【感想・ネタバレ】白い牙のレビュー

あらすじ

自分以外のすべてに、彼は激しく牙をむいた。強さ、狡猾さ、無情さ……彼は生き延びるため、本能の声に従い、野性の血を研ぎ澄ましてゆく。自分の奥底にいまはまだ眠る四分の一のイヌの血に気づかぬままに――ホワイト・ファング(白い牙)と呼ばれた一頭の孤独な灰色オオカミの数奇な生涯を、ゴールドラッシュ時代の北の原野を舞台に感動的に描きあげた、動物文学の世界的傑作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

冒頭の雪山シーン(2名が犬ぞりで棺桶?を運ぶ)ですぐに引き込まれた。勿論、目の前数十センチしか見えない雪道を、いつ目的地に辿り着くか分からない苛立ちの中で歩いた経験はないが、自然に状況を想像することができた。
物語の大部分は元オオカミのホワイト・ファング視点で展開していき、その成長/適応を追体験することができる。オオカミとしての本能に根付く行動を行い、自然や人間からのFBを受けることで、犬?として適応していく過程は、大きな驚きはないものの、普遍性を持つテーマ/物語展開であると思う。テーマの普遍性故に何を学び取るか?は難しいが、1つ選ぶのであれば、それは「自身の本能/核はやはり変わらない」ということ。ホワイト・ファングも一定状況に適応しているものの、根幹の部分は幼少期に形成され、そこから大きな変化はないように読み取った。核を持ち、日々の生活の中で社会性を帯びていく。良し悪しではなく、そういうものだと、時間軸(本書は100年以上前)・主体軸(本書のテーマはヒトではなく犬)をずらしても尚通用する普遍性を教わった気がした。

特に印象に残った箇所は以下の通り
・その壁は前に経験したほかの壁とは違い、近づいていくにつれて、退いていくように思われた。ためしに柔らかい小さな鼻を突き出してみても、かたい表面にぶつからなかった。その壁の実質は、光のように、はいりこんでいけば形が変わるように思われた。しかも子オオカミの目には、それがちゃんとした壁に見えるのだから、その壁の中にはいっていった。そしてその壁を作っている実質に浴した(p.101)
・あの頃はほんの子オオカミで、生まれてまもないので、型にはまっていなかった。環境という親指が、いつでも細工できるようになっていた。だが、今は事情が違っていた。環境の親指が、細工を仕上げすぎてしまっているのだ。ホワイト・ファングは凶暴で執念ぶかく、冷たくて愛嬌のない「けんかオオカミ」という堅い型にはめられていた。この型を変えることは、生存の逆流に等しかった。というわけは、ホワイト・ファングはもう若さの適応性を持っていなかったからだ(p.288~289)

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2025年01月19日

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