【感想・ネタバレ】決断の本質 ― プロセス志向の意思決定マネジメントのレビュー

あらすじ

成功の鍵は「結論」よりも「正しいプロセス」
なぜ、判断を誤るのか。なぜ、決めたことが実行できないのか。真に重要なのは「結論」ではなく「プロセス」だ。ケネディの失敗、エベレスト遭難事件、コロンビア号の爆発事故など多種多様な事例をもとに「成功する意思決定」の条件を探求。人間性の本質に迫る、画期的な組織行動論・リーダーシップ論。

重要な決断が下された後で、どうにも腑に落ちない思いを抱いたことがないだろうか。「どうして、あの時、あんなバカな決断をしたのだろう?」と。
なぜ、判断を誤ったのか。なぜ、決めたことが実行されないのか。
ビジネスの様々な局面で人が直面する、迷いや不安、組織の壁、錯綜する情報、議論の迷走……。世界の不確実性を前に、それでも必死に「答え」を見出そうとする努力は、しかし、必ずしも報われるとは限らない。
真に重要なのは、意思決定の「結論」ではなく「プロセス」なのである。
ケネディの誤算、エベレスト登山隊の悲劇、ジャック・ウェルチの改革、コロンビア号の惨事、ノルマンディー上陸作戦……。ビジネスだけでなく、多種多様な分野の事例研究によって著者が到達したのは、人間性の本質に迫る、透徹した洞察である。本書で示される「成功する意思決定プロセス」の条件と、「意思決定の4C」をはじめとする実践的なガイドラインは、リーダーやマネジャーは勿論、組織に関わるすべての人に多大な示唆をもたらすに違いない。
いわゆる意思決定論やリーダーシップ論を超えた、画期的な人間行動論である。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

マネジメント関連本としてお勧め頂いたので読んでみました。著者はマイケル・A・ロベルト氏。ハーバードビジネススクールの教授。初版が2006年、私が手にしたのもそれ。

感想。
すごい良書。初めてのリーダーとか向きではなく、ある程度上のポジションの方向けだと思う。

備忘録。
・リーダーは自分の意思決定の有効性を判断するのに結果を待つ必要はない。結果を待つのではなく、決定に至るプロセスを緻密に検討すべき。結果はいつ判明するかわからないが、意思決定プロセスはリアルタイムで評価できる。複数の選択肢を用意したか、前提条件を明確にしたか、それらを慎重に検証したか、反対意見は出ていたか、実行責任者から高いコミットメントと共通理解を得ることができて決定に至ったか。

・リーダーは建設的な意見の対立を助成すると同時に、決定事項を効果的に実行させるためのコンセンサスを築かなければならない。コンセスサスとは全員一致でもなく広範囲にわたる合意でもなくて良い、意思決定に関与する人たちの間に存在する高度のコミットメントと共通理解。

・優秀なリーダーは「決定する方法を決定する」。質の高い意思決定プロセスに周到な準備を行う。具体的には、討議に誰を参加されるか、どのような雰囲気を作るか、参加者相互のコミュニケーションをどのようにするか、討議プロセスにおいて自身がどのような形でどの程度まで影響を及ぼすか、など。

・経営者は、ともすれば数千年前にモーゼが学んだ教訓を忘れがちだ。本当に難しい仕事は、十戒を書き記し伝えることではなく、十戒を実行させることだ。

・多くのリーダーが意思決定とその実行に失敗するのは、問題が生じた時に「正しい解決策」の発見に気を取られてしまい、一歩下がって意思決定のためにとるべき「正しいプロセス」を定めようとしないことが原因。

・神話①意思決定は最高責任者が行なっている。→実際はマネージャークラスの間で交渉や利害調整されることによって行われている。

・神話②意思決定は知能の行使。→実際は、社会的、情緒的、政治的プロセスの複合体。

・異質性の高いグループでは認識が対立する確率が高く、コンセンサスに達するこたが困難になる。でも多様性は必要。バランスが大事。または少しずつ多様性を高めていくとか。

・リーダーはグループ討議の初めの段階では、自分の好ましいと思う解決策を明らかにすべきではない。暫定的に意見を述べる場合は、反対意見を歓迎することや自分の意見を修正する意思を強調しておく必要がある。

・ジャック・ウェルチは、戦略会議が「くだらない見せ物」になっていることに我慢ならなくなる。ことを荒立てることなく、正面から議論がなされず、秘密裏に処理される。

・組織構造が複雑になると、率直なコミュニケーションがしにくくなる。組織が単純だと情報が円滑に流れる。組織内での自分の役割が不明確だと、率直に意見したり、反対意見を述べるのが難しくなる。

