あらすじ
劉邦が前漢の初代皇帝となった四年後、新たに都となった長安の長楽宮に、小青胡と張釈という二人の幼い少年が宦官として仕えた。貧しい生まれの二人は宮殿での悲惨な生活のなか、強く惹かれ合う。しかし劉邦の死後、後継者争いが激化するなか、劉邦の息子・劉盈に仕える小青胡と、権力の虜となった張釈の関係は変化していく――注目の新人が描く、歴史小説の新境地。
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Posted by ブクログ
この作品の中で、私が一番いけ好かない人物は小青胡だ。
(因みに張釈は実在の人物。張釈が建陵侯を廃されたのは、封じられて僅か五ヶ月後のことだ。呂氏滅亡直後失脚か?)
小青胡の奴は結局、まるまる一冊かけて、自分の浮気、心変わりの正当化を図ろうとしただけではないのか。その原因の多くを張釈一人に押し付けて。
そんなだからまるで彼の言葉からは恵帝の評価を上げる説得性がない。最初に恵帝の再評価を聞き手にお願いしているが、彼の語る恵帝に全く魅力が感じられない。要は帝王の器に非ずという印象しか残らなかった。だからこの話の聞き手(最後に正体が明かされる)が自身の著作に採用しなかったような気がした。
そして小青胡自身にも魅力がない。だから張釈が何故彼を生涯愛して止まなかったのか、分からなかった。
小青胡の恵帝への想いにも、疑問が残る。如何にも殉死を望んでいる風に言いながら、実行はしない。世の中自死して殉じる人は多いのに。
結局、後宮に残りたくなかったから、園郎になったんじゃないの?
張釈の下に配属されるかも知れないし、改めて後宮の生き残り戦争に勝ち抜く才覚は無さそうだから。これまで恵帝の庇護の下、宦官としては楽な立場にいたから、後ろ盾の無いこの先が不安だろう。
ならばそんな苦労はせずとも衣食住に困らない園郎は魅力的だ。自由が無いのは後宮も同じ。だったら墓守の方がお気楽だ。そのお陰か100歳まで生きている。張釈などは30歳までしか耐えられなかったのに。
結局、最後には自分の非を幾ばくか認めたような事を言っているが、張釈の想いとはズレている。彼は自身にとって、とても都合の良い夢を見ているだけだ。
小青胡は一見誰にでも好かれるいい子だが、見えない所で無意識とは言え無神経で狡い。自分は少なくとも張釈よりは、まともな人間だと思い込んでいる。契兄弟の約を結びながら、兄らしい役割は一つも果たさなかった癖に、傲慢な事だ。側にいる肉親にすら愛された事の無い、張釈への配慮が足りないと感じた。ことの当時は二人とも幼すぎたとは思う。しかし、晩年になってもこれでは・・・張釈が余りにも憐れ。やり直したいような事を言っているが、小青胡は今も昔も、相手の中の自分にとって都合のいい面しか好きにならないらしい。相手の光だけ受け入れるという。だから張釈の光と闇をひっくるめて、全てを引き受ける覚悟が今ならあるというものではないようだ。
結局自分の為だけなんだな、彼の後悔は。そんなレベルと感じられた。このような小青胡の言葉は信用出来ない。彼は手前勝手な人間に過ぎない。
Posted by ブクログ
統一してからの劉邦を宦官の視点から見る
という設定に心ひかれました
呂稚の行う非道な行為については事前知識があったので
覚悟はしていたのですがやはり物語の中に組み込まれると
厳しいものがありました
どこかで歯止めがきかなかったのかなと・・・
そして宦官視点ですが自分は宦官は性と切り離された存在と
思っていたので虐待の内容や性の相手をするということに
衝撃をうけました
老爺になった主人公が過去を話していく、というスタイルだったので
暗い描写も奥底まで沈まずに一定の所で踏みとどまっていて
それがすごく良かったと思います
全体に漂う妖しい香りが鼻奥に漂ってきそうな作品でした
同じ作者さんでやはり似た設定の別のお話を読んでみたいと思いました