あらすじ
木口木版画家・柚木のもとを訪れて弟子入りを志願した青年、東吾。柚木の歳若い妻・紗江は、どこか謎めいたこの青年に強く惹かれていく。ある日、柚木が急逝し、東吾は詩画集『水の翼』のための木版画制作を引き継ぐことに。同じ家で二人きりで過ごす紗江と東吾は、互いの想いの強さを偽れなくなっていく……。芸術と恋情のはざまで引き裂かれる男女の運命を描く、恋愛小説の白眉。
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Posted by ブクログ
文学作品として,ここまで手が込んでいるものを見たことがない。
三島由紀夫の死になぞらえて,
一人の芸術家が死ぬ。
その過程に,詩人 壬生幸作 の詩がある。
「水には翼があるのだ,ときみは言ふ
青い地平の遥か彼方で
空の青
海の青
月の青とが解け合ひ
混ざり合ひ,滲み合ふためにこそ
水は今こそ翼を持ち,羽ばたいてゆかねばならぬのだ,と
在るものを壊し
無と共に受け入れ
まことの美が誕生する瞬間を静かに待つ
。。。。
」
文学作品の中に,文学作品を入れる手法はいろいろある。
木口木版画の作家とその弟子が登場する。
いろいろな脇役を配置している。
誰が,最後に亡くなるのか。
全く予断を許さない展開。
芸術家が隠れた意図を持っていることは読めたが,
一世一代の嘘に騙され,最後の展開を読めなかった。
推理小説としてすごい。