あらすじ
『絶対音感』『星新一』の著者が選んだ次なるテーマは、〈心の病〉だった――。河合隼雄の箱庭療法を試み、中井久夫から絵画療法を受け、自らもカウンセリングを学んだ。心の治療のあり方に迫り、セラピストとクライエントの関係性を読み解く。そして五年間の取材ののち、〈私〉の心もまた、病を抱えていることに気づき……。現代を生きるすべての人に響く、傑作ドキュメンタリー。文庫版特別書き下ろし「回復の先に道をつくる」を収録!
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Posted by ブクログ
DSMを黒船到来とは、うまく名付けたなあと思う。
精神医学、心理学の、時代ごとの推移を本当に深く、でも分かりやすく概説してくれています。
現代の精神医学の抱える問題も、セラピストとクライエントの両面から描き出しており、その理解が深いがためだろうが、安易に批判的なスタンスはとっていない。とはいえ、ここに見ることのできる世界は、薄ら寒いと言わざるを得ない。
中井久夫氏の著作を読みたくなりました。
Posted by ブクログ
取材を深める前に筆者はカウンセリングを胡散臭く思っており、なぜ胡散臭く感じるのかについて書かれた部分は確かに……と苦笑いしながら読んだ。しかし筆者は取材を進めながらどんどん箱庭療法などの世界にのめり込んでいき、自分もまた病んでいたことに気づく。取材の仕方も、ただ話を聞くだけではなく、療法を実際に受けたり、自分がカウンセラー役になったり、時間と労力をかけて沢山勉強しておりすごいなと思った。
ロジャーズの心理学や箱庭などが日本にどのようにして入ってきてどう広まったのか、歴史が紐解かれていく様はとても興味深かった。
回復には悲しみが伴うということ。
言葉=因果律にとらわれたものであるが、因果関係のないものを語ることが必要であること。
近年は悩めない病が増加していること。
……など後半が特に面白かった。
中井久夫とのやりとりの逐語録、中井さんの人柄がありありと浮かぶ。河合隼雄についてのエピソードもたくさん。その他、様々な心理療法家や患者のエピソードが随所にちりばめられており、その一人一人の人生が深く描かれていて読みごたえがある。
箱庭療法や風景構成法などが実際にどのように行われているか、など、座学で学んできた心理学が具体化されて、個人的にとても勉強になった。