・リーダーは反対意見が自分の手元にまで上がってくるのを待っててはいけない。探し求めにいけ。

・討議においての工夫。①基本ルールの設定(人の意見は注意深く聞け、歯に絹着せるな、事実に即した討議をしろ、社長が相手でも率直な意見を述べろ、等)。②メンバー構成、背景の設定、コミュニケーション、コントロールの4C。③敢えて対案を検討させる、反対意見を指示する側に立って検討させる、第三者の視点に立ったつもりで考えさせる。④シナリオ分析させる。例えば完全に失敗した場合はどうなるか、そこに至る道筋は何か、その確率はどうかなどを真剣に話し合う。

・枠組の再設定。反対意見を排斥するのではなく、それを討議への有益な貢献として取り扱う。「それは面白い。それでどうなるんだね。君が解決しようとしている問題のポイントを教えてくれないか」といっても枠をはめなおす。

・リーダーが意思決定プロセスで生じる対立の全てを解決するのば難しく、部下の能力を開発しなければならない。

・コンセンサスを形成するのに必要な「公正なプロセス」について。なにも人の意見を無理に変えてもらうまで必要ではない。全会一致は無理だと考えろ。プロセスが公正であれば、自分の意見が通らなかった人も満足感を得られる(そういう実証実験がある)。

・公正なプロセスの例。発言の機会や意見出しの機会を与える。なんらかの形で、採用した意見だけでなく採用しなかった意見も理由を付してフィードバックする。例えば、事業計画を一旦社内開示し、同時に折り込まなかった社内意見も理由を添えて開示する。そして反対意見を期限付きで許可する。

・発散と収束を繰り返す。収束時には例えば少しでも選択肢を消去して絞れていけるとGOOD。

・環境が変われば望ましいリーダーのタイプも変わる。

・危機が来ると間違ったリーダーシップを探しがち。答えを持ち、的確な意思決定ができ、力を備え、将来像を示してくれて、理解力がある人。要するに難しい問題を優しくさてくれる人。しかし本当に必要なのはそのような救い主ではなく、たとえ目の前と問題が生易しいものではなく、解決に痛みが伴い、新しい方法を学ばなければ解決できないものであっても、それに挑戦する意欲を掻き立てるようなリーダーである。

・経営者が行うべきことで重要なのは、正しい答えではなく、正しい質問だ。

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2024年10月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

決断の本質について書かれていた内容を説明する。
正しく、実行できる意思決定のプロセス設計と運用について記載された本。

意思決定プロセスとは?
1.メンバー構成:反対ができる人
(ア)専門知識の有無
(イ)決定を実行する場合のその人物の重要性
(ウ)信頼できる腹心
(エ)構成メンバーの多様性
2.コンテクスト
(ア)失敗のネーミングを変える
3.コミュニケーションルール:
4.コントロール:プロセスを守らせる

反対意見を必ず出させる。理由付きで
立場を変えて議論させる。
結論を出すのは最終的にはリーダーが決めることを最初に伝える

プロセスを決める
決定基準

結論

アイデアの衝突を促す4つの手法
ロールプレイ:相手の立場に立つ
未来シナリオ分析
概念のモデル?

通常の検討会、ワークショップのどちらでも討論ルールを事前に読み合わせする
サインをとっても良い
ルール違反を明確に指摘する

イエスの文化とノーの文化、おそらくを回避するには?

自分の意見を述べる、ほかの意見への反対、その理由を提示
水面下工作をあまりしない
取り上げなかった意見のその理由
最終意思決定に自分の意見がどう反映されたのかを検討
意思決定の理論的根拠を明示

コンセンサスとは、その決定プロセスに同意し、実行にコミットメントすること
これを議論の冒頭に示すこと


段階的に合意をとる:中間合意

プロセス視点の小さな成功
目的
各種前提条件
決定の仕方

結果視点の小さな成功
条件付きの合意
選択肢の消去
不測事態への対応策の明示

決断の後にその意思決定に疑問をさしはさむことを原則として許してはならない

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2024年02月23日

Posted by ブクログ

意思決定の質は、意思決定プロセスの設計と運用によって高められる。合意形成は単純なコンセンサスではなく、正しい方針にチームがコミットして成果をあげることであり、そのためにプロセスとして必要な観点がわかりやすく網羅されている。発散と収束のサイクルを細かく早く回す、あたりはほんとにその通りだと思った

