あらすじ
アメリカ、フィリピン、ヨーロッパ……。社会の分断を煽動する政治家が、至る所で熱い支持を集めている。エリートとインテリを敵視し、人民の側に立つと称するその「思想」は、なぜ世界を席巻するに至ったのか。ポピュリズムは民主主義にへばりついた「ヤヌスの裏の顔」であり、簡単に駆逐することはできない。橋下徹氏と対決した経験を持つ社会学者が、起源にまでさかのぼってその本質をえぐり出す。
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Posted by ブクログ
・国民全体が政治に関心を持ち正しい知識を持たないと、耳障りの良い言葉を撒き散らすポピュリズムは台頭してくる。
・国民全体が政治リテラシーを上げるなんてことは不可能であるからポピュリズムの出現はこの不安多き社会では必然だった。炎上商法、迷惑系、強メンタル信者なども同じ原理だろうと思った。
・まずは自分に知識をつけることを最優先とし、その後自分への不利益を最小限にするもしくはそこで得できる方法論を考えていかなければならないと危機感を持たせてくれる一冊。
以下覚書
・綺麗事ではなく本音むき出しでやり返すことがポピュリズムの本質であり、それが実現されるかどうかはもはや重要ではない。
・弱者が自分の評価を下げずに強者へダメージを与える手段。復讐。
・多くの人々の本音が汚れてゆく時、ポピュリズムが台頭する。
・国会議員という名前であろうと、意思決定が一部の者で行われる限り貴族政である。
・選挙による貴族政を支持したルソーは民主主義批判の始祖とみなさせる。
・間接民主主義は国会議員であるエリートとその他の人民という対立構造を生み出し、その中で人民側に立つことがポピュリズムの基本構造だ。
・民主主義のエリートvs人民という構造からポピュリズムが発生したとすると、ポピュリズムを否定することは民主主義を否定することになる。なぜならポピュリズムはもっと人民の声を拾えという訴えであるから、それを否定することは支配的な関係を肯定することになるからである。
・ロマン主義とは古典主義への対立として生まれた思想で、それまでの理性偏重、合理主義に対して感受性や主観に重きをおいた運動で恋愛賛美、民族意識の高揚、中世への憧憬といった特徴を持つ。産業革命の反動でもある。欧米におけるポピュリズム型の政治活動は、大なり小なりロマン主義の影響を受けている。とりわけ、いわゆる反エリート主義の中に、その波紋を見ることができる。
・ポピュリストは、必然的に独裁を志向せざるを得ない。政策が空虚で主張が一貫しない以上、特定の人物を投票の目印にせざるを得ないからである。当然のことながら、その人物には、多くの人々を惹きつけるだけの象徴性が必要となる。その際の最も一般的な手法が、人物攻撃になる。人民対人民の敵という二分法を設定し自分だけが人民側にいるメシアであり、批判者は改革の妨害者だと喧伝する。かくして、多くの人々が確かに改革は必要だといった形で丸め込まれてしまう。
・人民の敵を叩くという救世主的な演出は代議制の間接民主主義を非難することによってしか存在ない。その一方で、自らも選挙に立候補し、民衆煽動によって多くの票を集める。ここで自体は少しばかり錯綜する。ポピュリストたちは、間接民主制放棄しながら、間接民主制を利用して伸ばしているからである。
・対立する政党がぶつかりながらも妥協案を探すことができるのが民主主義であるがポピュリズムは人民と人民の敵という構図であるから妥協による共同意思はあり得ない。つまりポピュリズムは民主主義の破壊である。
・市民革命によってブルジョワジーが誕生すると、富裕層の市民は経済活動の自由と私的所有の自由を最優先し低負担低福祉の小さな政府を求めた。この市民革命によって王政を倒した状態を維持しようとするのが右派と言われる所謂保守派である。一方小さな政府を求める運動別に、富裕層ではない庶民層が自由放任より平等を強く要求する、つまり富の再分配や福祉的改革を求める動きが現れるこれが左派。ただし、伝統が何かによって保守するものが変わるので注意が必要。たとえば宗教国家では保守は伝統的な宗教の教えを守ることになる。
・ポピュリズム勢力に対する批判は自ら敵役を買って出る事態となる。代議制民主主義の中では国民側が変わらなければならない。
・ポピュリズムは大衆に迎合する態度ではなく、人心を荒廃させる煽動だ。