説いた啓発書。

過度な医療行為が免疫力低下による大病を招いたり、森林環境の人工的な管理が破壊...続きを読む的な山火事につながるのと同様、企業の経済活動や社会システムにおいても、「リスクは予測可能であり、回避すべきものである」という思い込みは、むしろ不確実性と複雑性の高い状況で、大規模な金融危機のような予測不能な事態(ブラックスワン)が発生した際にシステム全体の破綻を招く脆弱性を助長する。

著者は、リスクを予測しようと無駄な努力をするよりも、むしろ許容可能なリスクや失敗は学習の糧として積極的に取ると同時に、ブラックスワンの発生がプラスに作用するオプションを確保することで、単にリスクに対して頑健なのではなく、リスクを活用して更に強くなる「反脆さ」を身に着けるべきであり、それは目的論に基づく学術的な理論ではなく、実践的な経験値として試行錯誤を通じてのみ獲得できると主張し、今日の科学偏重の風潮に警鐘を鳴らす。

著者はまた、自らは”身銭を切る”、つまりリスクを負うことなく、ダウンサイドを他者に押し付けて無償で利得を得る学者や大企業を舌鋒鋭く批判しており、このような著者のエスタブリッシュメント層に対する極度に批判的な論調、少々ウィットの効き過ぎた冗長的な表現、それに耳慣れない「反脆弱性」というタイトルが本書を分かりにくくしている面は否めない。とはいえ、著者の主張自体は正論であり、トレーダーとしての実務経験に裏打ちされた実践的な哲学には耳を傾ける価値がある。社会・経済システムというマクロな視点とともに、リスクテイクという観点から読者自身の今後のキャリアや人生をも再考する機会になり得る良書。

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Posted by ブクログ 2020年02月16日

"すべてのものは変動性によって得または損をする。脆さとは、変動性や不確実性によって損をするものである。"

まさに千里眼。「反脆い」という独特の概念を用いて森羅万象の本質を捉え、より善く賢く生きる術を説く。また、民衆を踏み台にして反脆さを暴利の如く貪る人々を批判する言葉は痛烈。

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Posted by ブクログ 2018年07月01日

人は確率の大小ではなく脆さに基づいて決定を下している。言い換えれば、「正しい」「正しくない」ではなく、脆さに基づいて主に意思決定をしている。

ひと言でいえば犠牲だ。この「犠牲」という単語は「神聖」と関係がある。つまり、俗世とは切り離された聖なる世界に属する行為なのだ。

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Posted by ブクログ 2018年03月02日

相変わらず書き口が難しいものの、上巻より面白い。世間の常識に一石を投じている。エスタブリッシュメントに読ませたい。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2018年02月09日

教科書の"知識"には、ある次元が抜け落ちている。平均の概念と同じで、利得の隠れた非対称性が見落とされているのだ。世界の構造を研究したり、「正しい」か「正しくない」かを理解したりするのではなく、自分の行動のペイオフ(対価)に着目するという発想が、文化史の中からすっぽりと抜け落ちてし...続きを読むまっている。恐ろしいくらいに。いちばん大事なのは、ペイオフ(事象によって生じる利得や損失)であって、事象そのものではない。p42

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Posted by ブクログ 2018年01月13日

上巻より悪口が多いかな?ということで★4つ
結論の抽出内容が、この本のすべて。ただし、意味を理解し味わうためには、本を最初から最後まで読まなければならない。
「すべてのものは変動制によって得または損をする。脆さとは、変動制や不確実性によって損をするものである。」
さて、2018年のバブルへの対象方法...続きを読むはどうするべきか?暴落の確率を計算するよりも、暴落した場合の保険をかけておくことが重要。自分事で保険がかけれるか?デブのトニーになって、暴落しても大儲けするOPTIONを検討しよう!

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Posted by ブクログ 2023年12月16日

お喋りな友人はいるだろうか。纏まらない会話を文字数制限無視して喋り倒し、聞いてもいないのに説明口調で話し続ける。勝手に脱線する。ボールキープし続けて、パスも出さないしキャッチボールもしない。自分の足下にボールを落とし、自ら拾って話し続けるのだ。知識もひけらかしたいのだろう、連鎖反応で注釈まで添えてく...続きを読むる。そんな人と会話すると、相槌さえも自殺行為になるから、ただただその場を切り上げる作戦に集中する。文字通り、我々は、そうした存在に時間と寿命を奪われている。

本著は、そうした存在を本に閉じ込めたような仕立てだ。読書に体力がいる。その疲労感により、重みのある読書だという錯覚を味わう事も可能だが、多くは勘違いだ。論理的に、頭の整理をして話そうよ。いや、著者のスタイルを考え直してみる。ここで主張されているのは「反脆弱性」。…無秩序、非線形的、変動性の話だ。なるほど、規則性や体系を否定してきたわけだ。

イライラの一例を本著から示そう。
草食動物は毎日安定的に草を食む。肉食動物は、不定期に獲物を獲得する。だから、人間はタンパク質は断続的に食べる方が良いのだ、と確信したらしい。そうした観点からも断食は身体に良い。万事がこんな調子で、根拠が無さすぎる。それに対して、「自分に理解できないからといって不合理とは限らない」という名言まで登場する。後件肯定の誤謬のような言葉も出てくる。著者自身が、誤謬に取り憑かれている気がする。

しかし、こうした本にエンカウントした場合の対処法がある。会話と同じ。発話の単語から思い付きで横に逸れた論旨は斜め読みしても良くて、拾い読みしながら煩く感じたら畳んでしまう事だ。勿論、球数が多いので、これは勉強になるなという内容も多く、全てを否定するものではない。

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Posted by ブクログ 2022年08月27日

「なんでも強くしすぎると想定より強い外力に対しては無力。ある程度の弾力が必要だ。」とのメッセージ。
色々なエピソードを交えながら書かれているが長すぎると思う。

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