あらすじ
不貞を疑われて妻の座を追われ、独り住むことになった日本橋の芽吹長屋で、おえんはふとしたことから男女の縁を取り持つことになる。嫁(い)き遅れた一人娘と絵の道をあきらめた男、ひどく毛深い侍と若い娘、老いらくの恋。遠慮のない長屋のつきあいにもなじむ頃、おえんの耳に息子の心配な噂が入ってくる……。人びとの悲しみと幸せを描く時代小説。『結び屋おえん 糸を手繰れば』改題。
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Posted by ブクログ
志川節子の市井人情モノ。
ビターさが甘みを引き立てるように、主人公の境遇が人情味を引き立てる類の話は、匙加減がむつかしいと思うのだが、本作収録の作品はその加減が絶妙。エエバランス感覚してるわ。
宇江佐真理が書いていてもおかしくない、王道と言えば王道の市井人情モノ。ワンパターンではなく、基本を踏襲しているので安心して読めるのだ。
心情を比喩する情景描写も上手いし、セリフの小気味良さもあり、登場人物の個性もたっていて(主人公の前夫のイヤなヤツっぷりときたら)…さすが志川節子、小説巧者なのである。