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2023年10月29日

Posted by ブクログ

これは「決断」というよりも「意思決定の本質」とも言うべき本である。

組織で意思決定を行い、有効な結果を出そうとする場合のとるべきプロセスについて書かれた本であり、リーダーの決断力を伸ばすものではない。

リーダーの重要な業務に「組織の意思決定と方向付け」というものはあるが、その確定におけるコンセンサスの取り方や組織間対立の解消方法に関する教科書、とも言うべき本である。

これからも重要な意思決定を行う際は何度も読み返すことになる本だと感じた。

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類著の「実行力 橋下徹著」などでも、対立意見はあらかじめできるだけ出させ、しかしながら、一度決定が下れば従ってもらう、といったマネジメントを行ってきたことが記載されているが、この点は上記の実践方法なのか、と思う。

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2020年09月13日

Posted by ブクログ

エベレストの悲劇、ケネディの誤算、GEやIBMの改革など、各界のリーダーたちはどのように意思決定したのか、どうして間違った決定をしてしまったのかについて、関係者の証言等をもとに分析したもの。必要なのは正しい結論ではなく正しいプロセス、建設的な意見の対立、高度のコミットメントおよびコンセンサスであるという。意思決定やリーダーシップに関わる誤解を解くとともに、意思決定者にとって必要な思考の基礎を学べる良書。

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2020年01月26日

Posted by ブクログ

決断する内容よりもいかに決定するプロセスが大事であるかを説明した本。将来,部下を持ったときに読み返したい.

