あらすじ
さみしいとか悲しいとか切ないとか、そんなのを感じる心のひだが、全部なくなればいいのに――。ブスと呼ばれ続けた女、年上男に翻弄される女子高生、未来を夢見て踊り続ける14歳、田舎に帰省して親友と再会した女。「何者でもない」ことに懊悩しながらも「何者にもなれる」と思って、ひたむきにあがき続ける女性を描いた、胸が締め付けられる短編集。
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Posted by ブクログ
あんなに毒いちごみたいな毎日を送っていたのに、今じゃ丁寧な暮らしをしている。こんなの馬鹿みたいだ、って思うのは昔から変わらない。
あの頃の空気を忘れちゃっても、山内マリコを読めばヒリヒリ感まで思い出せる。孤高のギャル小松さんが好きだった。
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山内マリコさん作品15
短編集なのであっという間に読めてしまう。
世代は違うけれど、
この感じ似たようなことあったかも…という
気持ちなる部分がちらほら。
『遊びの時間はすぐ終わる』の
ボディショップについての描写に共感。
『AIBO 大好きだよ』は切なく、
そんなつもりはなかったのにグッときてしまった。
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2022/11/24
心情の機微をここまでつらつらと自然に表現できるのすごいと思った。
誰もが思っているけど言えない、もしくは自分では気付いてないことを書くのがいい作家ってどこかで見たような気がするけどそれだ。
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うわぁ…好きだなぁ。って久しぶりに思えた作品。
物語の舞台や主人公の境遇、感じ方など、少し自分と重なる部分があり、今の自分が求めてたストーリーってこういうのなんだなって。
「何者にもなれる」って本気で信じていた頃に持っていた感受性や繊細さは歳を重ねる度にだんだん心から消えていくもので、しかしまだ、その頃の気持ちが残っているうちに何か成し遂げたい、と思い続けるのが人生なんじゃないかと私は感じた。
「大人になる方法」や「遊びの時間はすぐ終わる」などでは特に、自分と重なる主人公たちによる『何者にでもなれる』と思い続けた青春時代にとても共感して、胸が締め付けられた。
まだ小さい時にあんなにも輝いて見えたものたちが、色んな経験をして世の中を知ると虚ろに見えて、すこし敬遠してしまう。私は今はまだこの状態にいる。もっと色んな経験を積めばこの状態を客観的に見ることが出来るのかな。
山内マリコさんの作品は初めて読んだけど、女性の強さの中にある繊細さを描くのがとてもうまい。
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それぞれ短編なのにそれぞれ刺さる
「どんどん鈍感になって、図太くなって、何を見ても心がぴくりとも動かない、石のような老人になりたい」て、分かるなー・・・切ない
小松さんに幸あれ
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◾️record memo
「あたしみたいに変ちくりんな顔でもね、パパが可愛い可愛いって言ってくれたから、あたしは自分のことを可愛いって思えるようになったの。それでこんな性格になっちゃったってわけ!」
ああ、わたしにもうつみ宮土理の父親みたいな人がいればいいのに。きみは可愛いよ、すごく可愛いんだよって、ちゃんと目を見て言ってくれる誰か。そんな人がそばにいれば、わたしも、"ケロンパ" みたいな愛称で呼ばれる、可愛げのある女の子になれたかもしれない。
せめてもの慰めに、鏡を見るたび、心の中でうつみ宮土理の父に、こう言ってもらいました。「可愛い可愛い。さよちゃんは可愛い。さよちゃんはブスなんかじゃないよ。ほんとだよ」
わたしはずっと、自分をイグアナの娘だと思って、それだけを支えに生きてきました。萩尾望都先生の名作『イグアナの娘』の主人公は、母親と自分にはイグアナに見えるけれど、本当はけっこう美少女という設定です。わたしの場合、鏡をのぞきこむと、そこにいるのはブスです。イグアナよりはマシ…というささやかな慰めと、わたしも誰かの目には美少女に見えているかもしれない、というわずかな望みを託していました。
さびしいとかせつないとか侘しいとか、そんなのを感じる心のひだが、全部なくなればいいと思った。
みんな自分に似合わないものばかり、手の届かないものばかり欲しがってる。
自分というものが完璧にあって、物怖じせず、誰とでも対等に話せる人に。自分にピッタリの香水を知っている、おしゃれな、スタイルのあるカッコいい大人に。笑いのセンスに溢れた人気者に。フランス料理のテーブルマナーも知っていてワインにも詳しい、どこに出しても恥ずかしくない女に。たくちゃんと一緒にいることで、そういう人になれる気がしていた。たくちゃんがあたしをブラッシュアップしてくれて、ハイ完成!って送り出してくれる気がしていた。お風呂上がりにバスタオルを広げたママの腕に飛び込みさえすれば、きれいに乾かされてパジャマを着せられ、完璧な状態になってベッドに運ばれるみたいに。そんなふうにあたしを調教して、大人にしてくれる人を求めていたのだ。なんてバカなんだろう。
