【感想・ネタバレ】さみしくなったら名前を呼んでのレビュー

あらすじ

さみしいとか悲しいとか切ないとか、そんなのを感じる心のひだが、全部なくなればいいのに――。ブスと呼ばれ続けた女、年上男に翻弄される女子高生、未来を夢見て踊り続ける14歳、田舎に帰省して親友と再会した女。「何者でもない」ことに懊悩しながらも「何者にもなれる」と思って、ひたむきにあがき続ける女性を描いた、胸が締め付けられる短編集。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

それぞれ短編なのにそれぞれ刺さる
「どんどん鈍感になって、図太くなって、何を見ても心がぴくりとも動かない、石のような老人になりたい」て、分かるなー・・・切ない
小松さんに幸あれ

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2021年11月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

◾️record memo

「あたしみたいに変ちくりんな顔でもね、パパが可愛い可愛いって言ってくれたから、あたしは自分のことを可愛いって思えるようになったの。それでこんな性格になっちゃったってわけ!」
ああ、わたしにもうつみ宮土理の父親みたいな人がいればいいのに。きみは可愛いよ、すごく可愛いんだよって、ちゃんと目を見て言ってくれる誰か。そんな人がそばにいれば、わたしも、"ケロンパ" みたいな愛称で呼ばれる、可愛げのある女の子になれたかもしれない。
せめてもの慰めに、鏡を見るたび、心の中でうつみ宮土理の父に、こう言ってもらいました。「可愛い可愛い。さよちゃんは可愛い。さよちゃんはブスなんかじゃないよ。ほんとだよ」

わたしはずっと、自分をイグアナの娘だと思って、それだけを支えに生きてきました。萩尾望都先生の名作『イグアナの娘』の主人公は、母親と自分にはイグアナに見えるけれど、本当はけっこう美少女という設定です。わたしの場合、鏡をのぞきこむと、そこにいるのはブスです。イグアナよりはマシ…というささやかな慰めと、わたしも誰かの目には美少女に見えているかもしれない、というわずかな望みを託していました。

さびしいとかせつないとか侘しいとか、そんなのを感じる心のひだが、全部なくなればいいと思った。

みんな自分に似合わないものばかり、手の届かないものばかり欲しがってる。

自分というものが完璧にあって、物怖じせず、誰とでも対等に話せる人に。自分にピッタリの香水を知っている、おしゃれな、スタイルのあるカッコいい大人に。笑いのセンスに溢れた人気者に。フランス料理のテーブルマナーも知っていてワインにも詳しい、どこに出しても恥ずかしくない女に。たくちゃんと一緒にいることで、そういう人になれる気がしていた。たくちゃんがあたしをブラッシュアップしてくれて、ハイ完成!って送り出してくれる気がしていた。お風呂上がりにバスタオルを広げたママの腕に飛び込みさえすれば、きれいに乾かされてパジャマを着せられ、完璧な状態になってベッドに運ばれるみたいに。そんなふうにあたしを調教して、大人にしてくれる人を求めていたのだ。なんてバカなんだろう。

あたしは、いつになったら自分が思い描く女の子になれるんだろう。いつになったら完成するんだろう。それまでに、あとどのくらいの時間がかかるんだろう。あたしがなりたいのは、きれいで、頭が良くて、おしゃれで、おもしろいことが言える人。いつも堂々としていて、自信があって、人に媚びたりしないし、あとで自己嫌悪に陥るようなダサいリアクションもしない。そういう女の人になれるまで、あとどのくらいかかるんだろう。

あたしは今度こそ、自分の欲しいものは自分の力で、手に入れるつもり。

注目を集めたいと思うことも、もちろんネットでなにかを発信することにも興味はありません。彼らは現代人にはめずらしく、自分たちの幸せを他人に見せびらかさなくても、幸せを感じることができたのでしょう。

青木夫妻は若者たちのちょっとした無作法にも寛容ですし、彼らの意見にきちんと耳を傾けます。若いからといって下に見るような真似も、もちろん説教もしません。でも訊かれれば、そっと教えてくれました。自分らしく装うコツや、靴を長持ちさせる手入れの仕方、美術品を買う意味や、インターネットとの距離の置き方なんかを。

彼らはよく言っていたものです。スタイルを探す試行錯誤にはお金がかかるけれど、スタイルが見つかればあとはお金なんてちょっとで事足りるものよと。

誰にも。誰にもわからない。そしてわからないことを知っているかのように語ってはいけない。

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2025年01月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

高校生くらいから20代前半ぐらいまでの若い女の子たちの物語を集めた短編集。

あの頃はもっと繊細で、いろんなことに敏感で、世の中がとても生きづらかったことを思い出し、知らないうちに自分も世間に慣れていろんなことに鈍感でいられるようになったんだなって気づかされた作品でした。

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2023年05月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「昔の話を聞かせてよ」「孤高のギャル小松さん」「人の思い出を盗むな」らへんが好き。「遊びの時間はすぐおわる」は特に良かった。
「ここは退屈むかえにきて」といい「可愛い結婚」といい田舎に対する思いは山内さんの書く女の子たちと通ずるものがある。山内さんは富山県出身、大学で大阪に進学したらしい。やっぱり。

だからなんとなく読んでしまうのかも。自分がこうなるかもしれなかった人たち、地元の友人たちがいるようだから。

ありさのように自分がたぶらかしてるつもりで相手から軽んじられていたこと、その人が自分を特別なものにしてくれてここから連れ出してくれると思っていたこと、さよちゃんのように自分は可愛いと自分を許すために恋愛をしたことが、誰にだってあるでしょう。誰にももうあまり言いたくない過去のことがあるでしょう。



いろんなものが、そんなふうにして消えていった。引越しのたびに減っていった靴や洋服。自分が何を持っていて、いつなにを失くして今に至るのか、どんどん忘れていく。記憶は曖昧になって、なにが本当に起こったことなのかもわからなくなる。(「遊びの時間はもう終わり」)

いつか好きだった人とのこと、いつか心を通わせた人とのこと、もうあまり連絡をしなくなった友人のこと、地元を出たいとここには何もないと、言い切っていた私のことを思い出した。

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2021年11月08日

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