あらすじ
「父が入院している病院の階段をのぼるときいつも逃げ出したかった。死にゆこうとしている父に会うのがこわかった」。父の脚をさすれば一瞬温かくなった感触、ぼけた母が最後まで孫と話したがったこと。老いや死に向かう流れの中にも笑顔と喜びがあった。愛する父母との最後を過ごした“すばらしい日々”が胸に迫る。発見と癒しに満ちたエッセイ。
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Posted by ブクログ
<忘備録・ネタバレあり>
老いや死に向かう流れの中の、発見や癒しをつづったエッセイ。日常の中に潜む愛情、優しさ、光、幸せ、じんとくる切なさ、愛おしさ、苦みさえも、宝物。
身近な人の死に向き合うのは辛いはずなのに、そのひとつひとつに対してここまで心情を深掘りし言語化できるものかと、その感性と覚悟に圧倒される。
父の血まみれの手帳の話はとても悲しくいとおしく胸が締め付けられた。
Oちゃんのご両親が作ったカップの話も切なくてあたたかい。それぞれのエピソードから、周りには心が豊かな人であふれてることが伝わる。
▼印象的なフレーズ
・母に腫瘍が見つかったため「テニスレッスンやめようか?」ときいたときの父の言葉「家族に困ったことがあったからって、楽しいことをやめるという考えはあまりよくない。そういうときはやったほうがいい。もしも、これが伴侶のことだったりしたらそりゃあ違うけれど、君の場合は君が子供なんだし、お母さんが悪性である可能性はとても低いらしいから、今はそんなこと考える必要はない」
・きっとこうなるんだろうな、とうう予想は毎日水がたまるみたいに、ぽたぽたたまっていく。それがあふれるときが来るというのも、なんとなく想像がつく。しかし、いざなってしまうとなんでもない。いちばんこわいのは、もうすぐあふれそうなときだけなんだと思う。
・近所のおばあちゃんの言葉「でもいいんだよねえ、生きててくれるだけでいいものなんだよねえ」私の手をぎゅっと握って、にこにこしてはっきりした声でそう言った。
・病院の階段をのぼるとき、いつも逃げ出したかった。全部悪い夢だと思いたかった。死にゆこうとしている父に会うのがこわかった。どんどん意識がある時間が短くなっていくのがこわかった。信じられない、信じたくない、そう思っていた。でも、逃げちゃいけないと思った。本人は死からにげられない。だから私が普通に会いにいき、逃げてないところを見せなくてはと思った。
しかし、今全てを経てみると、その恐ろしい流れの中にも緩急があり、笑顔があり、落ち着けるときもあり、時間は延びたり縮んだりした。
・信じると期待は違う
Posted by ブクログ
初めてエッセイというジャンルの本を読んだ。
自分の気持ちを言語化して、素直に表現できる、とても尊敬していて大切な友達が、吉本ばななさんを好きだったのが、この本を読んだきっかけだった。
この本の中での言葉の紡がれ方とか、心情の表され方とかが、友達のそれにも重なって温かい気持ちになった。
短編集のようなもので、夜眠る前に読みたいし、何度でも読み返したい。
"ポジティブシンキングをがんばるのではなく、なるべく日々をハッピーでいることしかないんだと思う。自分を不幸にするのは自分の責任だから。"
"なにもかもが「こんな感じ」っていうのの幸せ。毎日こんなことがちょっとだけあるといいなと思う。"