あたしは、いつになったら自分が思い描く女の子になれるんだろう。いつになったら完成するんだろう。それまでに、あとどのくらいの時間がかかるんだろう。あたしがなりたいのは、きれいで、頭が良くて、おしゃれで、おもしろいことが言える人。いつも堂々としていて、自信があって、人に媚びたりしないし、あとで自己嫌悪に陥るようなダサいリアクションもしない。そういう女の人になれるまで、あとどのくらいかかるんだろう。
あたしは今度こそ、自分の欲しいものは自分の力で、手に入れるつもり。
注目を集めたいと思うことも、もちろんネットでなにかを発信することにも興味はありません。彼らは現代人にはめずらしく、自分たちの幸せを他人に見せびらかさなくても、幸せを感じることができたのでしょう。
青木夫妻は若者たちのちょっとした無作法にも寛容ですし、彼らの意見にきちんと耳を傾けます。若いからといって下に見るような真似も、もちろん説教もしません。でも訊かれれば、そっと教えてくれました。自分らしく装うコツや、靴を長持ちさせる手入れの仕方、美術品を買う意味や、インターネットとの距離の置き方なんかを。
彼らはよく言っていたものです。スタイルを探す試行錯誤にはお金がかかるけれど、スタイルが見つかればあとはお金なんてちょっとで事足りるものよと。
誰にも。誰にもわからない。そしてわからないことを知っているかのように語ってはいけない。
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高校生くらいから20代前半ぐらいまでの若い女の子たちの物語を集めた短編集。
あの頃はもっと繊細で、いろんなことに敏感で、世の中がとても生きづらかったことを思い出し、知らないうちに自分も世間に慣れていろんなことに鈍感でいられるようになったんだなって気づかされた作品でした。
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山内マリコさんは、女性が感じる本当に
小さな棘のような、繊細な部分を掬い上げて
それをバネにしている感じがとてもすき。
この作品もそれが存分に出ていて少しチクッとしてはじんわりと救われるような。
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山内さんの描くトガってる女性が好き。今が気にいらない、私にはもっとできる気がする、何者かになりたい、新しいことを体験したい、この町を出たい、東京に行きたい。自分にもこんなときがあったし、こういうトガりを無くしたくないと思った。
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ほどよく寂しいお話の短編集。
好きな作家さんにまた出会えた!と思えた作品。
遊びの時間はすぐ終わるはリアリティがあって考えさせられた。
本当のところではけっこう冷静な自分っていうのが
いるのに抗って粘ってしまう時期があった
今もある種そうなのかもしれないなぁ
山内マリコさん他の作品も読みたい。
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「昔の話を聞かせてよ」「孤高のギャル小松さん」「人の思い出を盗むな」らへんが好き。「遊びの時間はすぐおわる」は特に良かった。
「ここは退屈むかえにきて」といい「可愛い結婚」といい田舎に対する思いは山内さんの書く女の子たちと通ずるものがある。山内さんは富山県出身、大学で大阪に進学したらしい。やっぱり。
だからなんとなく読んでしまうのかも。自分がこうなるかもしれなかった人たち、地元の友人たちがいるようだから。
ありさのように自分がたぶらかしてるつもりで相手から軽んじられていたこと、その人が自分を特別なものにしてくれてここから連れ出してくれると思っていたこと、さよちゃんのように自分は可愛いと自分を許すために恋愛をしたことが、誰にだってあるでしょう。誰にももうあまり言いたくない過去のことがあるでしょう。
いろんなものが、そんなふうにして消えていった。引越しのたびに減っていった靴や洋服。自分が何を持っていて、いつなにを失くして今に至るのか、どんどん忘れていく。記憶は曖昧になって、なにが本当に起こったことなのかもわからなくなる。(「遊びの時間はもう終わり」)
いつか好きだった人とのこと、いつか心を通わせた人とのこと、もうあまり連絡をしなくなった友人のこと、地元を出たいとここには何もないと、言い切っていた私のことを思い出した。
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読もうと思った理由
著者の中に出てくる登場人物に惹かれることがあるため
