あらすじ
誰もが納得できるような考えに到達するための、力強いさまざまな思考法に満ちている哲学。その思考法のエッセンスを、初学者にも理解できるよう伝える。
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Posted by ブクログ
めちゃめちゃ面白くて、勉強になった本。
私は昔から哲学に対して「揚げ足取りの屁理屈」だと感じていた。
ただ年齢を経て、哲学への興味は出てきたもののなかなか哲学って掴みきれないな、とも感じていた。
そこで、本書に書いてあった
・哲学とはなにか
・宗教や科学との違い
・哲学的思考の出発点やゴール
・帰謬法の説明と対処方法
などが今の自分の哲学への解像度をぐっと上げてくれた。
現代の科学的思考や宗教とも違う、概念の本質を考え、相互理解を深め、共通了解を見つけるための思考や議論の大切さを深く感じた。
SNSを中心とした物事を、単純に黒か白かで判断したり、単なる合理性だけで判断する人が増えてきた現代だからこそ、この本を読んで哲学的な思考も広まってほしいと願う。
Posted by ブクログ
宗教、哲学、科学。現代にも強力な方向性を導く思想/学問であることは違いないが、近年特に「哲学」のあり方や価値が見直されている。
高度経済成長期の盛りに沸騰した資本主義社会の中では、ある種の「もたらされる必然的な事実」の海をありきたりに航海すればどうにかなる社会であったのかもしれない(当時の時代背景を蔑んでいる訳では決してないことを留意いただきたい)。
しかし現代はVUCAとも呼ばれるように「多様性」「不景気」「格差」などの極めて複雑かつ困難性が高い状況において、絶対的真実なるものは全く無く、先々の未来は各個人の意志に委ねられることが多いと思うのである。
その純然たる個々人の意志にあらゆるものを委ねるのであれば、「哲学」を軸とした思考は到底避けられるものでは無く、人類の内的問題を思考と対話によって解決・答えを導き出すことが現代社会に求められているのであろう。
「哲学」と聞いて多くの人々は小難しく、関わりを薄くしたい学問のように捉えられるかもしれないが、要は「あなたはこの問いに対してどのように考え、どのような結論を出しますか」というシンプルかつ本質的な問いを正面から突き続けている学問なのである。
すなわち、前提となる「問い」の質と、問いに対して誠実かつ深淵なるまでに至る「思考」、及び共通了解を導く「対話」という思考の交換作業によって成り立つのだが、哲学が勃興したギリシャ時代から現代に至るまで、知の巨人達が真理を求め続けて連綿と「問い」を繋いできた歴史がある。
現時点での結論を導き出し、それを世に新たな問いとして投げかけることで批評の海に晒す。さまざまな視点からの本質的な問いに曝され続け、そこに現時点での答えを更に出し続ける態度こそが複雑性が増す現代を生きる現代人の在るべき態度であると思うのだが、
一度出した答えに対しても、歴史的時間軸、文化軸、価値観軸、信条軸などの多様な角度での視点や認知から問い直すことも必要であろう。そうすれば「一般化のワナ」に陥ることもない。
一方で世の中には絶対的な真理など存在しない、もしくは人間が到底到達し得ないという事実も理解しておかなければならない(これは過去の知の巨人達が導き出した答えである)。
絶対的な真理がないのであれば、我々は主体的に意志を持ってこの世界に「意味」を付与していくしかないだろう。
この世界は二項対立で結論を導けるほど単純ではない。だからこそ問いて問いて問い続け、現時点での最良の答えを出し、それを対話によって互いが腹落ちする、いわゆる「共通了解」を真摯なまでに追求することがこれからの私たちに求められるのである。そうすれば二項対立を超えた未来に皆で到達できると思うのだ。
Posted by ブクログ
話し合いの目的を持ち(共通理解)、どのようにしていけば良くなるのか、どちらが正しいとか、どちらが上かということを決めるのではなく、相手の立場や思考を踏まえながら話し合えるようにしていきたい。
Posted by ブクログ
「徳の騎士」正義を笠にきて、他者を傷つける。独善的な人間。この言葉、自分もそういう事があったな、と感じる。自分が何もかも知ってる、正義の味方、といった感じの人間だったな、そう反省させてくれる。今は違うと思いたい。
Posted by ブクログ
本書を買った目的としては、身近な人との不毛な議論を少しでも減らして、建設的な話し合いをしたいという思いで買いました。
私自身、ほんの少しは哲学書を読んで来た自負があったのですが、読んでみると自分が考えていた事と同じで、そうそうと共感して思うところと、なるほどと思うところが、うまく整理されていって頭の中がチューニングされた気分になりました。
奥さんにも読んで貰おうかと思います。
哲学を学ぶ第一歩
哲学っておもしろそう。でも、難しそう。そんな人にオススメの一冊です。哲学というものにどう迫っていけばいいのか、背伸びし過ぎず、でも的を射ながら考えられます。様々な哲学の大家についても分かりやすく引用されており、その後の一冊も選んでみたくなる、まさに考えることを促してくれる良書です!
