あらすじ
・行動する知識人の唯一の自伝。
「私は経済学者として半世紀を生きてきた。そして、本来は人間の幸せに貢献するはずの経済学が、実はマイナスの役割しか果たしてこなかったのではないかと思うに至り、がく然とした。経済学は、人間を考えるところから始めなければいけない。そう確信するようになった」――。2014年9月に亡くなった行動する経済学者、宇沢弘文氏。2002年3月に日本経済新聞に連載したものの、長く入手困難だった唯一の自伝「私の履歴書」の単行本化です。弱者への思いから経済学を志し、人間の幸福とは何かを追求し、教育、都市、環境といった社会的共通資本を重視する発言を行ってきた、行動する知識人の記録です。「やさしい経済学」「経済教室」など日本経済新聞に掲載された主要な論考も収録し、宇沢氏の考えのすべてが理解できる一冊です。
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Posted by ブクログ
宇沢弘文 「経済と人間の旅」
自伝と著者の経済学的テーマを論じた本。ケインズ、ヴェブレンを中心に 経済学のエッセンスをわかりやすく説明している
著者の経済学的テーマを具現化したものは、社会的共通資本という考え方。特に制度を通じた医療と教育の効率的な分配に重点を置いている
著者は ヴェブレンの制度主義の立場にたち、リベラリズム(人間の尊厳を保ち市民的自由を守る)の観点から、社会的共通資本(特に医療と教育)を分配することを主張
少しエリート主義や 哲人政治的な思想を感じる。新しい制度をつくるほど、社会的共通資本が増え、政府や官僚の権限や責任も大きくなるが、そんなことして 大丈夫か?と思う
社会的共通資本とは
*人間の生活や生存に重要な資源、モノ、サービス、制度を共通の財産として社会的に管理する仕組み
*社会的共通資本の多くは希少資源であり、私有や私的管理は認められない
ヴェブレンの制度主義
*制度的諸条件により 経済活動の在り方が規定され、経済発展の形態と特質が決められるメカニズムを分析
*人々の経済活動(消費活動)は、効用最大化行動によるのではなく、社会的、制度的、歴史的要因に左右する
社会的共通資本としての医療は、医療を経済に合わせるのでなく、経済を医療に合わせる
*経済学の枠組のなかで最適なら国民医療費を計算することは不可能
*経済学のテーマは、最適な医療サービス効率的に分配されるには、どのような医療制度をつくるか
ケインズ「一般理論」
*資本主義は不安定であり、政府が何かしなければ、大量失業か危険なインフレを生む
*金融制度の不安定さが資本主義を不安定にしている
*一般理論の戦後の考察対象は 公共投資、対外経済、軍事援助などを通じた経済成長
*資本主義経済の制度的条件を定式化し、経済循環のメカニズムを解明し、雇用量、国民所得がいかに決定されるか明らかにした
*一般理論は資本主義の制度的条件のなかに大恐慌を生み出すメカニズムが内在することを明らかにした
Posted by ブクログ
☆☆☆2019年12月☆☆☆
『自動車の社会的費用』などの著作で知られる宇沢弘文の、経済学に対する考えの凝縮された一冊。「社会的共通資本」=「人類や、地球にとっての共有財産」と考えてよいだろうか。美しい自然や、教育、医療など。このような社会的共通資本を大切に、人間が人間らしく生きることを目指すのが宇沢経済学だと思う。ヴェブレン、ケインズの思想について述べる部分が長いが、僕にはよく理解できなかった。