短編集でほとんどが読みやすく、共感させられるところが多かったですが、特に「遊びの時間はすぐ終わる」「AIBO大好きだよ」が自分がなにものか、なにものでもないのか、何かを求めているのだが、それは単に地方ではなく、都会なのか、そうではないのかなど学生時代からその後の時期の心理がうまく描写されていて面白かったです。
Posted by ブクログ
中高生の時こんな感情あったなぁ…というお話目白押しだった。
今考えれば思春期なんて全部経験になるし、その時しかできないんだから、生死や病気、犯罪に関わらなければ興味があること基本何でもやってみるべきだなと思う。
自分の子どももこんな時代が来るのか…
どう関わろうかな、どんな経験するのか楽しみだな、と、想像と期待が膨らんだ。
あとがきにあるように、自分の感受性も歳をとるんだな…と改めて感じた。
その瞬間瞬間の感情を文章や動画などで残すことにも意義があるし、やってみたいとも思えた。
日記…三日坊主だけど…
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読み終わった後、なんとなく気持ちがスッキリしない。
どうしてこんなに人間の外見にこだわるのかが引っかかり…。
あまり残る話がなかったが、「孤高のギャルの小松さん」の小松さんの初恋エピソードは、映画のようにその情景が浮かんだ。
Posted by ブクログ
多くの作品が映画化されている山内さん。
著作を読むのは初めてかも。
『ここは退屈迎えに来て』とか『あのこは貴族』とか。映画も見てないのあるから見たくなった。
雰囲気とかキャラの描き方とか結構好きかも。
何となく、パッと取った感じで、あ、好きそうって何となく分かった。
特に「人の思い出を盗むな」が好き。
いいね、この感じ。ちょっと分かってしまう自分もいる。
人の思い出の話からここまで来ると、笑ってしまうくらい。
Posted by ブクログ
『アズミ・ハルコは行方不明』『ここは退屈迎えに来て』『あの子は貴族』についでの4冊目の山内マリコ作品。続けて読んでるから結構好きな作家なのかもしれない。
高校生から社会人数年目までの女性たち目線のリアルを淡々と描く。なにかが起こるわけでも最後に前向きになれるわけでもない。ただそこにある物語。いろんな媒体に書いた短編を集めたものらしく、似たような話も多い。この当時の作者が手癖で書いてしまうのがこういう話なんだろうか。
こうしてみてみると、『アズミ・ハルコは行方不明』はこの作者の元々がもっているものと、その当時の社会の雰囲気を切り取ったものを見事に融合させたものだった。
「人の思い出を盗むな」が好き。バイト先の先輩から聞いた話が入れ子構造になってようで不思議な距離感。思い出を盗むなってのは主人公に言ってるんだろうけど、読書体験ってそもそも思い出を盗んでいるようなものだと思ってどきっとした。
それにしてもたまに出てくるうざい男が自分っぽくて嫌だ。もとバンドメンとか、デザイナーのたくちゃんとか。
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女性の自尊心について深く考えさせる本だった。過去の価値観の呪いを具体的なニュースとかを含めて、鮮明に描かれていて面白い。ただ、山内マリコさんの作品を多く読んでいるので、目新しさは少なかった。
男性と女性、思うことは似ている。
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女子の誰もがどの物語かは感じたことあるだろう感情。
イノセントでちょっと狂ってた時代。
大人になりすっかり忘れてたけど、思い出し胸がチクッとするような。
公平くんは年頃の全女子が好きになるだろ。
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何冊か読んだけど、途中まで面白くても後半とか最後があんまり好きではないんだよなぁ。個人的には。
世代が違うから、何年か経ったらまた違う感じ方をするのかもしれない。
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ギャルの話と地元に未練がある女の話が面白かった。固有名詞がぽんぽん出てきて、それら知らない誰かの記憶と私の遠い昔の過去が繋がって不思議な気持ちに。
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短編集11編
冴えた会話やふとした仕草などその時の感情の表現が生き生きしている。
たくちゃんにその妻に負けるなとママと一緒に叫ぶ「大人になる方法」が良かった。
Posted by ブクログ
何者にもなれると思っている青春時代の女性達を描く短編集。あとがきにあるように感受性豊かな思春期から世慣れした大人のフェーズにいつの間にかスライドしていたことを感じる。
赤面するような出来事も経験しながら大人になって、図太く生きてるんだと、こんな風に感じていた時期が確かにあったと懐かしく感じる。