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

人生とは決断の連続である。
しかしながら本当の意味で、あらゆることを自分自身の意志で、決断できているだろうか。
その結果について、すべて納得しているだろうか。
様々な意思決定の事例を挙げて、その場面場面でどういう決断がされたかの解説がされている。
NASAの硬直した組織の事例は、非常に興味深い。
なからず自分が過去に身を置いた組織でも、似たようなことがあったのを思い出してしまった。
エベレストの悲劇は、そのエピソードを聞いただけで、痛ましくなってしまう。
なぜ組織の中で、誰一人異論を唱えなかったのか。
なぜ間違った決断を止められなかったのか。
キューバ危機ではケネディ大統領が執った「悪魔の代弁者」という手段。
事例としては面白いが、会社の日常業務の中で実践できるかと言えば、どうも再現性は低いと思ってしまう。
いずれにしても、「決断」のクオリティは、参加する人たちの人間関係や、その組織文化によって、結果が大きく左右されてしまうということだ。
強烈なカリスマ性を持つリーダーが、あらゆる意思決定をしたとしても、決断したことが最良の結果になるとは限らない。
「『決断』は間違っていなかった。実行するメンバーが間違えたのだ」と異議を唱えるリーダーもいるかもしれない。
しかしながら本書を読むと、そんな単純な話ではないことが見えてくる。
本書の結論は、至ってシンプルだ。
「『決断』に最も重要な要素は『意思決定のプロセス』なのだ」ということ。
決断に至るまでの過程(プロセス)を間違えなければ、決定した後の実行も間違えずに進みやすいことを説いている。
これには確かに納得感がある。
私も50代後半となり、思い返せば様々な「決断」に関わってきた。
自らが決断して、成功したこともあれば、失敗したこともある。
他者の決断に巻き込まれて、得したこともあれば、損したこともある。
このように分類して考え直してみると、「プロセス」こそが重要なのは、全ての事例ではないとしても、当てはまることが多い気がする。
これまでの仕事人生を振り返ってみると、まさに決断の連続であったと痛感する。
一つ一つの過去の決断が積み重なって、今の自分を少しずつ作ってきたのだと思うと、今さらながら「もっと真剣に『決断のクオリティ』を上げること」に注力してもよかったのではないかと思ってしまう。
我々は「決断」という行為そのものを、軽視し過ぎているのかもしれない。
日々のビジネスの現場において、「決断」の中でも、あまりにも「結果」のみに囚われている。
プロジェクトが成功すれば、その決断が称賛される。
逆に失敗すれば、その判断ミスを厳しく問われてしまう。
しかし、本当に「結果」だけを見ればよいのか?
その決断がどのような「プロセス」を経て下されたか、その過程にこそ本質的な価値があるのではないか?
この問いこそが、最大の教訓だと思わせるところが、本書の奥深い部分だ。
私はバックオフィス部門でのキャリアが長いのだが、今でもトップダウンの文化が根強く残っているのを感じる。
メンバー層に知らせずに、すべて上層部だけで方針を決定することが日常的だ。
メンバー層は、決定事項に従って、粛々と実行するのであるが、これでは自ら考えて主体的に行動する力は育たない。
組織の階層上、そういう仕組みなのだから、しょうがないとも言えるが、全てではないとしても「もっと丁寧に現場を巻き込んでやればよかったのに」と感じる部分は、意外とある。
総じて、決断に至るプロセスが見えないために、実行部隊であるメンバーの腹落ちに繋がらないケースも多い。
受け身になってしまい、さらに腹落ちしてないのだから、実行に迷いが出てしまうのは当然である。
これら小さな迷いが徐々にプロジェクトを継続させることを難しくする。
こんなケースは日常茶飯事のために、慣れてしまったとも言えるが、とても健全だとは言えない。
もちろん、効率化を含めたコストの面でも、良くないことであるから、ここはもっと真剣に改善を考えなければならない。
最近は人事部門に身を置いているが、人事こそ意思決定プロセスが大事だと感じる仕事だ。
採用、配置、評価、育成。
これら全て、従業員一人ひとりのキャリア、ひいては人生に大きな影響を与える大きな決断だ。
だからこそ、最大限の客観性と公平性、そして透明性が常に求められてしまう。
明確な基準と誰もが納得できるプロセスに基づいて意思決定が行われなければ、従業員の信頼を得ることはできない。
現実的には綺麗ごとだけで回らないことも多いから、厳しいことも決定し実行しなければならない。
だからこそ複雑性は回避して、出来るだけシンプルで明解にいきたいところだ。
質の高い意思決定プロセスを、人事部門に限らずに組織内に根付かせていきたい。
それができれば、組織全体の学習能力も高まっていくと思う。
未来に向けてのより良い決断が、持続的な成長へと繋がっていくために。
例え、ある決断の結果が期待通りでなかったとしても、そのプロセスにおいて、考え得る限りの情報収集と多角的な分析、そして関係者間でのオープンで建設的な議論が尽くされていれば、そこから得られる「学び」は計り知れないと思う。
仮に失敗したとしても、その原因を特定し、組織の共有知として蓄積することで、同じ過ちを繰り返すリスクを減らすことはできるはずだ。
この「学習する組織」という概念は、変化のスピードがますます加速する現代においては、企業の競争優位性を左右する最も重要な要素の一つであると感じる。
むしろ、こういう組織にならなければ生き残れない、と言っても過言ではない。
しかしながら「言うは易く行うは難し」である。
長年染み付いた組織文化や、個人の行動様式を変えることは、簡単ではない。
特に日本企業においては、空気を読む文化や同調圧力が、自由闊達な議論を妨げ、意思決定の質を低下させる要因となることも少なくない。
さらに過去の成功体験に固執するあまり、新たな視点や異なる意見を受け入れづらい「権威主義」も、現実的に根強く残っている。
これらは、まさに本書が警鐘を鳴らす「意思決定の罠」そのものと言える。
この課題をどうやって克服するか。
真にプロセス志向の組織文化を醸成するためには、何が必要なのか。
結局は、自ら主体的に情報を集め、分析し、意見を表明し、他者と議論することができればよい。
あらゆる階層を「意思決定のプロセスに主体的に関わらせる」という仕組みづくりが何よりも重要だ。
仕組みができれば、それを通じて、個人の思考力、判断力、コミュニケーション能力は磨かれていくはず。
メンバー層にとっては、上司の指示を待つのではなく、自ら考え行動する自律性を養う絶好の機会となるだろう。
そして、そのような経験を積んだ人材こそが、将来の組織を担うリーダーへと成長していく。
人材育成という観点からも、「意思決定プロセスの仕組みづくり」は急務であると言える。
組織全体の意思決定能力をいかに高めるか。
一つひとつの決断は、未来を形作る創造的な行為であるべきだ。
真摯に向き合って、覚悟を持ってやるしかないのだと、改めて感じた。
(2025/3/20木)

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2025年06月01日

Posted by ブクログ

読書会課題本。何らかの組織運営やプロジェクトリーダーをされているなら学ぶところが多いと思う。組織運営などをする時には、必ず「会議(=ミーティング)」が行われるが、そこである種の決定を下すのに、どういう段取りを組むのが良いか?というのをテーマとしている。過去の成功・失敗事例も豊富で、それなりの説得力もあったように思う。

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2022年03月17日

Posted by ブクログ

ビジネス書。先行研究と自身の調査から、良質のプロセスによる意思決定は成果を上げる可能性が高いとし、そのために必要な行動を説く。失敗事例から提示される、意思決定に対する組織構造や文化の影響は納得感が高い。

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2015年05月06日

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