Posted by ブクログ
非常に面白かった。
現代はテクノロジーの発展で豊かになったと思っていたが、本当は哲学によって発展した世界なのだと分かった
対立する意見はそれぞれの経験から導き出された物で、どちらが正しいかは本来なら決めることはできない。
「なぜ人を殺してはいけないのか」の節もとても理解しやすい
死刑は容認されて、戦争も容認されて正当防衛も勘案され得る
でも人を殺してはいけないのは長い争いの末に掴み取った、「自由の相互承認」という原理を元にしたルールであるということ。
この誰もが納得できる"共通了解"を見出そうとすることが哲学なのだということが分かった。
世の中色々な問題があるが、長い哲学の歴史の中ではもうすでに答えが出ているようで、
それを知らずに生きてきたのは少なからず損をしているなと、改めて哲学に興味を持った。
著者もあとがきで「長年の修行を通して得たものを、こんな短い本に凝縮してしまっていいものなのか、と惜しい気持ちになった」と言っているように、哲学のことが分かりやすく凝縮された入門書、
Posted by ブクログ
苫野先生の本。はじめて読んだ。実生活において哲学の考え方がどう役立つかを記している。面白いです。過去の哲学者の考え方に触れながらも、その偉大な哲学者たちの考え方のコアエキスを集結させているのが大変勉強になる。今まで自分で考えてきた「哲学(笑)」が恥ずかしくなるくらいのわかりやすさ。
何故殺してはならないのか、なぜ死刑は廃止されるべきなのかについて、完結かつわかりやすい説明で非常に好感が持てる。哲学の本は往々にして哲学者の歴史に着目しがちだがこの本は哲学で、本質観取し共通了解を目指す点に重きをおいている。ここが自分には新鮮だった。
Posted by ブクログ
「俺の考えは正しい。
お前は絶対に間違っている!」の乗り越え方。
みんなが「そうだ」と言える本質を見出していくということ。
なるほどーーー!と思うことばかりです。
哲学教育や哲学イベントに関わる者として、
苫野さんと、
故・池田晶子さんに負うところは大きいです。
●理性がある限り、絶対的に正しいことはわからない(!)
●自分の体験を普遍化しない。
●自分の「信念」に気をつける!
