【感想・ネタバレ】ヒトラーに抵抗した人々 反ナチ市民の勇気とは何かのレビュー

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Posted by ブクログ


凄惨な反ナチ弾圧の実態が、実例を挙げながら克明に綴られているのに圧倒されたが、最終章(五章)の占領政策や東西冷戦といった体制側の都合によって反ナチ抵抗運動を無視、無かったものと扱ったくだり、その後のレーマー裁判についての記述には、「大衆心理」が抱える普遍的な、時代を超えた課題が抽出されているように感じた。

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2024年02月13日

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ドイツ近代史について良書。研究としての読み応えと、市民的勇気に心揺さぶられる稀有な読書体験ができた。昨今ヒトラーの人間性を好意的に捉える言説が巷で聞かれるが、この本を読み、どれだけの人がナチスドイツの犠牲になったのか、未来ある大学生が処刑されるような国のトップを肯定的に解釈する恐ろしさがどれほどのものなのか考えて欲しいと感じた。また時代は違えど西洋史を専攻した人間として、キリスト教的価値観倫理観とヨーロッパという点でも興味深かった。
ヒトラーが国民から大きな支持を得ていた中で、見つかればほぼ確実に処刑されることを理解しながら、抵抗した人々の姿を本書から感じ、自分がそのようなことができるだろうか、そのとき自分は命を賭してまでも母国祖国の本当の美しさを求めて自分の倫理観のもと行動できるだろうかと自問自答した。今の私ではできない。わたしはその自分の弱さを忘れないようにしたい。
私にできるのは、そのような究極の行動に出なくて良い豊かで幸福で正しい国づくりの一端を担うことだ。
私は仕事で中学生と関わることがあるから、ぜひ読んでほしいと思ったが、中学生には少し難しいかもしれない(高校で世界史を履修した後くらいなら理解しながら読めるかな?)。

できることなら、過去に私が紹介したアンネの日記に興味を持ち勉強してくれた彼女に紹介したい。

2021年5月

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2021年05月30日

Posted by ブクログ

最初から最後まで読み応えのある内容だった。
反ナチ市民を中心にした時系列の章立てのおかげで、市民側が望んでヒトラーを求めたこと、なぜ望んだのかという背景的な社会問題も明瞭に説明されている。
ヒトラー内閣成立後、より激しくなる暴力、略奪経済、消耗戦。
密告が常態化しているなか、個人レベルの消極的な反ナチ活動はあり、慎重に活動の輪を広げてネットワークを成してユダヤ人をかくまい逃がそうとしたり、理想の未来「もうひとつのドイツ」に着目して燃える市民がいたりする。
第五章での、レーマー裁判の裁判長バウワーの論告には、言葉の持つ「智」の力を感じた。
最後にまとめられていた年表は、関連情報がまとめられていてわかりやすかった。

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2021年01月25日

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ナチスやヒトラーの犯罪性を見抜き、戦後構想の先見の明の高さ、行動する自己犠牲精神の気高さや高貴さに胸が打たれた。良書です。おすすめ

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2018年01月17日

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ヒトラーの圧制時代に、勇気を持って抵抗し続けた多くの人たちと、クライザゥサークルや白バラ運動、ローテ・カペレ、教会、等の考え方の異なる複数の団体があったことに初めて気付かされた。彼らの、祖国ドイツを愛して危険を顧みない気高い行動に心をうたれた。また一方では、ヒトラーのナチが小市民的なドイツ国民に圧倒的に支持されていたことも驚きだった。人間社会はいつでも、我欲に流される人々と、人としての尊厳を守り続ける人がいることを再認識させてくれた。人としてどう生きるかを考えさせる本だと思う。

