あらすじ
父の死因とは一体何だったのか? 食い違う医師・看護師の証言。真相を求め、息子はさまよう(「病院の中」)。多額の募金を得て渡米、心臓移植を受けた怠け者の男と支援者たちが巻き起こす悲喜劇(「他生門」)。芸術を深く愛するクリニック院長と偏屈なアーティストが出会ったとき(「極楽変」)。芥川龍之介の名短篇に触発された、前代未聞の医療エンタテインメント。黒いユーモアに河童も嗤う全七篇。
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Posted by ブクログ
芥川龍之介の作品に着想を得た短篇集。
読みやすく、また面白い。
軽い文体なのですっきりと読めます。
ブラックな表現もありますが、読後感はそれほど悪くない。
「薮の中」→「病院の中」
様々な石の説明が、素人の患者家族には矛盾して聞こえる、という供述が矛盾する「薮の中」のオマージュ。
「羅生門」→「他生門」
老婆が自身の行為を正当化したことで下人においはぎされるという「羅生門」より。心臓移植を受けた患者が「支える会」にふりまわされ、またそれを克服していく話。
「鼻」→「耳」
自分の鼻にコンプレックスを持つ僧侶の話より、自分の顔にコンプレックスを持つ女の話へ。美容整形を繰り返し、手を入れていない部分は耳だけに。その耳の形に惚れた小説家が現れて…
「蜘蛛の糸」→「クモの意図」
カンダタの話から、功徳を積むことに熱心になった看護婦の話。”クモのイト”は見えにくいがたしかにあるのだよ。
「地獄変」→「極楽変」
芸術に人生を賭けた画家が娘を見殺しにした話から、芸術を深く愛するクリニック院長と偏屈なアーティストが出合った話へ。
「芋粥」→「バナナ粥」
過ぎたるは及ばざるがごとし。その例えを描いた「芋粥」から。ケアマネージャーとある介護家族のふれあいの話。
「或阿呆の一生」→「或利口の一生」
医者の人生を描いた話。がん患者を数多く診た医者は“積極的治療”に意味を感じなくなる。そして自分ががんとなったときに…。
Posted by ブクログ
芥川龍之介の作品をもじったタイトルの短編集。どれも皮肉っぽい内容で「病院の中」「或利口の一生」あたりを読むと、病院で医療を受けることが怖くなってきました。
ただ、内容に分かりづらいところがあって、結末を読んでも「?」となった話がいくつかありました。まぁこれは自分の読解力に問題があるのでしょうが…