【感想・ネタバレ】戦争を始めるのは誰か 歴史修正主義の真実のレビュー

あらすじ

教科書が教えない「二つの世界大戦の真実」!

「歴史修正主義」とは戦前の日独を全面肯定する歴史観のことではありません。米英の外交に過ちはなかったのか、あったとすれば何が問題だったのか。それを真摯に探る歴史観のことです。

「公式の歴史」ではベルサイユ体制と国際連盟体制を破壊した枢軸国(日独伊)の他国への侵略が第二次大戦の原因と説明されますが、実は英米参戦の「必要」や「理由」は後からでっち上げられました。
ヒトラーによるユダヤ人抹殺は絶対に許されませんが、ナチスのユダヤ人差別が戦争の原因ではありません。
ベルサイユ体制の不条理、チェンバレンの愚策(ポーランドの独立保障)、ポーランドの頑なな対独外交こそ、大戦の真の原因でした。

「ヒトラーはどん底のドイツ経済を立て直した」
「オーストリア国民はドイツへの併合を熱烈に歓迎した」
「借金に追われていたチャーチルにとって、ナチス台頭は絶好のチャンスとなった」
などと、本当のことを言ってしまうと、連合国が作り上げた戦後体制の正当性が崩れてしまうのです。

二つの世界大戦は必要のない戦争だった。とくに第二次大戦はチャーチルとルーズベルトがいなければ起らなかった――。
本書は二つの世界大戦の真実に迫ります。

●目次●
第一章 第一次世界大戦の真実
第二章 第一次世界大戦後の歴史解釈に勝利した歴史修正主義
第三章 ドイツ再建とアメリカ国際法務事務所の台頭
第四章 ルーズベルト政権の誕生と対ソ宥和外交の始まり
第五章 イギリスの思惑とヒトラー
第六章 ヒトラーの攻勢と、ルーズベルト、チェンバレン、そしてチャーチル
第七章 ヒトラーのギャンブル

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Posted by ブクログ

ネタバレ

花戦争なるものが実在することを本書で知った。WW1で調印されたベルサイユ条約により領土を喪失したドイツが、回復を求めてオーストリアに侵攻し、軍事力ではなく花で迎えられ、無血で併合を実現したことを指す。ナチス政権において急速に国力を回復させたドイツは恐慌にあえぐ世界の羨望の的で、オーストラリア国民もドイツの支配をむしろ望んでいたという。
FSSはいつの間にかコーラスが表舞台から去り、ものすごいフィルモア推しになっていた。当初予定になかったことは明らかで、設定が大幅に拡張された印象がある。同時に出現したのは詩女とかオートマチック・フラワーズとかいうものだ。花戦争という事象を知ってみれば、ダイ・グ統治下のフィルモアのナイーブな外交や、付随する設定変更のモデルとなったのではないかと思える。

さて、本書は歴史修正主義の立場に立つという。
歴史修正主義とは「従来の史観に異を唱える」というものであるらしい。字面から第一印象は「いいように歴史を解釈してやるぜ」と思えてしまい、意味を知る機会を逃したまま長く過ごしてしまったせいで、今でも混乱している。対義語は公式史観、別称あるいは蔑称は釈明史観である。

本書が主張するWW1の原因はイギリスのエスカレーションである。ヨーロッパの局地戦に終止するはずだった戦争にイギリスが介入し、ドイツの領土を戦勝国で分配する結果を得た。イギリスの取り分は海外領土だ。ドイツは海外領土を100%喪失している。結果からすると説得力がある。この結果を正当化するためにドイツを悪役にする必要があり、それがベルサイユ条約だという。

WW2の原因はイギリスがポーランド独立保障をしたことである。ベルサイユ条約の不正義を十分に認識していたチェンバレンは当初ドイツのポーランド外交に不干渉の立場だったが、フランクリン・デラノ・ルーズベルトの工作によって対立する気にさせられたという。これがなければWW2は発生せず、ドイツとソビエトの戦争に終止した可能性があると主張する。ドイツは外交によってポーランドと交渉を重ねており、ポーランドは実力もないのに強硬にそれを突っぱねていた。イギリスの保証を背景にそれは強まり、結果として軍事侵攻を招いた。この一連の流れを誘発したチェンバレンの不見識には当時のイギリスの有識者たちも驚いたという。チェンバレンが決断するに至った情報筋が非常に怪しい。

別の歴史修正主義の書籍によれば、WW2はチャーチルがエスカレーションを主導し、アメリカの参戦を促したとある。本書の主張と矛盾するものではないが、主従が逆転する印象がある。
いずれの主張においても、ソビエトが一人勝ちした印象を十分に説明するものではないのが気になるところ。

暗記力と解釈能力の欠如から、世界史の教科書から歴史を俯瞰することができなかった。学業から離れて改めて第二次次世界大戦とはなんぞと問い、長く答えを求め続けてきたが、なんとなく形は見えてきたような気がする。まだ足りないピースがあるような。
それはそれとして、本書は本書なりの因果関係を説明しているため、歴史の俯瞰はしやすい。

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2025年11月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

馴染みの無い事実に驚かされる一方で、論理性が見えない記述もちらほらあり、いろんな意味で興味深い書。

ヒトラーをめぐる評価の基本スタンスには共感できる。すなわち「ヒトラーは悪魔だった。しかし1938年までの段階では、彼はドイツを立て直した強力なリーダーとして世界的に評価されていた。われわれはその当時の視点に立脚して彼とドイツを見なければ、正しい歴史評価は行えない。」というもの。当然な話だが難しい。

ヒトラーが英国と戦争中にソビエトとの戦争(つまり二正面戦争)に突入したのは英国に戦う理由を喪失させるため、との一部歴史家の説明にまったく腹落ちできないでいたが、この書を見るとなんとなく理解できた。

しかし、当初ヒトラーにポーランド侵略の意図は無かったという主張はどうだろう?確かにヒトラーは、ポーランドに対し当初一貫して対話姿勢をとったという事実は重要だろう。しかし、「我が闘争」でうたっている「共産ソ連とその衛星国の支配」を実行するためにはポーランドを支配下に置かねばならず、矛盾しているように聞こえる。
またチャーチルがいなければ欧州戦争は独ソの局地戦に終始したはず、という主張と、ダンツィヒ回廊をめぐるポーランドの頑固と英国の(無謀な)対ポーランド安全保障が日本における300万人の犠牲をもたらした、という主張は論理がわからず首肯もできない。

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2017年04月06日

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