あらすじ
コンサルティングの世界の常識を覆した「プロセス・コンサルテーション」
、世界中の人々の職業観に多大な影響を与え続けている「キャリア・アンカー」
に続く新コンセプト。組織心理学、組織開発の第一人者エドガー・シャイン最新刊!
■自分ではなく、 相手が答えを見出す「問い方と聴き方」
押しつけではない、本当に人の役に立つ「支援学」の極意(『人を助けるとはどういうことか』)と
自分ばかり喋るのではなく、「謙虚に問いかける」コミュニケーションの技法(『問いかける技術』)を
コンサルティングや支援の現場で活かす、という視点で書かれた実践的な本です。
■なぜ、「謙虚なコンサルティング」が必要なのか?
今日の組織は、解決に必要な知識や技術が自明でない問題に直面し、
「答えを提供する」から、「答えを見出せるよう支援する」へとコンサルタントの役割も変化。
クライアントが自ら真の問題に気づき、いま最もやるべきことを見出す「本当の支援」を実現するには、
自分では答えを出せないことを自覚し、謙虚な姿勢を選び、謙虚に問いかけることが不可欠なのです。
■25の事例から学ぶ、成功するコンサルティングと失敗するコンサルティングの違い
大失敗に終わった著者のコンサル第1号案件、たった一言でCEOを開眼させた「最高の支援」ほか
著者50年にわたるコンサルティング事例が満載。GE、P&Gなど実際の企業や組織の事例も多数。
「事例(背景、当事者の発言)」と「学び(失敗のワケ、成功要因)」を通して、実践のコツがつかめます。
「コンサルティングに関する書籍のなかで、シャインの著書ほど専門家の役に立つものを、私は読んだことがない。
コンサルティング業界は今また、本書によって、ふたたび変化をもたらされるだろう。まさしく必読の書である」
オットー・シャーマー 『U理論』(英治出版)著者、マサチューセッツ工科大学上級講師
原題 Humble Consulting: How to Provide Real Help Faster
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
コンサル業界で働く私にとっては非常に有用な書籍であった。(もちろんコンサル業界でなくても有用かと思う)
過去コンサルとは、「クライアントの一段高い位置からクライアントの問題を診断し、課題を特定、課題の実行責任はない」というものであった。一方謙虚なコンサルとは、「クライアント自身が納得感のある解を自ら探っていけるよう支援」することであり、役割が変わりつつある。謙虚なコンサルになるには、レベル2の関係、すなわちクライアント自身の懸念を打ち明けられるような個人的な関係を初めから築くことが重要である。それには、なんとかして役に立ちたい、誠実な好奇心、思いやりのある姿勢を持つ必要がある。(とはいえ、馴れ合いやえこひいきを生むようなレベル3の親密な関係はビジネスには向かないことも言及されている)これにより謙虚なコンサル自らが解を導き出すのではなく、時にはクライアント側のアダプティブムーブに導きつつ、クライアントと協働していくのがコンサルには求められる。
高いフィーをもらっているコンサルだからこそ自ら価値を提供するという考えにシフトしがちであるが、クライアントをより一層高みに連れていくために、(コンサルよりも現場に詳しい)クライアントと協働していく姿勢が必要であることを改めて実感した。
Posted by ブクログ
コンサルタントは傲慢な押し付けではなく、クライアントと同じ目線に立ってケアを行いつつ謙虚に改善に取り組むべき、とする。
…当たり前では。
Posted by ブクログ
クライアントを支援するとはどういうことか気づかされた。
コンサルタント(自分) の手助けによって、クライアント(相手) が、 (1)問題の複雑さと厄介さを理解し、 (2)その場しのぎの対応や反射的な行動をやめて、 (3)本当の現実に対処すること が、本当の支援なのである。
支援者としての私自身の経験から言えば、重要なのはおそらく、どんな問題に悩まされているかをクライアントが隠さず話せること、それも遠慮なく安心して話せることだった。
新たなスキルのうち最も重要なのは、これまでとは違うタイプの「聴き方」である。このスキルの向上をテーマとする書籍やプログラムを検討してわかったのだが、新たなタイプのコンサルティングを行うには、一般に推奨されるのとは別の聴き方を身につける必要があり、さらに言えばその聴き方は対応の仕方を知るためにも欠かせなかった。また、二種類の共感力を伸ばす必要もあった。一つは、クライアントが話している現況や問題について、好奇心をもって傾聴する共感力である。もう一つは、クライアントが状況や問題を説明しているまさにそのときに、クライアントを本当に悩ませている問題が何かを見きわめようとして、好奇心をもって傾聴する共感力である。
概念に関する質問 基本的に「なぜ」と問う。この問いによって、クライアントは、コンサルタントに話した内容のさまざまな面について考察・検討し、原因について考えをめぐらせるようになる。 感情に関する質問 クライアントが話した出来事に関して、「それについてどのように感じたか」を基本に、質問をする。 行動に関する質問 クライアントの話にあったいくつかの分岐点について、「どんな行動をとったか」を基本に、質問をする。