●「偽の問題」に騙されないこと。
●相手を言い負かすための方法:例外を出す。
→でもむなしい。
→共通了解しながら第三の道を建設的に志向していく対話。
●絶対に疑えない原理
デカルト「我思う故に我あり」
フッサール「感覚」
ハイデガー、竹田青嗣「欲望」
●信念の段階から欲望の段階で議論することで、共通了解が見えて来る。
●事実はそのまま「すべし」に導くことはできない。
●命令の思想でなく、条件解明の思想
●哲学は、みんな分からなくてみんないい、ではなくて、
共通了解を生み出すこと。
●程よい傷と、憧れが恋を生み出す。
●世界、宇宙の根源を説明しようとする試み
宗教、神話
→神話が集団によって食い違うので、哲学が生まれる
→物事を客観的に実験観察し法則を見出す科学が生まれる
→あの世や神を探究しようとしていた形而上学は、
「理性では扱えない」ということで終わる。
→科学で扱えない、自我や自由や意志や意味が哲学のテーマに。
→真理は分からないが、本質、共通了解、自由の相互承認は可能。
世の中、あまりにも異なるそれぞれの持論や世界観や宇宙観が入り乱れて、自己の立場を真理と主張していて、
そんな私も例に漏れず、やはりこの世界の中で特定の立場から世界を見て、自己を主張していることに気がつきます。
私自身、子どもの頃からそうした多様な価値観の中で育ってきて、
かつ、一つのコミュニティのみに留まることが苦手でした。
また現在も、一つのコミュニティだけで完結することなく、
多様な価値観の方とうまく関係が築けていると思うのですが、
哲学というツールによる「本質看取」のクセがあるためでしょう。
哲学対話はとても楽しい。
自分自身に対して「気付き」が生まれていく瞬間が嬉しい。
Posted by ブクログ
読み終わると本書に書いてある「哲学は役に立つ」という言葉がよく理解できた。
哲学はなんのためにあるのか、どういうふうに自分の人生に取り入れればいいのかがわかりやすく書かれている。哲学に親しみが持てる一冊。
Posted by ブクログ
絶対的な答えのない哲学を敬遠し、あまり面白くないと思ってきたが、哲学的思考は魅力的かつ人間にとって非常に重要なものであるということを認識することができた。誰かと議論をするとき、建設的ではない議論になってしまうことが度々あった。そのようなとき、「なぜ自分の考えを理解してくれないのか」「自分の意見の方が圧倒的に正しい」などという考えを持ってしまっていた。しかし、自分の主張を全面的に押し出すのではなく、自分の主張の根底にある欲望と、相手の主張の根底にある欲望それぞれをすり合わせることが必要であるということに気づかされた。本書にあるような考え方、議論の仕方を実践していき、より良い第3の意見を創り上げられる能力が、この社会では求められているのではないかと感じた。この本をきっかけに哲学に対する興味が増したため、さらに多くの哲学関連の書籍を読み漁ってみたい。
Posted by ブクログ
超お勧めです!
哲学対話、本質観取をやってみたいと思いました。
答えの出ないもやもや、そもそも答えはあるのは、私たちが知ることが出来るのか。
なぜ人を殺してはならないのか、生きる意味とは何だろうか、人生に関するものから社会の難問までを解き明かす、哲学の考え方を知ることができます。
一般化の罠、問い方のマジックなどにも注意が必要です。
サンデル教授の白熱教室に意味が見いだせなかった理由も、本書を読むとよく分かり、整理され、納得しました。
「あったのいっていることは絶対に正しいといえるの? それって絶対なの?ぜぇぇぇったいなの?」
と。
こういわれれば、どんな人でも「い、いや、絶対かっていわれたら、ちょっと......」と口ごもらざるを得ない。
晴れて、僕たちは相手をいい負かすことができる。少なくとも、相手を否定しつづけているかぎり、議論に負けることはない。
でも、これはやっぱりあまりにむなしい論法というほかない。 ー 77ページ
Posted by ブクログ
*哲学とは、さまざまな物事の
「本質」を捉える営みのこと*
・本質とは、「共通了解」のこと
・哲学は人間的な「意味の世界」を扱うもの
・科学は「事実の世界」を観察や実験によって明らかにするもので、哲学があって初めて成り立つもの
・宗教は絶対的な正解のない問いに「神話」で答えを出すもの
*哲学の最大の意義は
「思考の始発点」を敷くこと*
◇思考の始発点とは?
