あらすじ
30代で独身、恋愛、結婚に縁がなく、平日は生活のためにひたすら働いている女たちの何気ない日常がこまやかな感性とともに描かれている。だからこそ、週末のどこかへの旅が特別になる。
ひょんな事故から乗り合わせることになったドライブ――日常からふっと「週末」ぐらいの距離感で抜け出したその先にあるもの――。
「一瞬一瞬が奇跡的。その懐の深さが、私は泣きたくなるくらい好きだ」瀧井朝世(ライター)さんが本書の解説に寄稿。芥川賞作家が見つめる、見慣れたはずの風景が違って感じられる8つの物語。
「野性時代」「デジタル野性時代」に掲載した短編に、「モンキービジネス」に掲載、英語版にも載っている「海沿いの道」、「わたしがいなかった街で」につながる「ハルツームにわたしはない」も収録した全8篇。どれも週末にまつわる話です。(著者オフィシャルサイトより)
感情タグBEST3
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いくつもの、色んな人の週末を記録した短編集。
柴崎さんは、登場人物に絶妙な距離をおいた視点でいつも文章を書いてるように感じる。私にとって、こんなに描写から様子を脳内によく描けるものはなかなか無い。
瀧井さんの解説が本当に言いたいことを代弁してくれてる。普通に生活するという一回性の連続に対して自覚的であることで、なんにもない日常、つまり人生の肯定につながる。
言いたいことはまだまだあるけど、たまに読み返したいなと、思う。
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・棚に並ぶ、大きさの不揃いなたくさんの本は、わたしが読めないことがいっぱい書いてある。(53:蛙大路とハリウッド)
猛禽類のようにぴゅうっと滑空してとらえるのか、一度木に留まってからつついてくるのか、そしてあんな小さなものをどうやって見つけることができるのか、自分は知らないことばかりだと思った。(70:つばめの日)
・目に見えたものは「見失った」と言うけれど、耳に聞こえたものは何で言うんだろう。(122:海沿いの道)
・皆、大阪の食べ物を食べていた。ここも大阪でいいんじゃないかと思った。(226:ハルツームにわたしはいない)
・もしかしたら、真ん中で黙っているけいなら、わたしの感じていることが通じるかもしれないと期待があった。ハルツームの気温を確かめている理由も、言葉にできるかもしれないと思った。でも、ほんとうに通じたかどうか、確かめることはできない。(228)
・ハルツームは、四十一度だった。うれしかった。(204)
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文庫になったのでもう一回。お風呂で何ヶ月かかけてじっくり読んだ。再読で、他の短編集で読んだのもあるけど、読むたびに気にいるポイントが違っておもしろい。
今回は他人っぽさ。自分以外のことは、自分とは関係がないと思うこと。
女の人の書いた小説で主人公が「おれ」っていうの(つまり男性が主人公)とか逆とか基本嫌なの。でもそれっぽいかどうか、柴崎友香の小説だと全然気にならない。風景を想像しながら読むのが楽しい。
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その懐の深さが、私は泣きたくなるくらい好きだ。
あとがき、瀧井朝世氏の解説も含め良かった。
ハルツームの話好きだな〜。会社で昼休みに読み進めていたが、いつもほっこり幸せ気分になっていた。
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6年程の間に発表された週末がテーマの短編が8編収められており、各編の繋がりはたぶんない。一瞬「あれ?この人はさっきの話に出てきた人?」と感じることもあったが、たぶん別人と思う。
「つばめの日」は、女友達3人で姫路城に行く道中に寄ったPAで車が故障してしまう話。3人のうちの1人が突然「おもさげながんす」という言葉を用い、「ケーブルテレビで時代劇映画を見てから彼女の中で一時的に流行している謝辞」と説明がある。不意をつかれて笑った。本の中でこういう自分のツボをつかれる瞬間的なユーモアに出くわすと幸せな気分になる。
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解説で瀧井朝代が言うように、確かにどの作品にも「生の一回性」を意識する瞬間がある。
だからこそいまここにいる自分、自分がいないどこかやいつかに思いを馳せる。
場所。時間。記憶。取り返せない過去。他人になれない自分。
それらを「無理なく思う」のが柴崎友香の作風なのだろう。
大雑把に言えば作中で行われているのは、歩く。話す。それだけ。
それだけで思考が広がり、「深まりそう」になる。
深く考え込む一歩手前でまた、歩く。話す。豊かだ。
■ハッピーでニュー
■蛙王子とハリウッド
■つばめの日
■なみゅぎまの日
■海沿いの道
■地上のパーティー
■ここからは遠い場所
■ハルツームにわたしはいない
■あとがき。文庫版あとがき。解説は瀧井朝世。
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柴崎さんの本は「ビリジアン」に続いて二作品目。
なんかいい。
なにがいいのかよくわからないけどなんかいい。
どこにでもいそうなひとたちのなんとはいうことのない日常。でもその日常のひとつひとつが大切に描かれていて読んでいるうちにとても愛おしく思えてくる、そんな感じ。
どの作品も好きだけど、いちばん好きなのは「ここからは遠い場所」かな。なんというか主人公の境遇に共感するのと、ちょっとしたミステリー要素があるのもおもしろい。主人公の名前に関してアレ?って思ったのもポイントだった。
あと印象深かったのは「地上のパーティ」。唯一主人公が男性なんだよね。
電車の中で読んでて柴崎さんの他の作品が気になってきて途中下車して書店に寄って数冊購入。これは完全にハマっちゃったね(^^;)
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『ハルツームにわたしはいない』が一番よかった。一番柴崎友香らしい。いつものテーマでいつもの書き口ではあるのだが、短編になったぶん旨味がギュッと凝縮してはっきりしたような印象。
私がいつ、どこで生まれ、いま、ここで生きているのは何故なのか。その素朴な疑問を実生活の中で問いかけ続ける。無理に形而上学や哲学の範囲に持っていかず、あくまで実生活の中で問いかける姿勢にとても親近感を感じる。何事も等身大なのが柴崎作品のいいところ。
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どの話もこれと言って何か特別なことが起こるでもなく、それぞれのある週末が書かれている。たんたんとした書き方に全体を通して一貫性があり、登場人物の会話にはなんだか親近感が湧いた。自分の周りにいそうな登場人物たちで、そして自分もこの本の中に出てきそうな普通の人間だから親近感が湧いたのかもしれない。
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普通の女性の週末をめぐる短編集。
登場するのは普通といいながらも実は個性的な考え方の素直な女性ばかりでしたが、柴崎さんらしい瑞々しさがやや欠けていた印象です。
Posted by ブクログ
初めて読む作家さん。
初めて読んだ時は??な印象だったが、今回(2回目)読んでみて言いたい事はなんとなくわかったと思った。
文の書き方や説明の仕方が遠回しな気がして、あまり好きではない。
表紙のイラストは、鮭王子とハリウッドのイメージだろうか。
Posted by ブクログ
この人の作風いまいちピンときてなかったし、これもまあオチとかはよくわかんないけど、わかんないながらもどこか肯定してくれる感じがこの本は良かった。