謙虚なコンサルティングが最も役に立つのは、クライアントの「思考プロセス」を、次の一つ以上の方法によって再構築する場合である。(一)問題をもう一度、説明する。(二)クライアント自身の役割が何かを再考する。(三)コンサルタントがすべきことは何かを再考する。これらのプロセス領域でこそ、たとえ初めて会話をしているときであっても、驚くほどすぐに支援できる場合がある。再構築によって、自分が今何を知っているかということに、クライアントが気づくからである。コンサルタントは、クライアントが最初に考えた、あるいは提案したことを上回る、コンサルタントを活用するメリットを示して支援するのだ。
中心にあるのは常に、クライアントがどんなことを懸念しているのか、本当に欲しいものは何か、どんな問題に取り組む必要があるか、という問いに対する答えの見つけ方だ。
アダプティブ」と呼ぶことによって強調しているのは、それが「問題」に対する解決策ではなく、状況を改善したり、次のムーヴへつながるより診断的なデータを引き出したりすることを目的とした行動だということである。「ムーヴ」と呼ぶことによって伝えたいのは、それが壮大な計画でも大規模な介入でもなく、状況を改善するためのちょっとした取り組みだということである。
組織という生き物がいよいよ複雑さを増し、今起きているあらゆるものごとがスピードアップしている現実を考えると、これぞアダプティブ・ムーヴだと思うのは、即興劇である。計画と仕組み、法則、型があれば安心はできるが、結局のところは役に立たないかもしれない。むしろ、率直に話をして、たしかな人間関係を築き、力を合わせて即興で行動を生み出すほうが、本当の支援をすばやく行ううえで効果が高いのである。
すべての項目に共通しているのは、それらが、役に立ちたいという積極的な気持ちと、好奇心と、思いやりから生まれるものであることだ。そして、その根本には、尊重され大切にされたいと願うクライアントを前にしてなお、クライアントが直面している状況の複雑さと厄介さを前にしてなお、変わることのない謙虚な姿勢がある。これまでと、どんな点が全く違うのだろう。それは、 個人的な関係になる 必要があることと、プロセス全体の最大の原動力として 好奇心 を重視していることである。
Posted by ブクログ
真に問題を解決するには、コンサルタントは問題に対する解決策を提示することではなく、クライアント自身が実行可能なように動いてあげること(アダプティブムーブ)が重要であると説いている。
途中エピソードが多く流し読みしてしまったが、コンサルティングだけでなくあらゆる場面で使える話で示唆に富んでいると思う。
次回作は謙虚なリーダーシップというのも頷ける。
Posted by ブクログ
従来とは異なるコンサルティング手法について語る本。日本の大企業向けコンサルティングには当てはまらないことも多いと感じた。組織戦略やPMOをテーマとする場合には納得感があるかもしれない。
内容が凄く目新しいわけでもなく、綺麗に体系だっているわけでもないが、実際のケースが多く書かれていて興味深い。困ったときにヒントを探してぱらぱらめくると良さそう。
==内容まとめ==
「謙虚なコンサルティング」とは、クライアントが①問題の複雑さと厄介さを理解し、②その場しのぎの対応や反射的な行動をやめて、③本当の現実に対処すること、を支援すること。コンサルタントは答えを出すのではなく手助けをする。
コーチングや傾聴のような手法。
聞き方には三種類ある。
①自己中心的に聞く
・自分の知識や経験、スキルと照らし合わせて支援方法を探しながら聞く
・クライアントの本当に言いたいことが聞けない可能性があるので、良くない
②内容に共感しながら聞く
・問題の要素にフォーカスして聞く
・「従業員エンゲージメント」が本当に心配だ
③人に共感しながら聞く
・クライアントの感情にフォーカスして聞く
・従業員エンゲージメントが「本当に心配だ」
質問の種類
①謙虚な問いかけ
・支援者が答えを知らず、クライアントが自由に答えることができる
・基本的な情報を得るために、ここから始める
②診断的な問いかけ
・支援者は一定の考えを持ち、対話を始める
・概念:「なぜ」×過去/現在/未来
・感情:「どのように感じたか」×同上
・行動:「どんな行動をとったか」×同上
③循環的な質問/プロセスへのフォーカス
・その依頼はどんな結果を招く可能性があるか
・目的は?/集まった情報をどうするのか?/長期的な展望は?
④示唆的な問いかけ
・提案やアイデアを質問の形でソフトに伝える
・早すぎると信頼を損ねるため、タイミングが重要
・信頼関係ができるまでは、示唆的な問いかけを用意して待つべき
⑤プロセス指向の問いかけ
・次の3つのうち少なくとも1つを行う
- クライアントの問題分析の焦点を変える
- クライアントの支援して欲しい事柄を変える
- 今この場でのクライアントとの人間関係を確認する「私は役に立っていますか」
支援の場では、顧客と仕事の域(レベル1)を越えた個人的な話のできる信頼関係(レベル2)を築くことが有効。
そのために「謙虚な問いかけ」を行う。
しかし、そこにはリスクもあり、そもそもレベル2の関係が不要なこともある。
顧客の目的は当然尊重すべきだが、そのためのプロセスは間違っていることが多い。
そのプロセスのオーダーを変えるには、レベル2の関係が必要。
==考えたいこと==
「誰かに支援やサービスを頼むとき、その人を信頼できるかどうか、その人が本当のことを言っているかどうかを、どのような方法で判断するか」
「どんな種類の会話ができれば相手を信頼できると思えるようになるか」