・わたしたちの「確信」や「信憑」であり、その原点は「欲望」
・欲望は、確かめ可能な最後の地点
◇なぜ思考の始発点を敷くことが必要か?
・誰もが納得できる思考の始発点を定めることができれば、その土台の上により実践的な力強い思考を積み上げていくことができるから
・逆に、思考の始発点を間違ってしまったら、それに続く思考は全部的を外してしまう
・たしかな思考の始発点を定めることは、哲学の命
◇どうやって思考の始発点を敷くか?(抜粋)
・「一般化のワナ」に注意する
→自分の信念や経験をただ相手にぶつけるのではなく、「ひとりよがりかもしれない」と自覚した上で相手に投げかける
・「問い方のマジック」に引っかからない
→「あちらか、こちらか」ではなく、問いの立て方を変えて「あちらも、こちらも」どちらも納得できる「第3のアイディア」を考え合うこと
・「事実」から「〜すべし」を導かない
→事実から当為は直接導けない。事実を自分の都合の良いように利用しない。それぞれの欲望を互いに投げかけ合い、その上でみんなが納得できる「べし」を見出し合おう
・「命令」の思想ではなく、「条件解明」の思考をする
→「困っている人に手をさしのべよ」ではなく、「どうすれば人を助けたいと思うようになるのだろう?」と考えること
もーーー!!すばらしかった!!
哲学?なにそれ?たのしいの?
っていうレベルだったけど(ひどい笑)
めちゃくちゃわかりやすくて超超面白かった!!
宗教や科学との違いについても理解できてよかった。
哲学って、すべての根源というか、
何をするにも必要なことというか…
すごく身近なものに感じた。
哲学って大事!すばらしい〜!!
この本に出会えたこと、
こんなすばらしい本を書いてくれた、
著者の苫野一徳さんに感謝です!\(^^)/
Posted by ブクログ
講師として話を聞いた方の本を読んでみる
哲学的な考え方やモノの捉え方の基礎が分かる
複雑でスピードが早い今だからこそ思考の軸を持つべきだと感じた
Posted by ブクログ
確信や信憑のような意識作用を疑うことはできない。
→思考の出発点
確信や信憑は自分たちの欲望に応じて抱かれる。
→欲望相関性の原理
お互いの欲望・関心を明らかにした上で、納得できる共通了解を見出すことが哲学的思考である。
Posted by ブクログ
若年層を対象に書かれた本だと思うけど、知識のない自分にはちょうど良かった。職業柄「事実」を大事にしがちだけれど、そこから「当為を導かない」って本当に大事だなと、特にコロナ禍を経たのもあって、思った。
Posted by ブクログ
「苫野一徳」月間、2冊目
最初の一冊にはこれがベストか?!
哲学的思考の奥義(一般化のワナ・問い方のマジック・超ディベート・欲望相関性の原理)に加えて、哲学対話も本質観取の実例はとても興味深かった
とはいえ、やっぱりこれは実際にやってみないと実感が伴ってこないかも
最近は学校でも探求の授業等での取り組みをよく目にする
高校生でこういう時間が持てたら面白いだろうなぁ〜
Posted by ブクログ
Voicyでの放送で著者の話に惹かれて読んでみた。放送でお話されてことが、そのまま書かれている。
改めて文字として見ることで話をより深く理解できたように感じる。
本書の中で特に印象に残ったのが第10の信念の対立をどう乗り越えるかだ。この世に絶対の正解がないことを肝に銘じつつ、お互いに分かり合えるはずだと信じて共通了解を作り上げていく。この姿勢を大事にしていきたいと強く感じた。
Posted by ブクログ
「事実」を理解しようとする科学に対し、哲学の意義は「意味」を理解しようとすることである。
「意味」には絶対的な真理は存在しないため、さまざまな信念や認識の中から「共通了解」を見出していくことが哲学のプロセスとなる。この信念や認識は、人の欲望や関心から生じるものであり、この欲望こそが哲学の原理となる。
