あらすじ
第二次世界大戦中、ナチ占領下のフランスでイギリス特殊作戦執行部員の若い女性がスパイとして捕虜になった。彼女は親衛隊大尉に、尋問をやめる代わりに、イギリスに関する情報を手記にするよう強制され、インクと紙、そして二週間を与えられる。その手記には、親友である補助航空部隊の女性飛行士マディの戦場の日々が、まるで小説のように綴られていた。彼女はなぜ物語風の手記を書いたのか? さまざまな謎がちりばめられた第一部の手記。驚愕の真実が判明する第二部の手記。そして慟哭の結末。最後の最後まで読者を翻弄する圧倒的な物語!
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Posted by ブクログ
第二次世界大戦を舞台に二人の少女の友情と成長と愛の物語が2部構成で展開する。
1部あっての2部でのマディの行動の切実さ、そして2部を読んで新たに嚙みしめるクイーニーの深い愛と経略が浮かび上がってくる。
二人の少女の成長物語であってほしかったが戦争がそれを阻む。拷問シーンなどの場面になるたび、戦争の持つ計り知れない闇を思ってゾッとした。
Posted by ブクログ
とても哀しい友情小説である。
この本はミステリーとして紹介されることが多いようだ。確かに謎に満ちた第1部の手記を第2部の手記で伏線回収していく手法は、ミステリー小説として一級品だとも思う。
しかし、ミステリーの醍醐味である「謎が解明してすっきり」とはいかないのである。謎の解明は哀しさにつながり、二人の主人公の友情は美しいのに、その再開は悲劇なのである。
あとがきによると、出版された際は、ヤングアダルトだったらしいが、この小説をティーンエイジ対象にするという辺りが、反戦に対する断固たる姿勢にうつる。
戦争は悲劇、武力や暴力による争いは絶対にアカンのだ、ということ。
人間は、ここまで優しく温かい反面、ここまで冷徹に残酷になれるんだということ。
連合国だから正義、ナチスだから悪人…と単純に割り切れるものではなく、どこに所属していても人間は二面性をもち、正義のためだと言い訳をもてば、どんなひどいこともしてしまいがちだということ。肝に銘じておこう。
正義の名のもとに鉄槌をふるうより、嘘でもエエ人間を演じようとする偽善者の方に、俺はなろうと思う。