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2016年05月25日

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良心に基づき命を賭して反ナチ行動を取った市民たち。彼らは戦後一転評価を得たわけでなく,長らく同胞から裏切り者呼ばわりされ,報われることはなかった。よく考えるともっともな流れではあるけれど,この事実はかなりショッキングだ。反ナチという点で彼らと同じ立場であった占領軍も,占領政策の都合上,反ナチ抵抗運動については故意に黙殺した。力をもつものと力をもたないものの差,といってもいかにも酷な話だし,勝者が敗者である全ドイツ人にドイツの犯罪の責任をかぶせることで,逆に個々のナチ同調者の責任を稀薄化してしまう結果となっている。
この本で紹介されているように,有名な白バラ事件と7月20日事件のほかにも数々の無名の市民がユダヤ人救援や体制打倒を目指す反ナチ抵抗運動に身を投じ,多くの刑死者を出している。戦前から戦中にかけてドイツ国民の大半は,ナチ支配体制から現実の利益を得ており,ユダヤ人虐殺などの事実に目を向けようとはしなかった。奨励される密告も反ナチ運動拡散の妨げとなった。そのような絶望的な状況の中,いくつものグループが存続していたというのはそれだけでも凄いことだ。
結局ヒトラー打倒は実ることなく外からの暴力により第三帝国は崩潰。それは多くの反ナチ市民が,ジレンマを感じつつも望んだ,唯一の現実的な解決だった。そんな彼らの胸のうちを思うと何とも言えない気持ちがする。再評価の機運が高まっているというのは良いことなんだろうな。

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2016年01月23日

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戦時中の反ナチ運動は非常にも危険だったにもかかわらず、それに立ち向かった人々は少なくなかった。戦後も裏切り者扱いされることがあったり、苦労は続いていた。

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2022年02月28日

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●ドイツ人はなぜナチスを受け入れたのか

現代にも共通する社会政策があったのだな。失業問題、公共事業、格安ツアー旅行の推奨、オリンピック開催…

芸能人がすぐ炎上したり、他人をむやみに攻撃する今の日本も危ういと思っちゃう

●戦時中のドイツにいた反ナチの人々
戦後彼らの復権に時間がかかった理由は、ドイツ人全てを一括りにして悪と断定したい欧米と、ドイツ上層部に残ったナチ残党、それから戦時中ナチスの非人道的政策に無関心を装った大衆だった…

良い学びだった

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2020年10月25日

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"機会があったら、いつでも人には親切にしなさい。助けたり与えたりする必要のある人たちにそうすることが、人生でいちばん大事なことです" 他人にどう見られるかではなく、自分が何をすべきか

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2019年06月04日

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第2次大戦中のドイツ国内でナチに抵抗した人々についてまとめられた、有益な一冊。ユダヤ人を匿ったり逃した人々、反ナチ活動を行なった人々の様子が余すところなく網羅されている。それ故当時う人物や団体名も多く、できれば年表だけでなく各グループ名と判明している参加者ごとにまとめた図でもあるとありがたかったかも。第2次大戦後これらの活動が語られなかったのは、当事者があえて声高に言わなかったこともあるが、ナチ抵抗者たちが社会から裏切り者的な扱いを受けていたこと、戦後の占領国の政策の都合上多くのナチ関係者は国の中枢に戻り、抵抗活動の資料が破棄されてしまったことが大きいという事実に驚いた。ドイツ観が変わった。この2、3年ナチ追求者について映画化が続いていてこうした事情も描かれているが、より深く知ることができる一冊である。

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2017年02月02日

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意外だったのがヒトラーに抵抗した人々が戦後積極的に名乗り出たわけではなかったこと。あれだけ支持された政権であったわけだから名乗り出ることは即「売国奴」「第五列」の烙印を押されるわけで…。
「白バラ」など聞きかじった程度の話もまとまった分量が読めて良かった。