とても平易な文章で読みやすく、哲学へのとっかかりとしてとてもいい本だと思った。その分、筆者の主張への反論や再反論については十分に検討されていないように感じるので、もっと哲学の本を読みたいと思った。
Posted by ブクログ
経験を一般化してはいけない
問い方のマジックに気をつけろ(どちらかが正しいなんでことはほぼない)
帰謬法は思考をストップさせてしまう⇒共通了解を導き出すべし
事実からすべし(当為)を導くべからず
命令の思想ではなく条件解明の思想(人に思いやりをもて、ではなくどうしたら人は思いやりをもてるのか)
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哲学とは何か。
ただ、哲学者達が出してきた答えを知識として並べるのではなく、そこからさらに思考を展開させていく。社会や時代によって答えは変わっていくかもしれない。絶対的な真理なんてない。だから、自分達で考えて答えを出していく。
その思考の奥義を惜しみなく伝えてくれている。繰り返し、繰り返し、自身に相手に問う。一般化のワナにはまっていないか、問い方のマジックに引っかかっていないか。信念とは、欲望とは。検索すれば簡単に答えのようなものを見つけられる時代。だからこそ、自分で考えることを大事に思う。
Posted by ブクログ
二項対立という安易な立ち回り方がはびこる今、自分と、そして自分と違う考えの人と第三の答えを探すことの大切さを学んだ。考える機会が失われる昨今、今一度まわりにはびこる二項対立に自分が甘えていないか考え、自分の確信を言葉にすることを習慣化しようと思う。
Posted by ブクログ
哲学
と思って構えてしまったが
後半は読む手が止まらず
ふむふむと
一気に読み終えた
世界は常に僕たちの欲望の色を帯びている
欲望を知ることで自分と折り合う
不幸だと生きづらいと思うのは
欲望とのギャップによる感情
確かにその通りかもしれない
哲学について考える
価値観や感受性を刺激するものに触れることで
自分を見つめること
自分の内面に気づくこと
これもまた哲学の一歩
じゃあ
わたしは
時々哲学できているのかしら?
モノごとを
すべし!という命令思想で捉えるのではなくて
条件解明思考
どのような条件が、どのような条件で
そんな風に捉え考えられた方が
世界は広がって見えるかもね
Posted by ブクログ
哲学とは本質を捉えるためのものであり、そのための思考法を書いている書籍。
・一般化のワナに気をつけること
・問い方のマジックに引っ掛からず共通了解を得られるような問い方に問いを直すこと
・帰謬法とその対策
・欲望相関性の原理
・生きづらさを乗り越えるには
→①能力を上げる ②欲望を下げる ③欲望を変えるのどれか
→欲望がないなら ①価値観や感受性を刺激するものにたくさん触れて(映画、小説、音楽)心が動く瞬間を知る ②キッチン掃除メソッド
・哲学対話の意義 ①自分自身をよく知る ②他者了解も深まる ③価値観・感受性の交換対話
哲学の考え方の基礎的なことが列挙されているため、勉強になる。
Posted by ブクログ
哲学と宗教、科学との違いが理解できた。
人間はどうしても自分の経験でしか物事を語る事が出来ないから、自分の経験は自分の経験に過ぎないという事を自覚しておくべきだと思った。
哲学書だと思って読み始めたけど、哲学の思考方法を学ぶっていう感じで普段の実生活に哲学を生かせるんだということが面白かった。
Posted by ブクログ
自分の経験を過度に一般化する=一般化のワナ。有識者会議でも多い。自分の経験にすぎないことを自覚する。=議論を建設的にする方法。
問い方のマジック=二元論的な問い、どこからが砂山でどこからが砂粒か、人間は平等か不平等か、など。
帰謬法=相手を言い負かすためだけの議論。相手の主張の矛盾や例外を攻撃する方法。
超ディベート=共通了解指向型対話=勝ち負けでなく共通の了解事項を探る。
