あらすじ
働くことこそ生きること、何でもいいから仕事を探せという風潮が根強い。しかし、それでは人生は充実しないばかりか、長時間労働で心身ともに蝕まれてしまうだけだ。しかも近年「生きる意味が感じられない」と悩む人が増えている。結局、仕事で幸せになれる人は少数なのだ。では、私たちはどう生きればよいのか。ヒントは、心のおもむくままに日常を遊ぶことにあった――。独自の精神療法で数多くの患者を導いてきた精神科医が、仕事中心の人生から脱し、新しい生きがいを見つける道しるべを示した希望の一冊。
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Posted by ブクログ
一見、題名にインパクトを与えただけの、世渡りのためのハウツー本と思いつつ読み始めたが、一読して著者の見識の深さがわかる読み応えのある本であり、読後に世界が変わって見えるほどの、人の生き方を変える力のある本であった。
仕事なんか生きがいにするなとは、「真の自己」が自分の外に想定され、仕事さがし=社会に用意されている仕事とのマッチング によって自己実現するはずだという終わりなき自分探しがいかに誤った考えかということであり、本当の生きる意味とは何かを考える本である。
今まで私にとっての芸術は、美しいもの、真理を表現したもの、しかし実際はよくわからないものであった。
しかし著者によると我々が人として成熟することは、芸術家になることだという。芸術というと、音楽や絵画、詩などが思いつくが、思考感情行為など自分自身を自発的に表現することの個人は芸術家であるとしている。
この言葉は私にとって、目の前の道を明るく照らすまっすぐな光、希望、道標と感じられる。
なぜならば、世に存在する、美しいけれどもよくわからないもの、理解することが難しいと諦め、まして表現することなど考えもしなかった「芸術」
が、目指すべきものであるということ、むしろ真実に生きようとする自覚が深ければ芸術に辿り着くということ、人間に不可欠であり贅沢品として身に纏うものでなないということは、人生の主人公がこの私であるということが、これ以上ない程にはっきりと意識させるからである。
Posted by ブクログ
現代では当たり前になった価値観(働かざるもの食うべからず、とか、コスパタイパ、とか)がどれだけ空虚なものである可能性を持つか考えさせられた。
“天気予報ですら、未だに「60%の確率で雨が降るでしょう」たいった結論しか弾き出せないことを見れば、算術的思考の限界は明らかです。”という部分、確かにそうだなぁと納得した。合理的な判断というのは、観測できる範囲の情報からくる合理的な判断でしか無いため、どこまでいっても指針でしかないものである。
Posted by ブクログ
現代に倒錯している価値観に囚われず、意義に囚われず意味を見出すこと、そのために遊びが大事である。
「愛とは、相手が相手らしく幸せになることを喜ぶ気持ちである。欲望とは、相手がこちらの思い通りになることを強要する気持ちである。」
「道徳とは、われわれが個人的に嫌いな者に対してとる態度にすぎない」
「他人にそれがどう思われるかに関係なく、本人さえそこに【意味】を感じられたのなら【意味がある】ということになる。」
「もし大部分の人を惹きつける子どもの魅力がなんであるか問うならば、私はまさにこの自発性にちがいないと思う。この自発性は、それを感知する力を失うほどには死んでいない人々に深く訴えていく」
「受け取る聴衆の側にも、ある種の成熟が求められるのが芸術というものの宿命です。」
「そもそも人類が長い歴史の中で自然界から食物として得てきたあらゆるものは、何らかの意味において身体にいいものであると言えるはずです」
「やはり人間というものには、生きる意味を追い求めずにはいられない哲学的性質があり、他の動物とは異なる実存的な奥行きを備えた存在なのです。」
「人生に今を問う、というベクトルを向けること。これにより、自分が己の人生の主人であろうとすること。」
「人が生きる【意味】を感じられるのは、決して価値あることをなすことによってではなく、【心=身体】が様々なことを味わい、喜ぶことによって実現されるのです。」
「このように頭と心が対立せずに、互いが相乗的に喜び合っている状態。これを、私たちは「遊び」と呼ぶのです。」
「ところが、そもそも【遊び】というものは【無駄】の上にこそ成り立つのであって、その結果はあくまで二次的に過ぎないもので、プロセスのところにこそ面白みがあるものです。」
「あえて無計画、無目的に、自分の行動を即興に委ねてみることによって、私たちの決まりきった日常が、ささやかながらもエキサイティングな発見と創意工夫に満ちたものに変貌するわけです。」
「この【即興性】に加えてもう一つ大切なこととして、【面倒臭い】と感じることを、むしろ積極的に歓迎してみるという考え方があります。」
Posted by ブクログ
仕事やキャリアに現代社会は価値を置きすぎているけれど、もっと人間として大きくなること、そのためにどのような視点を持てるか、など、考え方のヒントが詰まった本でした。
労働教、というのが出てきました。ニーチェやフランクル、アーレント、そして夏目漱石と言った方々の著作が参照されています。
Posted by ブクログ
働くが産業革命後に労働に変わったというのが面白い視点だった。仕事に多くの時間を割くのはやむを得ないとしても、もっと他のことにもチャレンジしたいと思えた。
Posted by ブクログ
フェルミ研究所の動画から知って購入。
結果、そんな買うほどのことでもなかったかな?
端的に言うと、
ハングリー・モチベーション、食べるために働かなければならなかった時代から、
働かなくても食べていける時代に移行して、何のために生きてるのか?何のために働いてるのか?
と自問する人が増えた。
働くことを美徳とする時代の中で、
無心になって遊ぶことを忘れてしまったのかもしれない。
効率重視の風潮に流されて、無駄なことを避けるようになって、ますます遊ぶことを忘れてしまった現代人。
即興的な遊びを生活に取り入れることが、無意味感に苛まれる日常を救うかもしれない。
私がこの本を読んで受け取ったことは、こんなとこかな?
ジョギングしたり、読書に絵描き、色々趣味に取り組んできたけれど、もっと色々なことにチャレンジしてみようと思った。
Posted by ブクログ
経済至上主義に傾倒しがちな現代において、仕事なんかを人生の中心にせず、もっと無駄を大切に自分らしく生きていいんだと背中を押してもらえた気分。
引用がやや難解だったが、直後に著者による解説があるため抵抗なく読めた。
日常を「小児」のように遊び、芸術的に観照生活を送りたいと思う。「意義」より「意味」を。
Posted by ブクログ
人間という存在は「生きる意味」を見失うと、精神が衰弱してしまうのみならず生命そのものまでもが衰弱し、ついには死に至ってしまうこともある。
分業化された「労働」によって生産された製品は、もはや「仕事」が生み出したような、長く大切に使う作品ではなくなり、どんどん消費することが求められる単なる消費財になってしまいました。
アメリカ合衆国建国の父の一人ベンジャミン・フランクリンの言葉
「時間は貨幣だということを忘れてはいけない。
信用は貨幣だということを忘れてはいけない。
貨幣は繁殖し子を生むものだということを忘れてはいけない。
支払いのよい者は他人の財布にも力をもつことができる
信用に影響を及ぼすことは、どんなに些細なおこないでも注意しなければいけない」
「労働」から完全に離れてしまうことは、人間から活力と生命を奪い去ってしまうことになる。これは、生き物としての一つの真実です。
自分の経験したことのないものについて、「そんなものはない」と決めつけたりせずに、率直に「わからない」として捉えることこそ、真に理性的な態度ではないか。
何でもないように見える「日常」こそが、私たちが「生きる意味」を感じるための重要な鍵を握っているのです。