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2016年03月01日

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p.58 ドイツ全土に食料配給制が実施され、9月1日の開戦と同時に、灯火管制義務、防空義務、海外放送の傍聴禁止が支持された。

p.107 ドイツ政府は現在の教会、つまりキリスト教を廃棄しようとしています。ドイツ人は全て1つの教えだけを信じて、ドイツ、キリスト者(福音波野協会の家、ナチ党シンパである「帝国協会」に結集した一派)の信者になるべきだといいます。

p.176 いずれにしても、軍事的な敗北だけがナチズムからドイツと世界を救う前提になると信じました。同じドイツ人として当然、良心の葛藤がありましたが、このように確信したから、皆、自国の敗北を願ったのです。同胞達の精神的に大事なものがボロボロになり、法制度を破壊されたドイツを再建するために、その基盤を明確にしようと言う強烈な願いが、同志たちみんなを結集させたのです。こうして1940年夏に組織的な議論が始まりました。

p.181 ところが、ナチスの出現で自体は一変した。なち指導部にとって「キリスト教は自然のほうに反するもので、自然への抗議である」と規定された。ここに言う「自然の法」とは、制度のための弱肉強食、優勝劣敗と言う生物界の要素を指している。彼らには「弱さへの共感」、「人間愛」とか「魂の救い」といった精神性は不可解なものであっただろう。そうした立場からすれば、キリスト教徒たち世界観とは共存できなかった。だから、ナチ指導部は、当面はキリスト教をナチ化して教会の存在を認めるにしても、最終的にはナチ世界観がこれに変わり、教会をドイツから消滅させようとしていた。

p.242 彼らは敗戦になることを知っていた。なぜなら、世界を敵に回していたからである。戦争を回避しようとし、戦争を早期に集結させようとしたのは、ドイツ人同胞の生命を救うためであり、ドイツに対して世界中が抱く否定的な評価を改めさせるためであった。

p.249 本書が着目したのは、その中でも既成の組織に縛られず、後ろ盾もない人々がいかに考え行動したかである。彼らを支えたのは、自らの責任で決断、仕事を引き受ける意思である。これを「市民的勇気(ツィヴィル・クラージュ)」と言う。

p.254 反ヒトラー独裁に立ち向かった人々の復権は7月20日事件に始まったが、無名の人々が糾合をしたローテ・カペレを経て、孤独の中、不当の事態の解決を必死に考え、決断し、行動したゲオルク・エルザを持って終えようとしている。着目してほしいのは、社会的エリートではなく、1人の小市民の勇気が顕彰されるに至ったと言う事実である。それと同時に、被迫害者たちの救済した多くの「沈黙の勇者」たちがいたことである。人間として的に生きることが難しい異常な時代だったからこそ、彼らはその本来の姿を示すことができたと言えるのかもしれない。

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2023年03月19日

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ナチス党が政権を握って、1941年にヒトラーを暗殺しなければ大変な事になると考えた、スイス人親父モーリス・バボーのことが書かれていない。

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2022年04月24日

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ネタバレ

反ナチ運動を「クライザウ・サークル」を中心に紹介。
詳しく知らない分野だったので、なるほど…という感じだった。
ヒトラー支配下での活動に加え、戦後の状況、遺族はどうなっていったか、というところも書かれており、反ナチ運動が長く正当に評価されていなかったことも分かった。

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2016年01月27日

Posted by ブクログ

良くも悪くも新書レベル。ナチの政策に反旗をひるがえすという意味でユダヤ人保護から直接的なテロまで様々な集団を網羅しているものの、それらを有機的に結びつけるような論理はなし。 個々の事例に関しては、門外漢なので詳しくは知らんが既知の情報も多く読書の快楽はあまりない。トンデモ社会学のようなことは言わないのである意味で誠実ではある。
戦時中の独裁政権に対する反抗は、洋の東西を問わず戦後言説で美化されがちだとばかり思っていたのだが(『言論弾圧』のように)、ことドイツ人に関しては案外そういった自分語りはしてないのだなと、色々と思うこともあったり。
こんなにも素晴らしい人々が!と手放しで浮かれる前に彼らが戦時下では少数であったことの意味を考えたほうが良い。

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2016年01月22日

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