意味とは欲望のこと。欲望の前には遡れない。何が欲望を抱かせるのか、はわからない。しかし、意味を見いだすのは、ある欲望があるから。
欲望に基づく信念が生まれる。信念=欲望の別名。信念ではなく欲望で話したらどうか。理解し合えるのではないか。=超ディベートの方法。
欲望を知れば自分と折り合える。
不幸とは欲望と能力のギャップである。
欲望を変えることができる=人間の希望。
欲望がわからない場合=自分が何をしたいのか、何を欲望しているのかわからない。その場合は、1,価値観、感受性を刺激するものにたくさん触れる、2、掃除する=何でもいいから行動する、ことでほんのわずかな意味を知る。
~すべし、=当為、という。事実から当為は導かれない。事実からわかるのは解釈だけ。
客観的な事実に依拠して当為を導くのは、事実を都合よく要望の材料にしているだけ。
人を殺してはいけない、という当為は、自由の相互承認というルールを編み出したからこその当為。人間だから、という事実からではない。遺族のことを考えたら死刑を認めるべき、も成り立たない。
思考実験は問い方のマジック、であることが多い。中間の答えを探す。
Posted by ブクログ
場づくりやファシリテーションの方法論について述べた文献は時々目に入るけれど、その場を設ける意味からしっかりと書き始めてくれているところに好感を持ちました。
シンプルな言葉は目指すものじゃなくて、複数人に共通する要素になるように削ぎ落としていった結果の1つ、といった方が個人的にはしっくりくるような。
Posted by ブクログ
哲学というより、考え方について教えてくれる本(哲学はそもそも考え方についての学問であるが)
わかりやすく、論理的で有意義なことしか書かれてないと思う。とても良かった。
書いてあったことは大体こんな感じだった。
・私達の生きる世界に絶対的真理はなく解釈があるだけ。(あったとしてわからない)
・自身の体験を一般化して語ることの危険性。
・二元論は非常に誤解を招きやすく、本質的な問題解決には繋がらない事が多い。
・所謂思考実験は問いに作者の欲望(価値観)が隠されていることが多く、二元論で答えることができない問題も多い。その為、問い方を変えた方が良い事がある。
・あらゆる原説は帰謬法によって否定可能である。例えばカラスは黒いという言説も、人間が思う黒が必ずしも絶対的な黒ではないなどと反論できる。そもそも私という存在すら疑うことができる。→だからデカルトは我思う故に我ありをすべての基本として考え出した。
・事実と主張は別である。その2つは切り分けて考えなければならない
SNS上で揚げ足取りとしか言いようのない、論争以下の言い合いを毎日のようにしている現代人の私達が、改めて学ばなければいけないことが書いてあると思った。
後半に叙述される恋の本質についての章も非常に良かった。
恋とは自己のロマンの投影と、それへの陶酔である。自分が無意識的に(あるいは意識的に)積み上げてきたロマン(理想)を相手に投影して、それに陶酔するのだ。と作者は言う。恋をした時に自分はこの人がタイプだったんだ。この人に恋するために今まで好きなタイプがあったんだと思うような瞬間はこのせい。それはその人自身ではなく、理想が好きなだけとも解釈できるから、ある意味残酷だけど、確かにそのとおりだと思う。自分も、今まで、これみよがしに自分の異性のタイプを公表する人に対して同じ事を、つまり相手にではなく、その人に投影して映し出された自分の理想に恋しているだけではないか?という疑いを持っていたから、これは自分だけではなかったのだと安心できた。
もう一つは可能性について。ハリウッドスターやアニメキャラに憧れることはあっても恋することはないだろう。それは可能性が限りなく0に近いから。恋はそんな憧れを現実世界に見いだせた時に発生する。これもたしかに納得できる。
この章で、作者の情熱的な語りもあって、恋への憧れが加速した。
物事を考える時の方法を実践的な方法で学べた。いい本。